「そして後日お客の自宅へ納車したのですが、大変でした」
と語るのは、25年前、自動車ディーラーで営業として働いていた40代男性(岡山県/医療・福祉・介護)だ。ある日「中型スポーツセダン」の購入を決めた20代の男性客が、厄介なクレーマーだったことを振り返る。
その客は「タイヤのメーカー」や「成約記念品がつくか、ガソリンは満タンで納車されるのか」など細かい質問が多かった。男性はその都度、タイヤのメーカーは不明、記念品はつかずガソリン満タンでもない、などと説明して相手は納得して購入したはずだった。しかし……
「ガソリンが満タンじゃない」「成約記念品がない」と蒸し返され
なんと納車の段階でメーターを見て
「ガソリンが満タンじゃない」
「成約記念品がない」
と話を蒸し返されたというのだ。「成約記念品がない代わりにあと15万円値引きしろ」と迫ったことも忘れたふりだろうか。
これは想定内のことだったようで「そんな事態を見越して直属上司の課長に同行してもらって再度説明をしてもらったのですが聞く耳を持たず」と対策も虚しく次のような対応となった。
「結局ガソリンは会社支給のチケットで満タンにすることに。スタンドまでお客が同行する粘着ぶりで、レギュラー指定のクルマなのにわざわざハイオクを入れさせられるという無茶苦茶ぶりに呆れました」
ところが、話はこれで一件落着とはならなかった。
「しかし、呆れたのは後日かかってきた電話です。『あんたは〇〇社のスポーツタイヤがついていると言ってたのに、××社の安物タイヤが付いてるぞ!』と電話口で吠えられました」
グリップ性能のいいスポーツタイヤはスタンダードタイヤより高額で、4本セットで50万円以上するものもある。最低グレードの車についているはずもなく、何より「見積りの時点で説明し、お客自身も納得されていた事」だったのだからこのクレームは衝撃だ。しかしそれを話しても
「聞く耳を持たれず『タイヤを変えないと返す!』とまで言われたので、課長と相談し『〇〇社のタイヤは今ないが、△△社のスポーツタイヤならあるので、それで良ければ交換する』と言って納得してもらいました」
「後日お客のクルマを預り、営業所の試乗車に付いている△△社のスポーツタイヤをホイールごと交換するという『荒業』を使って一件落着となりました」
と苦肉の策で相手の要求をのむ形となった。タイヤ交換の工賃もサービスだっただろうから営業所は随分損をしたに違いない。ただ、そうしたクレーマー客のせいかは不明だが直後に意外な展開となった。
「その後すぐ、勤務していた自動車ディーラーが倒産して社員も解雇となったので、営業所の試乗車のタイヤが安物タイヤであることもバレずに済みました」
こう明かした男性は、いまもこの件を思い出すことがあるようで、最後にこんな風に綴っていた。
「そのお客とはそれっきり会うことはありませんでしたが、今でもそのお客と同じ仕様のクルマを見ると当時のコトを思い出して『ドキッ』とします」
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