荒木飛呂彦原作による実写映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」のティーチイン付き上映会が、本日6月8日に東京・TOHOシネマズ池袋で開催され、監督の渡辺一貴と脚本の小林靖子が登壇した。記事はネタバレを含むため、鑑賞前の人はご注意を。
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フランス・ルーヴルを舞台に、岸辺露伴が「この世で最も黒く、邪悪な絵」の謎を追う「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」。ティーチインは、渡辺監督と小林に客が質問を投げかける形で進んでいく。まず「荒木先生ご本人から何か注文はあったか」と聞かれると、小林が「脚本作業に入る前、仁左右衛門と奈々瀬は悲恋にしてほしいとお話がありました。あと死んでしまう人たち、(ルーヴル美術館の)消防士などは悪人にしてほしいと。荒木先生はずっと少年マンガを描かれているので、きっと悪者を倒す爽快感みたいなものがほしかったのかなと思います」と荒木の意見を踏まえながら原作から脚本に起こしていったと話す。
次は「青年期の露伴のシーンで男性の遺体が発見されたとラジオからニュースが流れるが、あれは(TVアニメ「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」に登場した)『杜王町RADIO』のオマージュ?」という質問が。渡辺監督は「そうです。(ラジオDJであるカイ原田役の)バッキー木場さんにオファーしてご快諾いただいて。『俺はアナウンサーじゃないからなあ』と言いながらスタジオで練習されていました(笑)」と話す。
「セリフの掛け合いの間(ま)は脚本に指示が? それとも撮影時に役者や監督で作っていく?」という質問には、小林が「間は役者さんの演技や監督の演出によるものです。オークション前の露伴と京香のお芝居は私も笑っちゃう」とコメント。渡辺監督は「(高橋)一生さんと飯豊(まりえ)さんは第1弾から息ぴったりで、初対面のシーンから掛け合いのテンポがよかったから『ちょっと崩しましょうか』と言ったぐらい。それだけお芝居のフィーリングが合うんです」と明かし、「逆に青年期の露伴のシーンはセリフが最小限なので、露伴と奈々瀬が見つめ合う間や、言葉を言おうかどうか迷っている間をじっくり出したいなと思っていた。だから長尾(謙杜)さんと木村(文乃)さんには『たっぷり! たっぷり! たっぷり!』とずっと言っていたような気がします」と語る。
また渡辺監督は小林と美術チームとともに、東京藝術大学の日本画修復の先生のもとへ取材に行ったというエピソードを披露。取材に行ったのは脚本の初稿ができる前だったそうで、小林は「色のことをたくさん教えていただいて、『ジョジョ』っぽい豆知識を入れることができました。『ジョジョ』ってときどき荒木先生が豆知識を入れるので、原作っぽいテイストを少し足せたかなと思います」と述べる。
アニメ「ジョジョ」の脚本も手がけている小林に「アニメ版と実写版でここは変えよう、ここは同じにしようと思っている部分は?」と客が質問すると、小林は特に意識はしていないと言いながら「アニメ第4部(「ダイヤモンドは砕けない」)に登場する露伴の印象が強かったので、その露伴と『岸辺露伴は動かない』の露伴をうまくミックスさせられればいいなと思っていました」と返答。また「原作の露伴は強烈だが、実写化にあたりどう調整している?」と聞かれると、渡辺監督が「実写では僕も小林さんも露伴の年齢をきっちり定めてはいないけど、だいたい一生さんの年齢の30代後半ぐらいで考えていて。原作よりはややアダルトだから表現もちょっと抑えめにしようかみたいなことを言ってると、ときどき一生さんが原作のようなことを現場でぶっ込んでくるんです(笑)」と明かす。
あと1問でティーチイン終了とアナウンスされると、「この先、我々は今年の年末とかに期待していていいでしょうか?」とラストにふさわしい質問が。渡辺監督が「台本で用意されてたみたい」と笑いながら「もちろん、もう少しやらせていただけるならやりたいです。もう少しお待ちください」と話すと、大きな拍手が沸く。渡辺監督はこのティーチインを「自分の中で『もっとやりたい』という気持ちがふつふつと湧いてくるような時間でした」と締め括った。
(c)2023「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会 (c) LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社