2023年06月08日 10:51 弁護士ドットコム
暴言や恫喝が目にあまる社員に業務命令としてカウンセリングを受けさせたい——。弁護士ドットコムにこんな相談が寄せられています。
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相談者が困っているのは、中途入社の男性社員です。男性は仕事の成果は出すものの、感情的になると、上司や部下に暴言を吐いたり、恫喝したりしています。直接的な暴力はないけれど、書類を机に叩きつけることもあり、看過できない状況です。
相談者は「教育的な意味合いにしたい」と、懲戒処分の代わりに、男性社員に業務命令としてカウンセリングを受けさせたいと考えています。こういったことは可能なのでしょうか。
労働問題にくわしい中村新弁護士によると、ハラスメントが認められる場合、会社がまず第一にすべきことは「会社が把握した事実について、この従業員から聞き取りをおこなったうえで、必要な注意・指導をすること」だといいます。
それでも行動が改善されない場合、会社は「心療内科やカウンセリングを受診せよ」という業務命令ができるのでしょうか。
「労働者側には、どのような診療を受けるか、またどの医師を選択するかについて自ら決定する権利があります。
しかし、会社の就業規則に、従業員には健康管理従事者の指示に従い、心身の健康回復に努める義務があり、必要な場合には会社が指定した医師等の受診を命じることができる、といった規定があった場合、これらは労働契約の内容となるため、会社は労働契約に基づき、受診を命じる業務命令を発することができると考えられます」(中村新弁護士)
ただし、その場合も、業務命令の内容や方法に合理性・相当性がないといけないそうです。
「会社としては、いきなり業務命令として受診を命じるのではなく、まずは、『あなたの能力を会社のために発揮していただくために必要な措置だ』などと告げて、医師や臨床心理士への受診を説得することからはじめるのが無難でしょう。
就業規則にそのような定めがない場合は、労働契約に基づくという理由で受診の業務命令を発することは難しいでしょう。ただし、この場合も、必要性を説明しながら受診を説得することは可能です」(中村新弁護士)
【取材協力弁護士】
中村 新(なかむら・あらた)弁護士
2003年、弁護士登録(東京弁護士会)。現在、東京弁護士会労働法制特別委員会委員、2021年9月まで東京労働局あっせん委員。労働法規・労務管理に関する使用者側へのアドバイス(労働紛争の事前予防)に注力している。遺産相続・企業の倒産処理(破産管財を含む)などにも力を入れている。
事務所名:銀座南法律事務所
事務所URL:http://nakamura-law.net/