2024年新卒採用も、大手企業の面接が解禁され、いよいよ佳境を迎えています。リクルートの調査による5月15日時点での大学生(大学院生除く)の就職内定率は72.1%となっており前年よりも6.7ポイントも高い数字となりました。ただ、内定取得者の就職活動実施率は43.6%と、前年同様の水準となっております。
つまり、内定が出た状態でも就職活動を続けている学生が増えている、ということになります。その中で、今年は例年とは違う相談が企業側から上がってきています。
「今年内定出しした学生の中で一番優秀な学生が、就活を続けたいということでまだ承諾を頂けてないんですが、そういう学生の話って他でも聞きますか?」
「物凄く優秀な学生で、当社とのマッチ度合いも高く、本人もそれを言ってくれているんですが、なぜか承諾はまだしてくれなくて。どう口説くのが良いと思いますか?」
「当社としては是非来てもらいたい学生で、内定者インターンも参加してくれているんですが、まだ意思決定して貰えていないんです。今の学生が何を考えているかわかります?」
こうした、“いくつも企業から内定を獲得している優秀な学生が意思決定せず、就活を続けている”状況における企業側からの相談です。(文:キャリアアドバイザー 坂元 俊介)
就活生の立場を利用したい、という学生も
実際、弊社が支援する学生の中にも、いくつも企業から内定が出ていて、意思決定できる十分な情報が揃っているにも関わらず、そのまま就活を続けている学生がいます。彼・彼女たちに話を聞くと、入社を決めない理由がいくつかわかってきました。
(1)将来を決めることに恐れがある
理由を聞いていて、一番多かったのが、このケースです。
「今内定を貰っているAという会社も良いんですが、Xという部分が気になります。Bは、Xは良いんですが、Zが気になっていて……そのため、まだ就活は続けます。」
「もっと自分に合う良いところがあるのでは?と思っているので、まだ就活は続けます」
こういった理由を話してくれた際には、
「XもZもあるCから内定が出たら意思決定しますか?」
「今内定を貰っている会社の何が足りていないですか?」
と質問をすると、答えに困ってしまう学生さんが多くいます。
(2)全部出揃ってからしか決断が出来ない
次に、出来る限りの選択肢を揃えた上で判断をしたい、という学生さんも多かったです。
キャリア軸もしっかりしていて、志望度の高い(軸とのマッチ度が高い)企業から内定が出ているにもかかわらず、志望度の低い企業を辞退せず、
「受けていく中で、キャリア軸とのマッチ度が変わる可能性もある」
と言って、受け続けている学生もいました。
実際、選考過程でマッチ度が変わることはあるのですが、明らかに軸から外れた企業でも内定が出るまで受けきる、と決めている学生もいました。複数選択できる状態から選ぶことで、「安心感を得たい」のだと思います。
(3)就活生という特別な立場を利用して普通だと出来ない経験をしたい
少し特殊なのが、入社する企業は決めているものの、
「著名な社長さんと会える機会なので就活を続けています。」
「色んな会社の色んな方と、じっくり話せる機会はなかなかないので、選考を受けています。」
などと、就活を利用して特別な経験を積みたい、という学生もいます。
普通であれば就活は早めに終わらせたいと思うものです。詳しく話を聞くと、こうした学生が出てくる背景にはコロナ禍で行動が制限され続けてきたことがあるようです。サークルやインターンなどの活動が十分にできず、その反動で必要以上に就活を長引かせて経験を積もうとしているのです。
内定承諾に正解はないけど……
“内定承諾”は、正解が存在しない重要な選択です。悩んだり、躊躇したりする気持ちはもちろん理解できます。
ただ一方、ちゃんと期限内で意思決定できるかどうか、を見ている企業もあります。それは、「仕事というものが、正解のない重要な意思決定の連続」であるからです。
是非、内定承諾、という意思決定を通して、正解を選ぶ意思決定ではなく、意思決定したものを正解にするための力を身に付けていって欲しいと思います。