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警察官の定年は65歳へ 都道府県幹部500人のリタイヤ後の行き先を調べてみた

2023年06月04日 09:31  弁護士ドットコム

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「天下り」が社会的に問題視されるようになって久しいが、退職する公務員が民間企業などへ再就職することを一律に禁止する法令はなく、約30万人が所属する巨大組織「警察」の職員も定年退職後に多数が再就職している。


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キャリア官僚については内閣が国家公務員法等に基づき毎年度氏名や再就職先などを公表しているが、都道府県警察で採用された警察官についても退職管理条例等に基づき一部公表されている。



都道府県ではどのような「天下り」がおこなわれているのか。再就職の実態を調べた。



●もっとも多い再就職先は「自動車学校」

調査したのはウェブサイトで公開されている33道府県の資料。2021~2022年度のいずれかの期間に退職した警視以上の階級だった529人の再就職先を業種で分類した。



もっとも多かったのは「自動車学校(協会)」の62人で、全体の1割強を占めた。役職は校長や管理者などの管理職に就くケースが目立つ。



交通関連では、「交通安全協会」が33人、「自動車安全運転センター」が10人、「自家用自動車協会」が9人と続く。交通取り締まり、事故処理、運転免許業務といった交通警察との関連性が強い再就職先といえる。



次に多かったのは「保険業」の58人。交通事故を扱う損保会社名が多いほか、半数近い27人が警察共済組合の保険代理店である「たいよう共済」に再就職しているのが特徴だ。



トラブル対応を期待されているケースも多いようだ。「警備会社、警備業協会」が31人だったほか、スーパーやショッピングセンターなどの「小売業」が35人で、多くが渉外担当または警備担当の役職だった。



●「大学の先生」になる人も

「建設業」も31人と多い。顧問や参与といった役職が多く、中年OBを現場作業員として採用するわけではない。建設業はかつて暴力団が関与するケースが特に目立ち、国主導で暴力団排除が進められてきた経緯がある。



警察庁は今も排除徹底を呼び掛ける通達を出しており、暴力団をよく知る元警察官の知見に期待した採用という側面もある。「物流業」(10人)や「公営競技」(10人)にも同様の理由が当てはまりそうだ。



少ないケースとして、行政書士(1人)や医科薬科大学の准教授(1人)になった人も。後者は元科学捜査研究所の研究員が就いた例で、犯罪捜査に関する専門知識や知見をいかせる職場ということだろう。



このほか、一定数いた業種として、「パチスロ関連」(8人)、「防犯協会」(8人)、「不動産販売」(8人)、「製造業」(7人)、「暴力追放センター」(6人)、「警察職員生活共同組合」(6人)などがある。



●元署長が「交番のおまわりさん」になる日も?

警察で再任用されるケースもある。今回調べた資料では9人が再任用されていた。役職は、課長や調査官、スクール・サポーターなど様々だ。再任用枠を公表対象から除いている県もあるため、集計数よりも多くいるとみられる。



警部以下の階級で退職した場合、再任用はより一般的だ。特に「交番相談員」として再び交番勤務につくOB・OGは珍しくない。警察白書によると、全国で約6300人の交番相談員が配置されている(2022年4月1日時点)。



2023年4月に施行された改正地方公務員法では、原則60歳だった地方公務員の定年が2023年度から段階的に引き上げられ、2031年度に65歳となる。これに対応する各都道府県の「職員の定年等に関する条例」も同様の改正がおこなわれている。



総務省は、定年引上げの趣旨について、「少子高齢化が進み、生産年齢人口が減少する我が国においては、(中略)次の世代にその知識、技術、経験などを継承していくことが必要」としている。



少子高齢化の波は警察組織にも等しく及んでいる。「交番相談員として道案内している元署長」が増える未来もあるかもしれない。