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『呪術廻戦』に刻まれた『BLEACH』の影響……連載初期から存在していた「詠唱」シーン

2023年05月27日 08:01  リアルサウンド

リアルサウンド

©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会

※本稿は『呪術廻戦』のネタバレに触れています。


 芥見下々による人気漫画『呪術廻戦』の連載が始まってから、およそ5年が経過した。物語が進むにつれて、その世界観はますます壮大さを増しており、読者を驚愕させるような新設定も明かされている。


(参考:【写真】『呪術廻戦』リアルに再現した五条悟のフィギュアを見る


 現在話題を呼んでいるのは、5月22日に『週刊少年ジャンプ』で掲載された第223話『人外魔境新宿決戦(1)』の内容だ。


 詳細は伏せるが、そこでは一般的な術式の発動プロセスについて解説が行われていた。本来は「呪詞」(じゅし)や「掌印」(しょういん)などの手順が必要なところを、省略して術式を発動できるのが、腕の立つ術師ということらしい。


 今まで作中では当然のように予備動作なしで術式が放たれていたが、どうやらそこには特殊な技術の裏付けがあったようだ。芥見は前々から久保帯人の代表作『BLEACH』へのリスペクトを公言していたが、同作の「詠唱破棄」から着想を得たのかもしれない。


 なお、読者の間では“詠唱”の概念が新登場したという反応も見られるが、実は今までにもごくまれに術師が詠唱を行うシーンが描かれていた。代表的なのが、結界術の「帳」(とばり)を使う場面だ。


 初期からさまざまなキャラクターが発動してきたが、その直前には決まって「闇より出でて闇より黒く」「その穢れを禊ぎ祓え」という言葉が詠まれている。


初期から仕込まれていた呪詞と掌印の概念


 そのほか、伏黒恵が十種影法術の奥の手である最強の式神「魔虚羅」(まこら)を呼び出す際にも、必ず「布瑠部由良由良」と唱える流れがあった。


 やはり、強大な力にはそれだけの予備動作が求められるということなのだろうか。第213話「呪胎戴天-伍-」では、来栖華が「邪去侮の梯子」(やこぶのはしご)という大技を放つ際、「光よ」から始まる長大な詠唱を行っていた。


 さらに詠唱を行うのは術師ばかりではなく、第175話「仙台結界(2)」では特級呪霊・黒沐死が強力な式神を召喚する際に「瞎(くらい)」と3回唱えていたのが印象的だ。


 こうして見ると、呪詞の詠唱という概念が新たに追加された設定ではなく、初期から考えられていた設定であることが分かるのではないだろうか。


 また、作中では呪詞と並んで掌印にも言及されていたが、こちらは読者にとっても馴染み深い要素だろう。なにせ領域展開を行う際には、ほとんどの術師が掌印を結んでいるからだ。


 掌印を結ぶ際には隙ができるため、戦闘時のリスクに直結しているのだが、それでも省略できない理屈が存在するのだろう。


 なお、領域展開ではない通常の術式にも掌印を伴うものはあり、過去には五条悟が「掌印の省略」を練習していたことを匂わせる描写があった。


 省略できる手順と省略できない手順の間には、どんな違いがあるのか。今後何らかの形で説明されることを期待したい


文=キットゥン希美