トップへ

『スキップとローファー』なぜリアル? スクールカーストを炙り出す”美津未”の存在

2023年05月25日 08:01  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

 TVアニメ化によって、ますます多くの人を魅了しているスクールライフ・コメディ『スキップとローファー』。同作の魅力といえば、生き生きとしたキャラクターたちの青春模様にあるが、そこにはスクールカーストに苦悩するリアルな少女の姿も隠されている。


 同作の主人公・岩倉美津未は、石川から上京して都内の進学校に入学した女子高生。強烈にピュアで素直な彼女の振る舞いは、周囲に大きな影響を与えていく。


 2020年8月にWebメディア「コミスペ!」に掲載されたインタビューでは、作者の高松美咲が美津未とほかのキャラクターの違いについて言及したことがあった。人口が少ない田舎町で育った美津未は、ある程度周囲の空気から自由でいられるが、都会育ちのクラスメイトたちは空気を読みすぎてしまう面があるという。


 こうした設定は、同作が連載されている「月刊アフタヌーン」の特色とも言えるかもしれない。植芝理一やとよ田みのるといった漫画家たちに代表されるように、同誌では教室にいる“ちょっと変わった子”が、その自由さゆえに周囲を変える特別な力をもつ……という作品がいくつも生み出されてきた。


 ある意味、美津未も同じ系譜にあり、“アフタヌーンらしい”魅力をもった主人公なのではないだろうか。


 なお、同作では美津未だけでなく、他のキャラクターたちもスクールカーストにそこまで囚われていないように見える。だからこそ心と心がぶつかるような、ピュアな人間関係が成立しているのだろう。


 そこで例外と言えるのが、江頭ミカの存在だ。


■“まっすぐ”になれなかった女の子


 ミカはオシャレに詳しいイマドキの女子。人一倍空気に敏感なようで、序盤には打算的にスクールカーストを気にするような描写もあった。


 だが、ミカの内面はそれほど単純ではない。5月2日放送のアニメ第5話「チクチク いそいそ」で描かれたエピソードなどを見れば、彼女が抱えていた葛藤の一部が伝わってくる。


 というのもミカは強気に見えるが、実は誰よりも臆病な部分を持っていた。食べたいものを我慢してオシャレを勉強し、キラキラしたグループに身を置くことで、他人に認めてもらおうとしていたのだ。


 ミカはそうした自身の内面を「純粋でまっすぐにもなれない」と表現しており、コンプレックスすら抱いていた。だが、臆病ゆえに積み重ねてきた努力を美津未に認められたことで、彼女たちの間にあった壁が一気に崩れていく。


  『スキップとローファー』で描かれるキャラクターは、一方では美津未のように教室の空気から解き放たれて生き生きとしている。しかし他方で、スクールカーストという教室の価値観から逃れられないキャラクターのリアルな葛藤も描いているのだ。


 同作がリアリティのある学園モノになっているのは、実はミカの存在によるところが大きいのかもしれない。色とりどりの価値観をもった人物が織り成すドラマの行方を、今後も見守っていきたい。


文=キットゥン希美