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西武・山川穂高選手が起訴される可能性は? 強制性交容疑で「書類送検」

2023年05月24日 14:01  弁護士ドットコム

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東京都内のホテルで、知人女性に性的暴行を加えたとして、プロ野球・埼玉西武ライオンズの山川穂高選手が5月23日、強制性交の疑いで書類送検された。


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報道によると、女性の被害届を受けた警視庁が捜査をすすめていたところ、山川選手は任意の事情聴取に「合意があった」と説明したという。



また、女性との間で示談は成立しておらず、警視庁は「相当処分」をもとめる意見を付けたということだ。今後、検察はどう判断するのだろうか。東京地検の元検事・西山晴基弁護士に聞いた。



●検察官に判断を任せる「相当処分」

――警視庁が「相当処分」をもとめる意見を付けた意味は?



警察は送検するにあたって、その事件の処分について「厳重処分」「相当処分」「寛大処分」などの意見を付します。



この意見に「拘束力」はありませんが、警察が刑事処罰をすべきと考える事件では「厳重処分」、不起訴が相当と思われる事件では「寛大処分」が付されます。



今回の「相当処分」は、検察官に判断を任せるというものですが、場合によっては「不起訴でも構わない」という趣旨の意見です。



――今回「相当処分」が付された背景をどう考える?



山川選手の場合は「示談不成立」になったと報じられています。被害女性の被害感情が強いのであれば、警察としては「厳重処分」の意見を付すのが通常です。



なぜ「相当処分」だったのか。考えられる理由の1つとしては、警察としては、検察段階であらためて示談交渉の状況を踏まえた処分を検討したほうがいいのではと考えたからではないかと思います。



――どうして、そう考えるのか?



あえて言うならば、捜査機関からすれば、当事者間で話し合って解決することが望ましいと考える事案があります。特に性犯罪の事案では、被害女性は証人尋問まで強いられるなど、計り知れない精神的負担が生じる可能性があるためです。仮に強制性交等致傷罪となると、裁判員裁判になりますから、その精神的負担はより一層大きいものとなります。



●検察官は「起訴するかどうか」かなり悩む

――検察官時代にこうした事件を扱ったことがあるか?



検察官として、私が過去に扱った事案にも、同意の有無が争われた強制性交事案が多々ありました。犯行前後の防犯カメラ映像などがあったとしても、同意がなかったと立証するにはハードルがあったり、立証するとしても被害女性に証人尋問を強いることになってしまったり、ということで悩まされることが多々ありました。



殴る蹴るなどの暴行を振るったり、ナイフを示して強迫したりするなど、明らかに無理やり性交したという事案でさえ、被害女性に証言をお願いせざるをえないケースがあります。



実際に、証人尋問は避けたい、起訴状に氏名が記載されるのは避けたいといった被害女性の意向も踏まえ不起訴となった事案もありました。



また、被害女性に証言してもらった事案もありましたが、被害女性からすると、時間が経って、裁判のときに改めて被害当時の状況を思い出すこと自体が精神的にかなり辛いものになります。



――今回の場合、検察官はどう判断するか?



先ほど述べた「相当処分」が付された背景から考えると、今回の事件でも、このような刑事裁判の実情があるため、検察官としても、あらためて当事者間での話し合いによる解決の機会を設けたうえで、刑事処分を決めたほうがいいのではと考え、両当事者に話し合いによる解決を促すのではないかと思います。



それでもなお、示談が成立しないとなったときには、検察官としては、証拠関係によっては、起訴するかどうかかなり悩むと思います。被害女性の心情が重要になってきますが、場合によっては、やはり刑事裁判の実情を踏まえ、不起訴という判断もあるかもしれません。