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ヘラルボニーの展覧会『ART IN YOU』が6月17日まで大手町で開催中。異彩あふれる会場をレポート

2023年05月23日 15:10  CINRA.NET

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Text by 廣田一馬

展覧会『ART IN YOU アートはあなたの中にある』が5月20日から6月17日まで大手町・三井住友銀行東館 1F アースガーデンで開催されている。

同展は知的障害のある作家とアートライセンス契約を結び作品をプロダクト化するブランド「HERALBONY」を展開する株式会社ヘラルボニーが主催。金沢21世紀美術館チーフキュレーターの黒澤浩美がキュレーションを務め、16人の作家の作品計33点が展示される。入場は無料。

5月19日に開催された報道陣向け内覧会の様子をレポートする。

内覧会に登壇した黒澤浩美は展覧会のコンセプトについて、「『ART IN YOU』のYOUはあなたです」と話し、「表現者は世の中に問うために、絵画や彫刻などさまざまなかたちでメッセージを届けていると思います。それを受け止めていただく時に、皆さまのなかに何かが醸成され、何かが生まれる。そして自分のなかに芽生えたものを共有していただきたい」と語る。

展示されている原画作品は30点。街のコンビニや施設のコピー機を使って自分の顔とその時々の気に入ったものを写し取る井口直人による『無題』、描いたものを切って貼り合わせる藤田望人による『と・と・と』『apples』、エスカレーターの絵だけを描き続ける志多伯逸による『エスカレーターI』『エスカレーターⅡ』など、さまざまな作風やこだわりで制作された作品が並ぶ。

井口直人『無題』インク、紙、433×332mm

(左)藤田望人『と・と・と』ペン、クレヨン、紙、木製パネル、920×620mm(額込) (右)藤田望人『apples』ペン、クレヨン、紙、木製パネル、920×620mm(額込)

(上)志多伯逸『エスカレーターⅡ』鉛筆、色鉛筆、画用紙、525×685mm(額込) (下)志多伯逸『エスカレーターI』鉛筆、色鉛筆、画用紙、525×685mm(額込)

『踊りながら通過列車』は大量の電車が描かれた作品。電車の中に人間の輪郭が描かれている。同作を手がけた早川拓馬は電車とアイドルが好きで、絵のなかの人物は早川本人とアイドル。自身の好きなものへの情熱が詰まった作品だ。

早川拓馬『踊りながら通過列車』油絵の具、キャンバス、1167×1167mm

立体作品は山際正己の『正己地蔵』、鎌江一美の『海を見ている私とまさとさん』『アートセンターで一緒に過ごす私とまさとさん』の3点。

『正己地蔵』は山際正己の代表作で、20年以上同じ形の作品をつくり続けているという。

山際正己『正己地蔵』陶土、80×60×60mm(個体差あり)

『海を見ている私とまさとさん』『アートセンターで一緒に過ごす私とまさとさん』は思いを寄せる男性をモデルにした作品。作品の表裏に顔があり、自分と「まさとさん」の様子が表現されている。

(左)鎌江一美『海を見ている私とまさとさん』陶土、150×250×230mm (右)鎌江一美『アートセンターで一緒に過ごす私とまさとさん』陶土、310×170×190mm

会場内には展示のほかに、ヘラルボニーのアイテムが販売されているショップも併設。また、鎌江一美と大家美咲によるライブペインティング、ヘラルボニースタッフによる鑑賞ツアーなどのイベントも予定されている。

右から黒澤浩美(金沢21世紀美術館チーフキュレーター、ヘラルボニー企画アドバイザー)、松田崇弥(ヘラルボニー代表取締役社長)、松田文登(ヘラルボニー代表取締役副社長)

『ART IN YOU』の開催にあたってヘラルボニー代表取締役社長の松田崇弥は、「私たちの活動をサステナビリティという流れのなかではなく、純粋に美しいアートとして知ってもらうことが大切だと思っています」と述べる。

代表取締役副社長の松田文登は「ヘラルボニーが目指すのは、市場を拡張すること以上に思想を拡張すること。『知的障害がある』と言う必要もなく、作品の良さがフラットに社会に届く状態をつくりたい」と今後の展開について語った。

また、キュレーションを務めた黒澤浩美は「障害があるからこの作品を紹介しているのではなく、あくまでも作品、作家それぞれに個性があり、それは皆様と同じ個性やユニークさであることを伝えたい」と同展の目標を話した。