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「もう1周あると思ったらチェッカーでした」「大湯頑張れ」「トラフィック多すぎ」【SF Mix Voices 第4戦決勝】

2023年05月22日 00:30  AUTOSPORT web

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2023スーパーフォーミュラ第4戦 アウトラップの阪口晴南(P.MU/CERUMO・INGING)に仕掛ける牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
 全日本スーパーフォーミュラ選手権は5月21日、大分県のオートポリスで2023年第4戦の決勝が行われ、リアム・ローソン(TEAM MUGEN)が今季2勝目を飾った。

 決勝後、全ドライバーが参加して行われる取材セッション“ミックスゾーン”から、第4戦の決勝に挑んだドライバーたちの声をお届けする。

■大津弘樹(TEAM MUGEN) 決勝14位

 急きょ欠場となった野尻智紀の代役として、TEAM MUGENの1号車から参戦した大津。予選ではQ1で勢い余ってターン8でクラッシュしてしまい、最後尾からのスタートとなった。

 それでも、スタートでは6ポジションアップを果たし、その後も前のマシンを次々と抜いていくなど、随所で見せ場を作る走りを披露。最終的にポイントには届かなかったが、前日の遅れを取り戻す走りをみせた。

「ドンピシャのタイミングで(スタートが)決まって、1コーナーまでにだいぶオーバーテイクできました。その後も1~2周の間に、山本(尚貴)選手や(小林)可夢偉選手も抜けて、けっこうゴリゴリといくことができたなと思いました」と大津。

 途中にはアンダーカットの作戦を採っていたチームメイトのリアム・ローソンが後方にやってきたが、「チームから何も指示はなかったんですけど、あそこで僕が抗っても仕方ないなと思いました」と、チームメイト同士で無理に争わずに先に行かせたという。

 その後、ローソンと同じような作戦を採っていた阪口晴南(P.MU/CERUMO・INGING)が迫ってきたが、それについては「向こうのタイヤがフレッシュな割には、ペースが全然変わらなかったです。だから、前からスタートできていれば(好結果を)狙えるクルマだったので、昨日のミスがすべてだったなと思いました。ああいう、ちょっと限界を超えてしまったことが、すごく勿体なかったなと思いました。改めて、SFは予選で前にいることが重要だなと改めて感じました」と、チャンピオンマシンでの代役参戦で、得るものも大きかったようだ。

■福住仁嶺(ThreeBond Racing) 決勝8位

 福住は、予選でチームベストとなる5番グリッドを獲得。スタートでも5番手をキープして、上位を狙えそうな雰囲気はあったのだが、ロングランのペースに苦しみ、最終的に8位でレースを終えた。

 ミックスゾーンで話を聞くと「本当、予選の順位のおかげでポイントが獲れたという感じでした」と福住。

「ロングランはとにかく不調で、思った以上にダメだったし、今まで起きていた悪いところが、オートポリスで一番顕著に現れてしまったのかなと思います。とにかくクルマが跳ねすぎてしまって、ペースを上げられなくて、僕が渋滞を作ってしまっている感じではあったと思います。その中で展開にも救われて8位でレースを終えることができました。だから、予選の順位って本当に大事だなと感じました」と、最初から最後までペース的に苦戦を強いられたようだ。

 それでも、今週末は最初のフリー走行で21番手に終わるという、厳しい出だしだったことを考えれば、そこからポイント圏内までリカバリーできたことはポジティブに捉えている様子。「昨日のフリー走行で、ほぼ一番後ろだったことを考えると、このポイント獲得は本当に良かったなと思います」と、最後は安堵しているようだった。

■太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING) 決勝16位

 予選ではQ1・B組でタイムを記録したなかでは最後尾となり、20番グリッドからのスタートとなったSF1年目の太田。決勝も16位チェッカーと、依然としてポイント獲得には届いていないものの、この週末を終え、「少し光が見えてきた」と話す。

「今まで決勝ではロングのペースや、低速コーナーのグリップ感、タイヤのデグラデーションに悩まされていたのですけど、今回の決勝に向けてセットアップを大きく替えたところ、それがすごくポジティブな方向に向いて、レースペースがすごく良くなりました」

「ただ、ピットストップで(チームが)ミスしてしまい、あれがなければポイントは獲れていたというくらいのペースだったので、正直自分でも『こんなに変わるんだな』というくらい、今日のレースは今までのレースと比べてぜんぜん違ったので、少し光が見えてきたなという感じではあります」

 また、開幕前にスーパーGTのメーカーテストで激しいクラッシュに見舞われたことで、新車SF23による開幕前に1度のみ開催された鈴鹿公式合同テストで走ることが叶わず、それがSF参戦1年目の太田を大きく苦しめることになっていると太田は明かした。

「オフシーズンに怪我をしたので、開幕戦からゆっくりとメニューを進めるという時間がまったくなく、いきなり予選、レース。予選、レースと続いている感じです。土曜日のフリー走行だけでは試せるセットも本当に少ないので、その分を補おうとチームの工場に何回も何回も行って、レース前にミーティングも重ねたり……」

「やれることは本当全部やってというなかでしたので、逆にそういうところが自分を気持ち的に追い詰めているのかなという部分もあり、正直現状はすごく苦しく、悔しいという気持ちしかありません」

「フリー走行でも、できるだけ早く慣れて、できるだけ早くセットアップに対するフィードバックを言わないといけないので、それを考えると……昨日ミスもありましたが。こうやって決勝に向けてはいい方向性が見えたので、(今後に向けては)いいかもしれないなと思います。あとは次のSUGOで自分が予選から仕事をまとめきるだけ、ですね」

 一見すると、過去3戦と変わらない16位だったかもしれない。しかし、このオートポリスでの一戦が、太田の今後の飛躍に繋がるのかもしれない。

■驚愕の発言に、思わず聞き返す記者たち
■牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING) 決勝6位

 7番手スタートからピットウインドウオープン直後の10周目に、22台のうちもっとも早いピットストップを選択した牧野は「戦略としてはアンダーカットしてよかったと思うのですけど、正直あそこまでトラフィックがいるとは思っていなくて、それに引っかかったというのが大きかったかなと思います」と振り返る。

 また、「(阪口)晴南を彼のアウトラップで抜けなかったのもきつかったです」と牧野。14周目終わりにピットインした阪口晴南(P.MU/CERUMO・INGING)はその時点でリアム・ローソン(TEAM MUGEN)を追っていた牧野の眼前でコース復帰。

 当然、牧野は1コーナーからコールドタイヤの阪口の背後に着き、3~5コーナーで接触ギリギリのサイド・バイ・サイドとなるも、阪口もOTSを使用し、牧野に隙を与えず。牧野は阪口を攻略するに至らなかった。

「このオートポリスは、結構アウトラップでのタイヤの暖まりが早いのですけど、それが痛かったのかなと思います。晴南や他のクルマが何台も前にいて、そのペースに付き合わされちゃうんで、そのロスが大きかったですね」

「ただ過去のレース見てても、あそこまでトラフィックがあったレースってオートポリスであったっけ? とも思います。実際、僕も2019年(TCS NAKAJIMA RACING在籍時)にここでミニマムでピットに入っているのですけど、そんなトラフィックもなかったので、ちょっとあれは想定外でしたね」

 それでも牧野は「やはりアンダーカットの取り分はものすごくあったと思います。戦略的にも序盤のあの状況だと、(序盤5番手の)福住選手と(序盤6番手の)山下選手がいて、僕は少し引っかかっていたので。やれることはやったかなと思います」

「ただ、ペース自体は結構ポジティブな内容でしたので、結果以上に内容が良かったので、次に向けてはポジティブかなと思います。次戦のSUGOは、去年もいいレースをしていたので、頑張りたいと思います」

■山下健太(KONDO RACING) 決勝4位

 6番手スタートの山下は、表彰台まで0.304秒届かず4位でチェッカーを受けた。

「終盤は3番手の坪井翔選手を抜くタイミングを計っていたのですけど、最後は後ろから平川亮選手もすごいペースで来ていたので、変なタイミングでオーバーテイクシステム(OTS)を一度使うと、自分がOTSを使えないタイミングで抜かれてしまいます。それも踏まえて残り2周に勝負をかけようと思ってOTSも温存していたのですけど……周回数を勘違いしていて」

 そう山下が発した瞬間、その場にいた記者たちは「え?」と聞き返してしまった。

「もう一周あると思ったら、チェッカーでした。ファイナルラップで坪井選手にすごく接近したと思うのですけど、あれを本当は1周前(40周目)にやろうと思っていたんです」

 つまり、山下はOTSを温存しつつもプッシュして坪井に接近し、40周目に坪井にOTSを使用させることで、41周目のファイナルラップに自分がOTSを使い、坪井を攻略するつもりだったのだ。

「あとは今のタイヤが攻めるとすぐにオーバーヒートしてグリップが落ちるので、それも踏まえて残り2周で行こうとしていたら無線で『今ファイナルラップだよ』と言われて『え!?』って。チームは無線で残り周回数も言って、サインボードまで出していたのですけど……僕のすっとぼけというか」

 前後1秒以内にライバルがいるなか、OTSの残量や使いどころやタイミングを図りつつの走りだった山下。まさに極限状態ゆえの勘違いだったのだろう。

「ダサかったです。(周回数を勘違いしなければ3位に)いけたと思いますし……気をつけます」

 今季は富士での涙の3位表彰台も含めて、常に表彰台を争う戦いを続けている山下だが、「いつも速い3名くらいには0.2~0.3秒くらいは及ばないので、勝つにはまだ足りないですね。4位、5位までは来れるのですけど、ここからは“何か”を見つけないとなという感じです」と語る。

「(一発もロングランも)改善すべき点、改善したい点はもう見えているのですけど、それをどういう方法でやれば直るのかがわからなくて。今週もそこを直すべく、いろいろやってみたのですけど、何も直らない。これかなって部分もいろいろあるし、引き続きSUGOでも試してみたいと思います」

■平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL) 決勝5位

 8番グリッドからオープニングラップで10番手に後退も、最終的に5位でチェッカーを受けた平川は、「運が良かったですね。ぜんぜん遅かったです」とさっぱりとした口調で決勝を振り返った。

「スタートそのものは悪くはなかったのですけど、位置取りを失敗して、詰まっている内側に行ってしまい、1コーナーと3コーナーで外側から1台づつ抜かれたという感じでした」

 ただその後は、ピットタイミングを30周目まで引っ張る作戦を敢行。ただこれも数ある作戦から選んだというわけではなく、「遅かったのでピットを引っ張るしかなかったです」と明かした。

 レース中盤は大湯都史樹(TGM Grand Prix)の背中を追う展開となった平川。ただ、オーバーテイクには至らず。その理由を平川は「セクター3、特に上りのセクションが遅くて、セクター1とセクター2で追いつくのですけど、登りでついていけなくなり、ホームストレートも(最終コーナーから)出てくると離れているので、そこでも勝負はできなかったですね」と説明する。

 ただ、そんな平川を救ったのが奇しくも大湯と阪口晴南(P.MU/CERUMO・INGING)の接触に伴うセーフティカー(SC)導入だった。SCのタイミングでピットインを敢行した平川はレース再開後に、フレッシュタイヤで佐藤蓮(TCS NAKAJIMA RACING)、牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)を続けて攻略し5番手に浮上。

 4番手の山下の背中を捉えようかという位置まで辿り着くが、今度はオーバーテイクには至らず5位でチェッカー。平川は終盤の状況を「そこ(山下)に追いつくまででもうタイヤを使っていたので、その先は無理でした」と振り返り、また今季投入されたサステナブル素材を33%活用した新タイヤを「去年みたいな感じはまったくないですね」と評した。

 なお、SFgoでも確認できるが平川は大湯の背後を走行中、大湯に語りかけるかのような場面があった。それについて平川は「ピットから『ペース上げて』と言われたのですけど、大湯に引っかかってるんだから『大湯頑張れ』って(意味で)言ったのです」と説明する。

「(大湯に引っかかったから)あのタイミングでピットへ入っても中途半端なので、仕方がなかったですね。前の大湯が速くなればそれについていけたので」

 終盤までピットを先伸ばしにする作戦を取らざる負えなかっただけに、途中でピットに入るわけにもいかなかった平川の本心から出た言葉だったに違いない。