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「正直、かなり落ち込みました」気合充分だったポルトガル、表彰台を狙う勝田貴元を襲ったマシントラブル

2023年05月19日 06:30  AUTOSPORT web

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デイ1のSS1終盤からオルタネーターに問題を抱え、SS3開始前にデイリタイアとなった勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2023年WRC第5戦ラリー・ポルトガル
 ポルトガル北部のマトジニョスを拠点に開催されたWRC世界ラリー選手権第5戦ポルトガル。このラリーに自身2度目となるワークスエントリーで臨んだTOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム(TGR-WRT)の勝田貴元/アーロン・ジョンストン組は、競技初日のデイ1で『トヨタGRヤリス・ラリー1』に発生したトラブルによってデイリタイアを喫し、この影響で総合33位でのフィニッシュとなった。

 5月11日(木)から14日(日)まで行われたラリー・ポルトガルの後日、オンライン取材会に出席した勝田は、“グラベル(未舗装路)ラリー7連戦”の初戦となった今大会を振り返り「金曜日の電気系トラブルがすべて」だったと語った。

 2021年と2022年の過去2大会、勝田はラリー・ポルトガルで安定したスピードを発揮し、ともに総合4位入賞を果たした。なかでも昨年は、最終ステージまで繰り広げられたダニ・ソルド(ヒョンデ・シェル・モビスWRT)とのバトルの末に惜しくも2秒差で3位を逃している。1年後しのリベンジ、さらにはマニュファクチャラーズポイントに影響するチーム3台目のクルマのドライブを担う立場ということもあり、勝田は戦前から「最低でも表彰台」と今大会での目標を公言していた。

 迎えたラリー初日。勝田はオープニングステージのSS1で5番手タイム、続くSS2ではトヨタ勢最上位となる3番手タイムをマークし、総合でも今大会を制したカッレ・ロバンペラ(TGR-WRT)と同タイムで並ぶ4番手につける。しかし、午前中最後のステージであるSS3に向かう途中でクルマの電源が完全に落ちてしまい走行不可能に。好スタートを切った直後に無情にもデイリタイアを余儀なくされた。

 前日に行われたシェイクダウンから良いフィーリングを掴んでいた勝田は、出走順によってもたらされる有利不利も考慮したうえで、ステージ路面における砂の割合が大きくなる翌日以降に向けてラリーの初日に好ポジション確保することができれば、最後には自ずと良い結果が得られると考えていた。そんななかで彼が見舞われた電気系トラブルはSS1の終盤から発生していたオルタネーターの問題が原因だったという。

「最初のステージを終える直前にオルタネーターの異常を知らせるアラームが鳴り始めました。ベルトが切れたんじゃないかと考えフィニッシュ後に色々と調べたのですが、ベルト自体は切れていなくて本体の方に問題がありました」と当時の状況を説明した勝田。

「オルタネーターから電気が供給されておらずバッテリーにチャージされないような状態になっていたので、どこかしらのタイミングで、運が悪ければすぐにエンジンや電気系のすべてが止まってしまう状態でした」

「SS2は“セーフティモード”という、要するに最低限の電力で走る状態でなんとか走れたのですが、その次のステージに行く途中で完全に電気が止まって……エンジンも掛けられなくなりデイリタイヤというかたちになりました」

■タイヤを温存せずに臨んだパワーステージで4番手タイム

 勝田は翌日13日(土)のデイ2で再出走を果たしたが、表彰台獲得の可能性が事実上なくなったことから、心境としてはやはり大きく落ち込んだという。

「自分の中ではなかなかスマートには……もちろん切り替えてはいたのですけれど、ラリー・ポルトガルに向けて非常に気合いも入っていたのでかなり落ち込みましたし、正直(落ち込み具合は)大きかったです」と勝田。

 それでも勝田は、最終日にはより多くのマニュファクチャラーズポイントを獲得すべく、デイ2にデイリタイアを喫し勝田と同じように再出走を果たしたピエール-ルイ・ルーベ(Mスポーツ・フォードWRT)を逆転するために果敢に攻めた。その結果、SS16でステージベストをマークし、SS18でもトップ3に入るタイムを記録した。

 また最終パワーステージでは、早い出走順という不利な条件に加えてタイヤを使ってしまったなかで4番手タイムを記録。総合順位でルーベを交わすことはできなかったものの、このステージでボーナスの2ポイントを獲得し、現在ランキング首位に立っているトヨタチームに貴重な追加ポイントをもたらしている。

 改めて今戦を振り返った勝田は、「なんとかポイントは持ち帰れたので最低限の仕事はできたかな、という風に思っています」と感想を述べた。

「最初にも言いましたが、本当に簡単にまとめると金曜日のトラブルがすべてだったかなというところです。本当に悔しい一戦になってしまいましたので、なんとか今回の経験を機に、今後のグラベル連戦でしっかり復調していけるようにしたいなと思ってます」

 その次戦第6戦は、6月1日から4日にかけて地中海に浮かぶリゾート地、サルディニア島で開催される『ラリー・イタリア・サルディニア』だ。勝田は昨季2022年の同大会を総合6位でフィニッシュ。パワーステージでは5番手となりボーナスの1ポイントを獲得している。