2023年05月17日 18:11 弁護士ドットコム
大規模自然災害や感染症のまん延などの緊急事態に国会議員の任期を延長できる憲法改正案について、日本弁護士連合会(小林元治会長)は、憲法改正に反対するとともに、災害時の選挙については公選法改正で対応すべきなどとする意見書を公表した。5月11日付。
【関連記事:「こんなおばちゃんをどうするの」70代女性に性暴力 出所3カ月後に事件、40代男性の常習性】
改正案は、衆議院憲法審査会で、自民・維新・公明・国民・有志の会の賛成5会派から示された。国会機能・行政監視機能の維持を念頭に、内閣の認定と国会の出席議員の3分の2以上が承認した場合には、任期が70日~1年延長され、衆議院の解散禁止や内閣不信任決議案の議決禁止などを盛り込む。
意見書では、改正案が国民の選挙権を実質上制限するもので、現行制度を活用するとともに公選法改正などで対応できるとして、「憲法改正は許されないというべきである」と指摘。内閣の認定を要件とする点についても、行政監視どころか、内閣にとって都合の良い時期に選挙できるなど悪用のおそれがあると批判する。
5月17日に都内で開かれた会見で、日弁連副会長の大多和暁弁護士は、改正案を「行政監視機能を果たし得ないもので、制度設計がおかしい」と厳しく批判。議員の任期延長を可能とする憲法改正のみが議論されている現状は「問題がある」と訴えた。
大規模災害であっても速やかに選挙が実施できる制度の整備は必要不可欠だとして、被災者が避難先から投票できる制度や、やむを得ない場合に選挙自体を延期できる制度を設ける公選法改正で対応すべきだとする。