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ジャニー喜多川氏の性加害問題、元ジュニアが国会内ヒアリング「黙認すれば、日本社会は発展しない」

2023年05月16日 16:01  弁護士ドットコム

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ジャニーズ事務所創業者の故ジャニー喜多川さん(享年87)によるタレントへの性加害疑惑をめぐり、元ジャニーズJr.の男性2人が5月16日、国会内で、立憲民主党のヒアリングを受けて、議員や官僚の前で被害を報告した。必要な法整備に向けて考えを述べた。


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ヒアリングを受けたのは、これまで日本外国特派員協会で記者会見した歌手のカウアン・オカモトさん(26)と、文春オンラインの取材などに応じていたダンサーで芸能事務所経営の橋田康さん(37)だ。



先立つ14日には、ジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子社長が、動画と文書で調査の実施や被害を訴える人への対応を発表した。橋田さんは一定の評価をしながらも、性加害の事実認定を曖昧にした点がのちのち問題になりえるのではないかとの考えを示した。



オカモトさんは、未成年のタレントや子どもへの性被害を防ぐための法整備のあり方として「被害者ではなく加害者が怖がる法律をつくるのが大事だ」「いまは被害者が声を上げたときのほうが失うものが大きすぎる」と指摘した。



⚫️「抵抗できなかった自分はダメだ」退所後も影響

オカモトさんは中学3年生のころに、橋田さんも13歳のころにジャニー氏から性被害を受けたと、ヒアリングに参加した議員、法務省、警察庁、こども家庭庁の官僚の前で報告した。



別の仕事で参加できなかった元ジュニアの二本樹顕理さん(39)のメッセージも代読された。



二本樹さんは、1996年に中学1年で入所してから3カ月後には「ジャニー氏からホテルで口腔性交などの性被害を受けた」と主張する。仕事をもらえなくなる恐れなどもあって、拒絶できなかったという。



被害は半年間で10回以上にも及んだといい、退所してからも「あのとき抵抗できなかった自分は何をやってもダメなんだ」と自尊心を傷つけられ続け、人生に大きな影響があったと被害の深刻さをうったえかけた。





⚫️こども家庭庁「ジャニーさんは児童虐待防止法の保護者にあたらない」

ヒアリングでは、同様の被害を防ぐため、当事者は法整備のあり方についても聞かれた。



オカモトさんと橋田さんは、被害を受けている子どもが、その被害を理解したり、通報するようなことは難しいと説明する。



議員らは、児童虐待防止法で規制される「児童虐待」が「保護者(親など)が監護する児童」を対象とされている点は検討の余地があると指摘。芸能事務所や学校の部活動でも同じ被害は起こり得るが、現行の防止法では防げないのではないかと問題視する。



こども家庭庁の担当者も「お話を聞く限りでは、ジャニー喜多川さんは『保護者』にあたらないと考えます」とした。



オカモトさんは「親以外だと(児童虐待に)あたらないということですよね。単純に怖いですよね。理解のない子どもが親以外の方に(性被害を)されたら守れないですよね」とし、海外に比べて「縦社会」の日本で、親以外が問題に問われないことは怖いという受けとめを話した。



芸能プロダクションを手がける立場でもある橋田さんは「法律が改正されたら、自分も対象となり、責任ものしかかると理解している」としたうえで、その責任を引き受けて「児童虐待」の規制対象を保護者以外にも広げることを望む考えを示した。



⚫️元ジュニア「功績あるジャニーズなので、悪いことに目をつぶってきた」

長期にわたる問題にもかかわらず、国やメディアが本気で向き合おうとしなかったとして、議員から2人に対して「私たち国会議員もお詫びしないといけないと思う。なぜ判決から20年も放置されてきたのか」などと謝罪も伝えられた。



橋田さんは「たくさんの人に夢や希望をいっぱい与えた功績のある会社なので、非難したりせず、悪いことがあっても目をつぶってきた。エンターテインメントの社会の結果だと思う。このまま日本が黙認していくと、これ以上の発展はないと思っています」と社会が変わる必要性に言及する。



2日前のジュリー社長による謝罪では、性加害の事実認定について触れられず、第三者委員会の調査の実施をおこなわない考えも示している。



ジュリーさんと直接話し合ったというオカモトさんは「多くのタレントを抱えて守らないといけないという思いや、被害者の中にも伏せておきたい人も言いたい人もいる。いろんな状況がある中で、まずは顔を出して、ジャニーズ事務所代表として出ていただいたことには感謝しています。まずは第一歩。始まったなと思いました」と前向きに受けとめた様子だった。





一方の橋田さんは、事実認定を濁していた部分があったことで、「そのままにすると、これからずるずると話が長引く心配はしている」と話す。



それでも、「芸能界のアイドルの事務所としてトップを走り続けた事務所なので、新しい道標を示してもらえたら、たくさんの会社や芸能の世界が同じ方向を見向けるのではないか」と期待も寄せる。



⚫️ジュリー社長も国会ヒアリングの場にやってくるのか

なお、警察庁の担当者は、議員からの問いに答える形で、ジャニー喜多川さんのように、一方の当事者がすでに死亡している場合は、その人を犯罪事件として処罰できないと答弁した。また、ジャニーズ事務所に積極的な調査をうながすなどの対応が可能か問われると、「警察としてお答えできる立場にない」とした。



立憲民主党の議員からは、この同じヒアリングの場にジュリー社長を呼びたいとの発言もあった。