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今季初表彰台のMoto3佐々木歩夢、己の速さへの信頼とチェッカーを目指した走りで2位獲得/第5戦フランスGP

2023年05月16日 02:30  AUTOSPORT web

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佐々木歩夢(Liqui Moly Husqvarna Intact GP)
 佐々木歩夢(Liqui Moly Husqvarna Intact GP)がMotoGP第5戦フランスGPで2位を獲得し、2023年シーズンで初めて表彰台に立った。レースでは、落ち着いた展開に終始した今大会。佐々木がなによりも優先していたのは“チェッカー”だった。その先に表彰台があるとわかっていたからだ。

 佐々木はQ2から挑んだ予選で、ポールポジションを獲得した。最初のコースインでは周りよりも1周多めにアタックし、このためにピットインを挟んだあとの後半のコースインでは1周しかアタックラップがないとわかっていた。ただ、スリップストリームを使いタイムを出す戦略が多く見られるMoto3クラスにあって、佐々木の作戦は単独でタイムを出すというもので、そのためにタイミングをずらしたのだった。そして実際に、佐々木は単独アタックで1分41秒630というトップタイムを叩き出した。

 最近の佐々木のコメントを聞くと、単独でタイムを出すことに集中しているように思われた。予選後に話を聞くと、佐々木は回答のなかで将来を想定したものだと明かした。

「2024年にMoto2昇格を目指すにあたって、単独でのタイムはすごく大事です。Moto2クラスになるとバイクも大きくなるし、単独でのタイムはすごく必要になってきます。それを想定して、自分の速さを見せられるように、なるべく単独で走っているというのはありますね」

「もちろんスリップにつけばコンマ2、3秒、タイムが上がるのはわかっています。でも単独で走って、みんなにインパクトを与えられるような速さを見せる、というのが今年の目標なんです。それもあって、単独で走っているんです」

 迎えた決勝レースは、今季3回目のポールポジションからのスタートだった。佐々木は第5戦フランスGPまでにポールポジションを3回、2番グリッドを1回獲得している。つまり、フロントロウを逃したのはスペインGPの1戦にとどまっているのだ。一方で、決勝レースでは上位走行中の転倒もあり、未だ表彰台に立てていなかった。そんなシーズン序盤の数戦は、フランスGPの佐々木のレースに影響を与えた。

 スタート後にダニエル・オルガド(Red Bull KTM Tech3)にかわされ2番手に後退すると、コンマ数秒の差を保ちながら2番手をキープした。残り5周でジャウメ・マシア(Leopard Racing)にパスされるも、マシアのペースが上がらず、オルガドのペースが上がったと見るや2番手を奪還し、再びオルガドの背後につける。さらに、残り3周で1分41秒476を記録してベスト・レースラップを更新した。最終ラップに入ったとき、佐々木はオルガドとの差を約0.2秒にまで詰めていた。だが、そのまま2位でゴール。そして今季初めて表彰台に立ったのだった。

「最後、(オルガドに)トライできなくはなかったんですけど、最近の2戦(アルゼンチンGP、アメリカズGP)で転んでいたので、今回はリスクを冒す日ではなかったのかなと思います」と、佐々木はレース後のプレスカンファレンスで最終ラップを振り返った。

 佐々木は昨シーズンから引き続き、いや、さらに速くなったという手応えを感じていた。だが、その速さが結果に結びつかない状況だった。第2戦アルゼンチンGPと第3戦アメリカズGPは上位を走りながらも転倒リタイア。フラストレーションが溜まってもおかしくない。だが、フランスGPは落ち着いたレースを展開していた。どのようにメンタルをコントロールしていたのだろうか?

 そう尋ねると、4位で終えた前戦スペインGPが佐々木にとっては「スタート位置」だったと言う。このレースでは、最後まで表彰台を争う集団にいた。

「最初の3戦は、スピードとしては優勝していてもおかしくない速さがありました。そのなかでポルトガルGPは6位で、そのあと2回転倒しました。たった十数ポイントしか獲得できなかったのはネガティブな部分です。周りには『頑張りすぎだよ』『攻めすぎだよ』と言われたけど、自分のなかではマージンを持って走っていたんです。でも、ミスをしてしまって」

「ル・マンに来て、優勝を目指すというよりもチェッカーを受ける走り(を心掛けた)。この前のヘレスもそうだったんです。チェッカーを受けられるように、と。チェッカーを受ければ、必ず表彰台に乗れるということはわかっていました。だから、そこに集中して走ったんです。でも、次の3連戦は自分なりに攻めて優勝争いができれば、と思います」

 レースやセッションではときにリスクを冒して攻めなければならないが、今年はより、その緩急をつけている、とも佐々木は語っていた。フランスGPは冷静に自分自身をマネージメントしたことが表彰台につながったといえそうだ。