2023年05月12日 17:31 弁護士ドットコム
東京・銀座の高級腕時計「ロレックス」専門店で5月8日に起きた強盗事件で、犯行グループとみられる16~19歳の少年が、邸宅侵入などの疑いで現行犯逮捕された。4人のうち高校生の少年は否認しているという。
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事件は、銀座のメインストリート沿いにある店で午後6時過ぎに起きた。人通りも多く、ネット上には、白い仮面をつけた男が押し入ってショーケースをたたき割り、高級腕時計を次々と黒いカバンに入れる様子の動画があがっている。
報道によると、奪われた高級腕時計は70点余りで被害総額は約2億5000万円に上るという。4人は「知り合いではない」と話しており、闇バイトで集められた可能性もあるとみられている。
少年法の適用を受けることになる4人が、強盗容疑で再逮捕された場合、罪はどうなるのだろうか。坂口靖弁護士に聞いた。
坂口弁護士は、犯罪をしたのが20歳未満の 「少年」だったとしても「基本的には成人とほぼ同じように逮捕勾留される」と説明する。
「勾留を経た後、事件はかならず家庭裁判所に送致されます。ほとんどの場合は家庭裁判所によって観護措置決定が下され、少年鑑別所に送られます。重大事件にあたる強盗であれば、ほぼ間違いなく収容されるでしょう。
鑑別所の入所期間は原則として4週間程度で、最終的な処分は家庭裁判所の少年審判によって決まります。処分には、刑罰ではなく前科にならない不処分、保護観察処分、少年院送致処分などの『保護処分』や、成人と同様の刑事裁判を受ける『逆送』(検察官送致処分)などがあります」
2022年施行の改正少年法によって18・19歳は「特定少年」とされたが、ほかの少年とは、どのような違いがあるのだろうか。
「特定少年による強盗などの一定の重大事件は、原則として逆送の対象となります。大人と同じように刑事裁判を受けるため、刑罰が科される可能性も極めて高くなり、前科がつく、服役する、などの可能性もあります。ただし、18・19歳の犯行時の判断能力などは成人よりも低くなると考えられるため、刑罰は20歳以上よりは多少軽くなることもあります」
逆送されて刑事裁判を受け、少年院送致などの保護処分が適切と判断された場合、再び事件は家庭裁判所に移送される(少年法55条)。しかし、坂口弁護士は「実際は要件が厳しく、保護処分となる可能性は限りなく低い」と語る。
「強盗致傷罪などの裁判員裁判対象事件は、実際の裁判が実施されるまでに1年程度かかることも少なくありません。少年が裁判までに20歳になってしまい、家庭裁判所に事件を戻して保護処分にできなくなることも多いです。
さらに、特定少年は、逆送されて起訴された段階(刑事裁判を受けることが決まった段階)で、成人同様の実名報道が許されています。実名を公表するか否かは、検察官が事件内容などを踏まえて判断しているようです」
一方、特定少年ではない16歳については、原則として、未成年者としての保護処分に付されることになるという。
「保護観察処分や少年院送致処分となり、刑罰を受ける可能性は低くなります。家庭裁判所は事件を逆送し、成人と同じように刑事裁判を受けさせることもできますが、過去に保護処分を複数回受けたことがある、複数の強盗事件を繰り返している、など、よほどの事情がない限りは、強盗事件で逆送されることは少ないように思われます。
強盗事件のような重大事件の場合には、特定少年か否かによって、少年としての保護処分となるか、成人として刑事罰を受けるか、という点が大きく異なります」
【取材協力弁護士】
坂口 靖(さかぐち・やすし)弁護士
大学を卒業後、東京FM「やまだひさしのラジアンリミテッド」等のラジオ番組制作業務に従事。その後、28歳の時に突如弁護士を志し、全くの初学者から3年の期間を経て旧司法試験に合格。弁護士となった後、1年目から年間100件を超える刑事事件の弁護を担当。以後弁護士としての数多くの刑事事件に携わり、現在に至る。YouTube「弁護士坂口靖ちゃんねる」 <https://youtube.owacon.moe/channel/UC0Bjqcnpn5ANmDlijqmxYBA> も更新中。
事務所名:プロスペクト法律事務所
事務所URL:https://prospect-japan.law/