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GW明けに子どもが「学校に行きたくない」と言ったら? 「不登校」経験ある弁護士に聞いてみた

2023年05月08日 10:11  弁護士ドットコム

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ゴールデンウィークなど、長期休みの明けは、学校に行きたくない子どもが増えやすいタイミングと言われています。その原因は、単なる生活リズムの崩れから、いじめのような深刻なケースまでありますが、親としてはどうすればよいか悩ましい問題です。


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今回、学生時代に「不登校」を経験した弁護士2人に、当時を振り返ってもらいました。各家庭によって環境や方針はそれぞれですが、親としてどう子どもに向き合うべきかのヒントが見つかるかもしれません。



●「いじめで自分の将来が犠牲になるのはよくない」

中高一貫の男子校に通っていた倉重公太朗弁護士。当時はゲームオタクで、友人は少数のゲーム友達のみ。中学入学時の学年順位は「150人中140番くらい」だったが、高校生になると家庭教師との出会いでぐんぐんと成績が伸びていった。



すると、それまで仲良くしていたゲーム友達との距離もでき、孤立していった。成績表の名前が削られたり、物を盗まれたりするいじめにもあった。友達から仲間はずれにされるだけでなく、先生とも対立した。



「大学受験しようと思っていたんですが、この授業では受からないと思い、一人で勝手に自習していたんです。授業を聞いていないから『出てけ』と言われ、本当に出ていって図書館で勉強したこともありました。自ら孤立していきましたね」



学校に行かないことや、行っても図書館や職員室で勉強することが増えた。心の中では「いじめで自分の将来が犠牲になるのはよくない。良い学校に行って見返さないと」と野心を燃やしていた。親も事情を根掘り葉掘り聞かずに、「行きたくないなら行かなくていいんじゃない?」と思いのほかあっさり受け入れてくれた。



「行かないという選択肢を取るまで、月曜になるとお腹が痛くなることがありましたね。今振り返ると悩んでいたんだなと思います。親に言うのは恥ずかしいし葛藤がありましたけど、言ってよかったです。『まあ勉強したら良いんじゃない』とサポートしてくれました」



●母校で講演「学校には行かなくてもいい」

現在、小学生と中学生の2人の娘がいる倉重弁護士。もし子どもが学校に行きたくないと言ったら「まず受け止めて、その通りにさせると思います」と話す。



「子育てしていて、中学生は一人の自立した人間だから、強制的に何かやらせてうまくいくことはないと感じています。本人の気持ちを引き出さないといけないので。そこで親が慌てふためいてしまうと逆効果。普段からの様子をきちんと見ておくことが大事ですよね」



母校の高校で講演したときには、「学校には行かなくてもいい」と話した。



「学校に通うのが嫌なら無理しなくて良い。その代わり、やりたいことがあるなら、とことんやるべき。特にないなら、とりあえず勉強はコスパがいいのでやったほうがいい。そんなふうに話しましたね。



アンケートには『学校が呼んだ人が言うのは新鮮でした』という声もありました(笑)。残念ながら中高の友人は居ませんが、外部の塾でできた友達とは今も親友です。家と学校以外で、第三の理解者を持つことが大切だと思います」



●「強制されたら学校に行く」と通信制高校に

松田和真弁護士が本格的に学校に行かなくなったのは、中学1年生の夏休み後から。「面倒くさがりの性格」で、夏休みの宿題をサボったことがきっかけだった。日中は自宅のリビングで過ごし、インターネットで無料小説を読んでいた。



「漠然とこのままではいけないという思いはありました」。18歳になりせめて運転免許を取ろうと、自動車学校に通った。それから「このままではいけない。高校くらいは卒業しておくべきだろう」という気持ちが出てきた。



「強制されたら学校に行く」。母にそう持ちかけると、「じゃあここに行きなさい」と通信制高校を見つけてくれた。



いざ高校に通い始めると、「大学くらい入ろうか」という気持ちになった。「ブランクが凄まじかった」ため、算数や社会は小学校の勉強からやり直し、自習塾にも行くようになった。



21歳で通信制高校を卒業したあと、1年浪人して早稲田大学法学部に入学した。両親はともに弁護士。「この両親の子どもなんだから、という気持ちがあったようにも思います」



早稲田大を3年で卒業すると、法科大学院に進学。2018年に司法試験に合格し、弁護士となった。2020年、両親が開業した事務所に入った。



●「人生何とかなるもんですから」

自身の不登校経験を振り返り、「とても環境に恵まれていた」と話す。「両親に助けてもらったおかげで、なんとかなった。やりたいことはやらせてもらいましたし、大学行く時もそうですし。家族に恵まれていました」。



不登校について、両親からは何か言われたことはなかった。「当時、私はずっとリビングにいて、仕事以外の時間は親と一緒に過ごしていたし、親も普通に接してくれていました。放置して、普通に生活してくれたことが私にとってはよかったように思います」。



子どもが「学校に行きたくない」と言ったら、親はどうすればいいのだろう。松田弁護士は「答えがあるような問いではないと思う」と話す。



「なぜ行きたくないのか、明確な理由がある子もいれば、明確な理由がない子もいると思います。とりあえず、なぜ行きたくないのか聞いてみる。ただ、感じ方も精神的負荷の程度も人それぞれ。私の経験からすると、お子さんの最終のやりたいようにやらせるしかないのかな」



どのような選択をしたとしても、「必ずしも人生が困難になるわけでもない」と話す。「親御さんには、仮に子どもが学校に行きたくないと言っても、悩みすぎないでほしいと思います」



【取材協力弁護士】倉重 公太朗(くらしげ こうたろう)弁護士KKM法律事務所





第一東京弁護士会労働法制委員会副委員長・同労働法基礎研究部会長。日本人材マネジメント協会(JSHRM)理事、日本CSR普及協会理事。経営者側の労働法専門弁護士として、労働審判・労働訴訟の対応、団体交渉、労災対応等を手掛ける他、セミナーを多数開催。著作は30冊超、Yahoo!ニュース個人「これからの働き方を考えよう」連載等も行う。週刊東洋経済「弁護士ランキング」(2022)人事・労務部門第1位にランクイン。



【取材協力弁護士】松田 和真(まつだ・かずま)弁護士松田共同法律事務所





宮崎県宮崎市出身。2016年早稲田大学法学部卒業、2018年同法科大学院修了。2020年1月弁護士登録、宮崎市内で弁護士として活動開始。交通事故の被害者側を中心に、刑事事件を含めた個人案件から企業案件まで担当。