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【漫画】普通の会社員が天使を拾うと、なぜ不幸が続く? 人それぞれの幸福のあり方を問うSNS漫画に脚光

2023年05月06日 09:01  リアルサウンド

リアルサウンド

漫画『普通の会社員が天使を拾った話』より

 創作物には明確なハッピーエンドも、明確なバッドエンドも存在するが、受け手によって捉え方が変わる作品もある。「ー幸と不幸のそれぞれの形ー」の言葉と共に、4月18日にTwitterで投稿された創作漫画『普通の会社員が天使を拾った話』を読んだとき、あなたはどちらの感想を抱くだろうか。


(参考:漫画『普通の会社員が天使を拾った話』を読む


 来咲明は優秀で、周囲からも信頼されているビジネスパーソン。この日も仕事をしっかり終えて帰宅している最中、道端で倒れている天使・パリカー(リカ)を見かけ、助けるために家まで連れて帰る。リカは人を幸せにすれば元居た場所に帰れるらしく、明を幸せにするために明の家で家事などに勤しむ。リカに亡き妹の面影を重ねながら、失った時間を取り戻すように愛情を注ぐ明だったが、なぜか仕事でもプライベートでも災難が続くようになり……。


 本作を手掛けたのは、「自分の作品で人を喜ばせたい」という思いから、今現在は漫画の専門学校に通いながら漫画制作を学び、休日も食事睡眠入浴以外は制作に打ち込んでいるという紅葉さん(@momiji_guren)。愛らしい“天使”が恐ろしい“悪魔”にも見える本作がどのよう描かれたのか、話を聞いた。(望月悠木)


■人の数だけ幸せの形がある


――なぜ『普通の会社員が天使を拾った話』を制作しようと思ったのですか?


紅葉:まず「人の数だけ幸せの形があるよな」という思いが頭に浮かび、「読み手によってはバッドにもハッピーにも解釈できる作品を描きたい」と思いから制作を始めました。


――ページ数もあり、作画も細やかで、制作時間は結構かかったのではないですか?


紅葉:そうですね。制作期間は3~4ヶ月程かかりました。ただ描くだけではなく漫画の見栄えや演出をこだわって制作に臨んだ作品で、そのために研究期間に1ヶ月も費やしてしまったことが完成を遅らせた主な原因です。


――明が不幸になっていくことで、心の拠り所であるリカを余計に求めてさらに不幸になる、という人間の非合理的な心理が見事に描かれたストーリーでした。人間の心理という扱いにくい概念を表現する際に意識したことはありますか?


紅葉: これといった意識したことは特にありません。「こいつならこう思うだろ、こう感じるだろ」と思えるまでキャラを自分の中で深堀したら、自然と彼らは彼らの心理を持ってくれるので。「こうなったら君はこう思うんだね!よし、私がこう演出してあげよう!」という感じです。


――キャラクターはどのように作り上げましたか?


紅葉:先にキャラが決まったのはリカです。「可愛い!守ってあげたい!」と思える子にしたくてリカができました。もともと「連載の話が来たらこの話を連載したいな」と思うものがあって、その世界観に存在するキャラがリカだったので、すんなり決まりました。一方明はもう完全に自分の好みです。短髪で優しくてお兄ちゃん気質で、好みで描いたのにこの2人が見事にいい関係になってくれたので好都合でした。


――ちなみにリカを僕っ子にした理由は?


紅葉:最初は男の子にするつもりだったので、その名残です。また、そのまま性別がわかんないほうが、明が妹との区別化ができるという狙いもありました。


■変顔しながら表情を描く


――2人のいろいろな表情が見られたのがとても印象的でした。


紅葉:表情を描くことが好きなので、「印象に残る」と言っていただけてとてつもなく嬉しいです。表情ですが、その子たちに感情移入して描いています。表情って喜怒哀楽だけでわかれるものではなくて、そこからさらに細分化していると思っています。


――もう少し詳しく聞かせてください。


紅葉:例えば、「今は嬉しい顔だな」「今は悲しい顔だな」ではなく、「こう言われたらこの子はこう思うよな、こう思う時自分はどういう顔してる?」と考えながら自分の表情筋の動きを意識して、「こういう風に顔が動くのか」と思いながら描いてます。多分描いてる時の自分はかなり変な顔をしている自信があります。


――表情ですと、リカが見せる怖い表情もインパクト抜群でした。


紅葉:「結局最初から計画していたのか」「1度トラックにひかれてから完全な悪魔になったのか」など、私自身もよくわかっていない謎が多いキャラです。ですので、その謎を際立たせるために、「明を陥れるつもりだった企みの表情なのか」「それとも自分のせいだと分かっているから苦しんでいる表情なのか」という部分を曖昧になるように描きました。


――セリフを入れないカットも入れることで、臨場感が演出されていました。


紅葉: 「吹き出しだらけでうるさっ…」と思わない程度にセリフは入れてます。「読者さんに空気感を楽しんで欲しいな」と思うシーンにはセリフは入れないようにも意識しています。


――最後に今後の漫画制作の目標など教えてください。


紅葉: 自分の作品が連載してアニメ化して無事に完結するまで漫画を描き続けるつもりで活動しています。願うことなら生涯現役で漫画を描きたいです。まだ賞レースで揉まれている最中ですが、いつか必ず有名作家になりたいです。


(取材・文=望月悠木)