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『チェンソーマン』デンジはなぜモテる? ファンを虜にする3つの理由

2023年05月06日 07:11  リアルサウンド

リアルサウンド

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※本稿は『チェンソーマン』第128話までのネタバレを含みます。


参考:『地獄楽』を象徴する「異形」の存在、師匠・藤本タツキ『チェンソーマン』との共通点と違いを考察


 4月26日に「少年ジャンプ+」で更新された『チェンソーマン』第128話は、これまでアサやデンジと対峙していた落下の悪魔が突如チェンソーによって切り裂かれるという急展開で幕を閉じた。更新直後から落下の悪魔を強襲した人物の正体を考察する声が多く投稿され、Twitterではこれまで存在を匂わせてきた「偽チェンソーマン」がトレンド入りを果たした。


 今後の展開を占うような言葉がトレンド入りする一方、「デンジくん」という言葉もトレンド入りすることが多い。現にTwitterでは本作の主人公・デンジに対する「かわいい」や「イケメン」といった声が投稿されている。


 なぜデンジは多くの読者からモテているのか。本稿ではデンジの行動を振り返りながら、彼が支持される背景を考察したい。


■自分の本能に忠実な姿


 多くの漫画、とくにジャンプ漫画の主人公は大きな目標を達成するためや他者を救うために行動することが多いが、デンジは自分の本能に忠実だ。


 マキマの勧誘によって公安対魔特異課に所属するまでは、親の残した借金を清算しつつポチタと共に暮らしていたデンジ。第1話で女性とイチャイチャすることを夢見ていたデンジであるが、2022年4月に更新された第127話でアサに「エッチ!セックスしてみたいんだよ!!」と話したりなど、作中では一貫してデンジの性に対する欲求が描かれる。


 とくにジャンプ漫画の主人公において、自身の性的な欲求を素直に表現するキャラクターはなかなか珍しい存在であるはず。ジャンプ漫画において稀な存在であるからこそ、デンジは多くの読者の印象につよく残る存在となっているのだろう。


■子どもらしい無邪気な姿


 自身の本能に従い行動するデンジであるが、ときに彼の本能は無邪気な一面も引き出す。


 第113話で水族館にてアサとデートした際、イソギンチャクやヒトデの解説をするアサに対しデンジはペンギンが見たいと話した。


 そのあと紆余曲折を経てペンギンに出会えると「ペンギンじゃ~ん!」と喜び「かわい~飼いて~な」と話しながらペンギンを抱きかかえた。ペンギンに喜びを浮かべるデンジの様子や表情は、まるで幼い子どものようだ。


 デンジの子どもらしい無邪気な姿は、ときに読者の母性をくすぐるものとして作用するのであろう。多くの読者がデンジを“くんづけ”しているのは、デンジを幼い子どものように感じているからなのかもしれない。


■ときに見せる紳士的な行動


 幼く見えるデンジであるが、第1部と比較し第2部では、とくにアサと行動を共にするシーンでは彼の紳士的な行動が増えたと感じる。


 前述したアサとの水族館デートの最中、二人は悪魔の能力によって水族館に閉じ込められてしまう。大事な場面で失敗することが多く、水の張られた水槽の中で体育座りをしながら「だから私はつまらない人間なんだ……」と嘆くアサを目にしたデンジ。するとデンジは「なに一人でブツブツ言ってたんだ?」と話しながら、アサと同じく水槽の中で腰を下ろし水に浸かった。


 そのあと協力しながら二人は無事に水族館から脱出する。脱出する最中に「(水族館から)出れたらデンジのお願いなんでも聞くから!!」と話したアサに、デンジは「じゃ/また俺とデートして」とお願いした。


 野暮かもしれないが、このときデンジはアサに対し性的な行為をお願いすることもできたかもしれない。しかし再びデートをしてほしいというお願いはデンジ自身のことだけを考えたお願いではなく、アサのことも気遣ったお願いであったと感じる。現にこの直後アサと脳を共有するヨルはデンジのことをちょっと好きになったことを明かしていた。


 自分の欲求を素直に表現しつつ、ふいに見せる他者への気遣い。このギャップはデンジのもつ対照的な顔の魅力を互いに高めるものであろう。とくにデンジの紳士的な振る舞いは、幼いデンジの一面を知る者にとってギャップ萌えのような現象を生む行為であるはずだ。


 本能的に従い行動しつつ、ときに見られる無邪気な子どもらしさ。そして子どもらしさとは対照的な他者への気遣いができる紳士らしさによるギャップーー。とくにアサと過ごす日々のなかで前述したデンジの姿がまんべんなく見られるからこそ、第2部ではTwitterで「デンジくん」がトレンド入りするほどにデンジの人気が高まっているのかもしれない。