2023年05月04日 08:01 弁護士ドットコム
新型コロナの水際対策が緩和されて外国人観光客が増える中、日本ではゴールデンウィーク(GW)を迎えます。観光シーズン真っ只中ですが、かねてよりホテル業界が悩まされているのが、備品の持ち帰りです。
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みなさんの中にも、「どこまで持ち帰って良いのか」と悩んだことのある人もいるかもしれません。ホテル関係者と業界に詳しい弁護士に聞きました。
都内のビジネスホテルで働く女性は、客による備品持ち帰りが「毎日あって、キリがない」と話します。
「ボディーソープをボトルごと盗られたり、タオルや客室内鏡、木製の靴べら、iPhone充電器、海外の変換ケーブルなど数え切れません。盗まれるたびに発注しているのが現状です。あまりに頻度が多いので、スタッフの間でも『あー盗まれたね』で終わっています」
別の都内大手ホテルで働く女性も「今に始まったことではないし、全然珍しくない」とキッパリ。「手で持って動かせるものなら持って帰ってOKと思っている人もいる」と語ります。
トイレットペーパーやペン、メモ用紙、ティッシュ、ドライヤーなどはまだ序の口で、「テレビを持ち帰る人すらいる」というから驚きです。「悪意を持って盗む人もいるとは思うが、どの備品なら持ち帰っていいか、理解があいまいなケースもある」といいます。
持ち帰りに気づいたら、すぐに電話連絡などの対応を取り、備品相当額を請求しますが、外国人観光客の場合、回収できないケースもあるそうです。
高価な備品を置かないという手立てもありますが、「ラグジュアリーホテルではそうもいかない」。団体旅行であればツアーコンダクターに事前連絡して、備品に関して念押しすることもありますが、決定的な対策がないために「なかなか悩ましい問題」ということでした。
ホテル・旅館の法律問題に取り組む佐山洸二郎弁護士は「備品を持ち帰られて困っている」という相談を受けたことがあるといいます。「法的には窃盗罪にあたる可能性が高いですし、返還請求もできます。ただ、実際に何をどこまで請求するのかは難しい」と話します。
佐山弁護士によると、ホテル・旅館の宿泊約款に、持ち帰られては困る備品について「当館の所有物なので、持ち帰りはご遠慮ください」などと明記しておく方法や、備品に直接張り紙やシールなどをつけることも考えられるといいます。
「請求する場合、電話や書面などで連絡して交渉することになります。ただ、アメニティから何まで、すべてについて請求するのか。盗まれたものの金額に応じて返還請求するのか。請求するとしても『お客様は神様である』といった従来の価値観やコストの問題からなかなか難しい場合が多く、どう線引きするのかは、経営者の判断になると思います」(佐山弁護士)
【取材協力弁護士】
佐山 洸二郎(さやま・こうじろう)弁護士
2012年に中央大学を卒業後、同大学院法務研究科卒業と司法試験合格を経て、弁護士登録。企業法務を中心に取り扱う中、ホテル・旅館業界にまだまだ行き届いていない弁護士のリーガルサービスを届けるべく、同業界に特に注力している。
事務所名:弁護士法人横浜パートナー法律事務所
事務所URL:https://www.sayama-lawoffice.com/