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【DMMブックス】漫画編集者に聞く、縦読み漫画はどれを読むべき? 大注目「GIGATOON」作品の楽しみ方と注目作品を紹介

2023年05月03日 13:11  リアルサウンド

リアルサウンド

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 コミックや雑誌、小説、ビジネス本、写真集など、多彩なジャンルの作品が98万冊以上と豊富にあることで人気が高まっている総合書店型プラットフォームの「DMMブックス」。


(参考:【写真】試し読みも豊富にある! おすすめのGIGATOON作品をみる


 無料作品も約2万冊以上があり、話題の作品や独占配信作品など充実したコンテンツを提供している。そんな「DMMブックス」DMMグループのウェブ漫画制作スタジオが「GIGATOON Studio」だ。現在大注目となっている縦スクロール&フルカラーの漫画「ウェブトゥーン」作品で「夫を社会的に抹殺する5つの方法」など人気作を数多くリリースしており、勢いのある制作スタジオだ。


 「ウェブトゥーン」作品は日々登場しており、まずは何を読めば良いのかわからないという方も多いことだろう。そこで実際に「GIGATOON Studio」で編集者をしている山田さんと大藤さんに縦読み漫画の魅力と今読むべき作品について話を伺った。


■「縦読み漫画はアニメーションに近い感覚」
「スピーディに漫画が掲載されるので社会のトレンドがわかるようになる」


ーー2022年1月の設立以降、GIGATOON Studioは多くの縦読み漫画を企画制作し、漫画業界に新たな風を吹き込んできました。「ウェブトゥーン」は着実に人気を高めていますが、その魅力はどこにあるのでしょう?


山田:漫画でありながらアニメーションに近く、やはりサクッと読めることが時代に合っていると思います。内容をぎっしり詰め込み、伏線をたくさん張って……というより、テーマがストレートに表現されているものがウケていますね。


大藤:それがスマホに適した縦スクロールで読める。またフットワークが軽く、トレンドに合わせてスピーディに制作できるのも大きいと思います。私はもともと出版社にいたのですが、そこでは編集長がいて、編集者がいて、何度も確認をとってようやく世の中に発信する……というフローがあり、スピード感がまったく違うのが面白いなと思っています。


ーーGIGATOONの作品を読んでいても、インフルエンサーやリアリティショーなど、アクティブなテーマがよく取り上げられていますね。


山田:ニュースや流行を取り入れている作品はとても多いですね。多くの人が関心を寄せる出来事があれば、ラグなく、熱いうちに作品にする、ということは意識しています。ウェブ漫画の世界では、同じ作品がずっとランキング1位になることはあまりありません。多くの編集者は常にトレンドをウォッチし分析しているので、キャッチアップが非常に早いんです。ですから制作している最中に似た作品が世に出てしまうケースもあるので、バッティングに注意しています。


大藤:ウェブトゥーンの主な読者層が、情報に敏感でアンテナを張っている若年層だということがあります。ですから、例えば「不遇な主人公が人生をやり直す」というトレンドに乗った作品でも、若い人に共感してもらいやすいキャラクターや時代設定でなければ刺さらない、ということもあり、日々トライ&エラーを繰り返しながら、より楽しんでいただける作品をお届けできるようにと考えています。


■現在大人気!「復讐/リベンジ」作品、GIGATOONのイチオシは?


ーーウェブトゥーンは中毒性の高い作品が多く、「試しに読んでみる」ことで思わずハマってしまうことが多々あります。そこで今回はGIGATOONでイチオシの作品を紹介していただきたいのですが、いかがでしょうか。


山田:まずは刺激的なタイトルで、『夫を社会的に抹殺する5つの方法』をオススメしたいと思います。テレビ東京さんでドラマ化もされ、3月まで放送されていたのでご存知の方もいらっしゃるかもしれません。夫からモラハラを受けていた奥様が、復讐をしていくというストーリーです。ウェブ漫画はシンプルさが重要で、その点、本作は「復讐/リベンジ」というわかりやすいテーマであり、その方法が5つあるという設定も、続きを読みたくなるポイントです。


■ドラマ化もされ大人気に!「復讐/リベンジ」系の代表的作品
『夫を社会的に抹殺する5つの方法』


あらすじ:結婚一年目、専業主婦として幸せな日々を送っていた茜は、夫の大輔によって絶望の淵に叩き落される。日ごとに増える暴力、モラハラ……。少しずつ心を壊し、夫の言いなりになっていく茜。それでも「子どもさえできれば彼は変わってくれるはず」と信じていたがーー。夫に裏切られ、命より大事なものを奪われた茜が選んだのは、復讐という修羅の道だった。「簡単には殺してあげない。生き地獄をアナタに味わわせてあげる――」


ーーリベンジものはウェブ漫画のトレンドで、本作はインパクトだけでなく、次々に明かされていく楽しみがあります。また、縦スクロール&フルカラーによる臨場感のある作画が効いていますね。


山田:そうですね、ウェブゥーンという形式に適した内容だと思います。また、これもウェブトゥーンに共通した特徴ですが、従来のコマ割り漫画と比較して、毎話強い“引き”があって終わるので、すぐに続きが読みたくなってしまいます。


ーー単行本でマネタイズできるコマ割り漫画とは違い、1話買い切りの勝負になりますから、どのエピソードも熱量が高いですね。EXILEの大ヒット曲「Ti Amo」の世界観をモチーフとした『愛と裏切りの街 ~Ti Amo original story~』書影も話題ですが、コラボ作品で注目のタイトルはありますか?


■日本レコード大賞大賞を受賞したEXILE「Ti Amo」の世界観はどう漫画になる?
『愛と裏切りの街 ~Ti Amo original story~』


山田:『FISH Buzz』はゆーりさん、遊馬晃祐さん、seraさん、難聴うさぎさん、けい。さんという、TikTok等で話題のインフルエンサーをモデルにしたキャラクターが登場する作品で、好評をいただいています。


■TikTokで話題の人気インフルエンサーがキャラに
『FISH Buzz』


あらすじ:2022年。クリエイターや若い俳優を支援するシェアハウス「FISH HOUSE」には各々の事情を抱えた若者たちが集まっていた。「ゆーり」は女優を目指す女子高生。「けい。」はカメラ助手の仕事をする草食系男子。「難聴うさぎ」はTiktokerとして既に著名でパワフルなインフルエンサー。ある日、シェアハウスのオーナー・深海がゆーりを助けたことがキッカケで悪徳芸能事務所イーグリンの社長・乾鷲の怒りを買い、深海は芸能活動が再起不能まで追い込まれ自殺を試みる。命は取り留めたが長い昏睡状態に陥った深海の復讐の為、ゆーりをはじめとするFISH HOUSEの面々は仲間として動き出す。少年少女の復讐と成長の物語。


ーーシェアハウスという現代的な舞台設定も面白いですし、各インフルエンサーのTikTokアカウントと連動したメディアミックスにもインパクトがあります。


山田:そうですね。その意味でニュース性があり、また本作もある種の“復讐”がテーマになっていてわかりやすいので、一般の読者の皆様にとってもキャッチーで面白く、ウェブトゥーンの入り口になれる作品だと思います。


 もうひとつ新しい作品を挙げるなら、4月半ばにリリースされたばかりの『喧嘩女子眼鏡大王』をオススメしたいですね。タイトルからしてキャッチーなのですが、ケンカ最強のヤンキーとひ弱な女子高生が入れ替わってしまう作品です。どう見ても強そうには思えない女子高生が、バンバン敵を倒していく爽快さもウェブトゥーンらしく、アニメーション的で縦長の構図を活かした作品でもあります。


ーー物語性の高い作品に定評があるイザナギゲームズとのコラボレーション作品で、メディアミックス的な展開も期待できそうです。


山田:そうですね。ゲームもそうですが、実写化で成功するケースも出てきているので、そこも意識しています。ウェブトゥーンから強いIPを生み出していくことは業界的な課題でもあり、より“実写映え”する作品を作ろうという傾向もありますので、ぜひ注目していただけたら嬉しいです。


■ケンカ最強ヤンキーとひ弱な女子高生が入れ替る爽快アクション
『喧嘩女子眼鏡大王』


あらすじ:自他ともに認める喧嘩最強高校生・田川が道を歩いていると、空から少女が降って来て田川に激突。目を覚ました田川は自分の肉体が少女のものになっている事に愕然とする。元に戻る方法もわからず、その姿のまま学校に通うと、酷いいじめが待っていた。少女の家は貧しい母子家庭で、弟とともに新聞配達をしながら家計を助けていた。そんな彼女がいじめを苦にして自殺を図ったことを知った田川は大激怒。貧弱な肉体に戸惑いながらも、持ち前の圧倒的な喧嘩スキルでイジメっ子グループをぶっ飛ばしていく……!


■縦の構図ならではの迫力ある「喧嘩」シーンは見もの


ーーウェブゥーンでは「喧嘩」の描写が洗練されてきており、縦の構図のなかで迫力と没入感が強調されています。確かにドラマ化したら楽しそうな映像的魅力もある作品ですね。


山田:そうなんです。ウェブトゥーンは構図やカメラワークの自由度が高く、「正解」が決まっていない部分があり、『喧嘩女子眼鏡大王』は迫力があって読みやすい、ストレスのない作品になっていると思います。


ーーバリエーション豊かで、気になる3作品を挙げてもらいました。試行錯誤しながら多くの作品を生み出している状況だと思いますが、これからどんな作品を届けていきたいですか?


山田:業界的な大きな目標でいうと、何より「売れる作品を作る」ことが重要だと考えています。男女問わず人気の作品を作って、ユーザーの層を広げていく。いまは女性向けの作品が多めですが、男性向けの作品も積極的に作っていき、反響を分析して「勝ちパターン」を見出していきたいですね。


大藤:そのために、今後もいろんなパターンの作品を作っていこうと。メガヒットを叩き出せる作品を生み出したいと考えていますので、ぜひ5月以降の新作にも注目してください。


■自由で熱量ある表現や作品が多いのでクリエイターにもチャンスが大きい


ーー「漫画」というカルチャーにおいて、日本は才能の宝庫だと思います。ウェブトゥーンの世界に関心を持っているクリエイターに対しては、どんな思いを持っていますか。


山田:先ほども申し上げたように、ウェブトゥーンには正解がないんです。構図やカメラワークを自分で作っていけますし、長い歴史のあるコマ割りの漫画よりオリジナリティを発揮しやすい場でもあって。自分で作った世界が王道になる場合もありますし、横読みの漫画で上手くいかなかった、というクリエイターにも大きなチャンスが拓けていると思うんです。ぜひトライしていただきたいですね。


ーー日本のウェブトゥーンはまだ黎明期ということもありますが、ベンチャーマインド、チャレンジ精神がありますね。荒削りでも熱量の高い作品もあって、作家を応援したくなることも多いです。


山田:そうですね。またウェブトゥーンは分業も多いので、絵を描くのが得意な人、物語を作るのが得意な人など、得意分野を磨き、特化して活躍できる業界だと思います。編集としてもシーンを盛り上げたいという気概がありますので、読者の皆様にもぜひ、新しく熱量のある作品を楽しんでいただけたらうれしいです。


文=橋川良寛