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【漫画】私がいなくても世界は回るし……休職中に感じた虚無感を前向きに転換したSNS漫画が優しい

2023年05月02日 07:11  リアルサウンド

リアルサウンド

漫画『私がいなくても世界は回るし』より

 自分がいなくても、世界は回るーーそんなことを考え、虚無感に襲われた経験がある人は少なくないだろう。しかし、その感覚がある種の救いになることもある。白田シロさん(@hakutajyanaiyo)が実際に休職中に感じた心の変化を描いたエッセイ漫画『私がいなくても世界は回るし』は、読み終わると「もっと気を楽にしていいんだよ」と優しく背中をさすってもらったような気持ちになる。


(参考:漫画『私がいなくても世界は回るし』を読む


 普段は会社員として働きながら、週末を使って漫画制作を行っているという白田さんに、本作を手掛けた経緯、辛い時期の出来事を振り返ることに抵抗はなかったのかなど、話を聞いた。(望月悠木)


■「誰かのプラスになればいいな」


――『私がいなくても世界は回るし』制作の経緯を教えてください。


白田:昨年秋から体調を崩してしまい、それから約5か月ほど、漫画制作ができない時期がありました。そして今年の春にようやく体調が戻ってきたので、「描けなかった期間で感じたことを昇華できないかな」と思って描き始めました。自分としてはかなりスピーディーで、ほとんど勢いで制作した記憶があります。


――インパクトのあるタイトルでした。


白田:当初は全然違うタイトルの予定でした。ただ、漫画制作を通して「私がいなくても世界は回る」ということが頭に浮かんだので、素直にそこをタイトルにしました。今はこれで良かったなと思っています。


――今回のように自分がしんどかった時の経験を漫画にすることに抵抗はなかったですか?


白田:抵抗はありませんでした。「私の経験したことが、もしかしたら誰かに届いて、プラスの形で響くことがあったらいいなぁ」と思ったので。そこは嘘や誇張はなく素直に描きました。


■伝えたかったメッセージとは


――制作中に辛かった時の記憶を思い出す、という作業はしんどそうですが……。


白田:はい。休職してぼんやり過ごしている時、「自分はどんな表情で、どんな想いで過ごしていたかな」と思い出す作業は結構苦労はありました。


――そして、その苦労を乗り越えて本作を完成させました。制作前と制作後の心境の変化はありましたか?


白田:制作前は久々の作画だったので、最後まで描き切れるのか少し不安だったのですが、制作後は、「素直に自分の体験や想いを描いてもいい“コミックエッセイ”という媒体がやっぱり好きだなぁ」としみじみ思いました。約5か月ぶりにペンを取ることができて、最後まで執筆できて、ちゃんと公開することができて、本当に安堵した気持ちになりました。「ああもう大丈夫だな、元気になったな」と感じました。


――主人公である白田さんの表情がとても豊かに描かれていて、切実なテーマではありますが最後まで楽しく読めました。


白田;最後まで楽しく読んでいただけて本当に嬉しいです! 「絵柄はゆるゆる・だけども芯のある漫画」を自分の漫画のテーマとしていつも作画しています。できれば、漫画はエンタメとして楽しく読んでいただきたいので、自分なりに工夫も多いです。例えば、重たさを中和できるくらいのポップさというか軽さが感じられる絵柄、心にスッと入っても負担にならないキャラ作りを意識しています。


――我慢が美徳とされ、逃げることが悪とされる風潮がありますが、そういった空気感を和らげるメッセージを感じました。白田さんとしてはどういったメッセージを込めましたか?


白田:もっと肩の力を抜いて、自分らしく生きていい。「今息苦しさを感じながら過ごしている人がいたら、『もうちょっと肩の荷をおろしていいんだよ』とそっと呼びかけたい」、そんなメッセージを込めました。


――今後はどのように漫画を制作していきたいですか?


白田:完全復活したので、またコンスタントに漫画を描いてSNSを中心に公開していこうと思っています。また、本作でも描いているように私の目標はエッセイ漫画の出版なので、編集部への持ち込みや漫画賞の応募もドンドンしていこうと思っています!目標達成をして、地元の本屋さんで本が並んでいるところを目撃して号泣するのが私の野望なので、達成できるように、これからも健康に気を付けて頑張ります!


(取材・文=望月悠木)