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五条悟や狗巻棘もハジケリスト?『呪術廻戦』に仕込まれた『ボボボーボ・ボーボボ』への愛

2023年04月30日 08:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 『呪術廻戦』の作者・芥見下々は、「週刊少年ジャンプ」の漫画から大きな影響を受けたことを公言している。とくに『BLEACH』などのバトル漫画を強くリスペクトしているようで、その想いがパロディやオマージュといった形で表現されてきた。


 しかし芥見が引用しているのはバトル漫画ばかりではなく、意外な作品もインスピレーションの源泉になっている。それは澤井啓夫の伝説的ギャグ漫画『ボボボーボ・ボーボボ』だ。


 『呪術廻戦』を注意深く読んでいる読者は、さりげない描写の端々に、“ボーボボ”ネタが仕込まれていることに気づくだろう。


 代表的なエピソードは、コミックス3巻に収録されている第19話。映画館で虎杖悠仁を襲う改造人間の1体が、「いいい゛~い せんざい」と呟いている。このセリフは、『ボボボーボ・ボーボボ』の7話でボーボボが首領パッチを誘い出すために放った「いい洗剤ありますよ」が元ネタだ。


 たんなる深読みだと思われるかもしれないが、2021年3月に発売された『呪術廻戦 公式ファンブック』では、芥見自身がパロディを認めている。各話解説の章で、同エピソードについて「改造人間の『ボーボボ』ネタ、誰か気づきました?」と言及していた。


 そのほかにも、分かりやすいオマージュとしては、「ジャンプフェスタ2019」で行われた「最速!キャラクター人気投票」の結果発表が挙げられるだろう。


 ランキング上位に入った呪術高専メンバーがそれぞれにセリフを放っているのだが、明らかに『ボボボーボ・ボーボボ』でもっとも有名なネタの1つ、“全員ボーボボ”の人気投票を意識したものだった。


 こうした描写から見るに、芥見が大の『ボボボーボ・ボーボボ』ファンであることは間違いない。ほかにも作中には、いくらでもオマージュらしき描写を見出すことができる。


例を挙げるなら、狗巻棘の代名詞である「しゃけ」というセリフは、『ボボボーボ・ボーボボ』の3話に登場したバンドが歌っていた「シャケ」と合致する。さらに18話では、ボーボボが食べ物の名前だけで意思疎通するシーンがあり、おにぎりの具だけで会話する狗巻と共通点を見い出せそうだ。


 さらに『呪術廻戦』の149話で呪霊たちが呟いていた「がたぼん」「ぴろぴろぴろぴろ」なども、よく似たフレーズが『ボボボーボ・ボーボボ』16話にあった。なお、元ネタの方は正確には「ガダボン」となっている。


オマージュ、それとも偶然の一致なのか

 しかしながら一度疑い始めると、どこからどこまでがパロディなのか、線引きが難しくなってしまう。というのも、あまりにも両作には共通点が多すぎるのだ。


 たとえば、『呪術廻戦』ならではの設定である「領域展開」。呪術師の生得領域を現実世界に展開し、優位を作り出すという技だが、ここからボーボボによる鼻毛真拳のマル秘奥義「聖鼻毛領域(ボーボボ・ワールド)」を連想するのは強引だろうか。どちらも必中の攻撃で、使用者の持つ真の力を引き出すところもよく似ている。


 また、巨大な象の姿をした式神「満象」の攻撃シーンは、『ボボボーボ・ボーボボ』196話で描かれた象の落下攻撃を連想せざるを得ない。


 ほかにも眼帯(布)をめくって相手を見下す五条悟と首領パッチ、勝利した後に相手の捨て台詞を聞き直す禪院真希とボーボボなど、偶然とは思えないような一致がところどころに見られる。


 それだけ芥見が『ボボボーボ・ボーボボ』を愛しているのか、あるいは読み手の側があらゆる描写を深読みする“領域”に引き込まれてしまっているだけなのか……。真実は作者本人にしか分からないだろう。