4月29日、ベルギーのスパ・フランコルシャンでWEC世界耐久選手権第3戦『スパ・フランコルシャン6時間レース』がスタートした。レース折り返しとなる3時間経過時点では、トヨタGAZOO Racingの7号車GR010ハイブリッド(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス)が首位に立っている。
■スタートタイヤ選択で明暗分かれる
グリッド上では雨はほとんど降っていないものの、路面にはウエットパッチが残るという、微妙なコンディションで迎えた決勝レース。スタート直前、グリッドではウエットとスリック、タイヤ選択が分かれる難しい状況となっていた。
前日の予選で可夢偉がポールポジションを獲得した7号車トヨタGR010ハイブリッドはコンウェイ、隣に並ぶ50号車フェラーリ499Pはニクラス・ニールセン、3番手以下は51号車フェラーリでアントニオ・ジョビナッツィ、2号車キャデラックVシリーズ.Rでアール・バンバー、3号車キャデラックでレンガー・バン・デル・ザンデ、6号車ポルシェ963ではローレンス・ファントールがスタートドライバーを務めた。
予選ノータイムのため36番手スタートとなった8号車トヨタGR010ハイブリッドは、セバスチャン・ブエミがスタートを担当している。
気温8度/路面温度11度というコンディションのなか、フォーメーションラップがスタートすると、コースの一部では雨が降っており、LMP2のユナイテッド・オートスポーツ22号車がラディヨンの丘の上でスピンから左側のウォールにヒットしてしまう。さらにデンプシー・プロトン・レーシングの77号車ポルシェ911 RSR-19、アイアン・リンクス60号車ポルシェがスピンするなど、フォーメーションラップ1周目から波乱が続出する。
フォーメーションラップ2周目にも2台がラディヨンでスピンを喫するなど混乱が続き、レースコントロールはエキストラ・フォーメーションラップ導入を決定。フォーメーション2周を終えた12時45分時点から、計時がスタートした。
このエキストラ・フォーメーションラップ中にも77号車がラディヨンでスピンするなどしたが、レースは合計3周のフォーメーションの後、実質的なスタートが切られた。
1コーナー立ち上がりからオー・ルージュに向けては、ウエットタイヤ勢が躍動。51号車フェラーリが首位を奪い、50号車フェラーリ、2号車キャデラックと続く。7号車トヨタはハーツ・チーム・JOTAの38号車ポルシェ、93号車プジョー9X8にも抜かれ、6番手へとポジションを落としていく。ウエットタイヤが圧倒的に優勢のなか、7号車はピットには入らず、スリックタイヤに熱が入るのを待つ構えのようだ。
レース開始9分というところで、アイアン・リンクス60号車がターン6でスピンし動けなくなったことで、セーフティカーが導入される。
23分で再開。再開直後のラップで93号車をパスしたコンウェイは次の周に38号車、3号車、50号車をパス、みるみるうちに2番手までポジションを戻していくと、首位をいく51号車にも襲いかかり、コントロールライン直前で首位を奪い返した。
スリックへのターンオーバーが始まっていることは明らかで、50号車フェラーリ、2号車キャデラック、38号車ポルシェ、2台のプジョーらはたまらずピットに飛び込み、スリックタイヤへと交換を行う。
次の周にはフェラーリ51号車もピットへと向かい、これでスタートからスリックを選択していた7号車トヨタ、6号車ポルシェ、3号車キャデラック、708号車グリッケンハウス007LMH、4号車ヴァンウォール・バンダーベル680という上位陣のオーダーとなった。最後方からスリックでスタートしたトヨタ8号車も総合7番手にまで順位を上げてくる。
スリックへの交換後もフェラーリ499Pの2台はペースが上がらず、1ラップダウンのクラス最後尾にまでそろって順位を下げてしまう。
開始42分、ベクター・スポーツ10号車から左リヤタイヤが外れストップしたことで、フルコースイエロー(FCY)が導入される。
解除されると5号車ポルシェ、8号車ポルシェが相次いでプライベーター2台を抜き、4、5番手へとポジションアップ。5号車ミカエル・クリステンセンと8号車ブエミはケメルストレートでサイド・バイ・サイドの接近戦を演じるなど4番手を激しく争い、最終的にはブエミが4番手に浮上。レース1時間経過時点で、首位7号車から約40秒というところまで這い上がってきた。
1時間5分ほどが経過したところから、上位勢の最初のルーティンピットが始まる。トヨタ2台はタイヤ・ドライバーともにそのままで、コースへと戻っていった。
最初のルーティンピットを終えると、首位7号車から約30秒後方の2番手に3号車キャデラック、そこから20秒後方の3番手に8号車トヨタ、その5秒後方に6号車ポルシェというトップ4となるが、6号車ポルシェがペースを上げてブエミを逆転し、3番手に立つ。
1時間37分が経過した頃、2番手をいくキャデラックのバン・デル・ザンデがオー・ルージュの進入でバランスを崩し、高速のまま左側のバリアへと大クラッシュ。すぐさまセーフティカーが導入される。3号車は大破したが、バン・デル・ザンデは自力でマシンを降りている。
直後にTV中継のインタビューに答えたチームメイトのセバスチャン・ブルデーによれば、パワーステアリングトラブルが発生したとのこと。WECデビュー戦で好走を見せていた3号車だったが、無念の戦線離脱となった。
1時間55分経過時点でレースはリスタート。それから約20分後、2番手の6号車ポルシェが最終コーナー立ち上がりのコース上に突然ストップしてしまう。のちにインタビューに答えたファントールによれば、突然マシンがシャットダウンしてしまったという。
時を同じくして、アウトラップの4号車ヴァンウォールがターン5でストップし、FCYが導入される。
この直前、首位のトヨタ7号車はルーティンピットに入りホセ-マリア・ロペスに交代していたが、ポルシェのストップにより2番手に上がった8号車はピットインがFCY導入タイミングと重なってしまい、規則上許される5秒間の給油しかできず。
およそ8分後にグリーンとなると、8号車はふたたびピットへ。平川亮へとドライバーチェンジを行い、2番手でピットアウト。
94号車プジョーはピットロード出口手前で突然ストップ。システムリセットを行った後、コースへと復帰している。
レース折り返しとなる3時間経過時点では、ロペスがステアリングを握る7号車トヨタが大きくレースをリード。平川の8号車が2番手に続き、3番手には5号車ポルシェ963が浮上してきている。
全車がオレカ07・ギブソンのパッケージで戦うLMP2クラスでは、クラスポールからスタートしたユナイテッド・オートスポーツ23号車が大半をリードしてきたが、3回目のピット作業を終えると、チームWRT31号車が首位に浮上、その背後にJOTAの28号車がつける展開となる。
レース折り返し時点ではこのトップ争いにチームWRTの41号車も加わり、地元ベルギーのWRTがワン・ツーとなっている。
LMGTEクラスでは、クラス8番手スタートだったDステーション・レーシングの777号車アストンマーティン・バンテージAMRがスタートを務めた藤井誠暢の好走でクラス首位まで上り詰めたが、他車との接触によりペナルティを科されて後退。
3時間経過時点では、リシャール・ミル・AFコルセの83号車フェラーリ488 GTEエボ、2番手にはプロトン・コンペティションの88号車ポルシェ911 RSR-19がつけているが、この2台はピット回数が2回。ピット回数3回の車両のなかでは、ORT・バイ・TFの25号車アストンマーティンが最上位に立っている。
3時間経過時点でDステーション777号車は8番手で星野敏が走行中。ケッセル・レーシングの57号車フェラーリではスタートを担当した木村武史からスコット・ハファカーに繋いだ後、ふたたび木村がステアリングを握り、9番手を走行している。
レースはこのあと、現地時間18時45分(日本時間1時45分)にフィニッシュを迎える予定だ。