キャデラック・チームのアクション・エクスプレス・レーシング(AXR)は、今週末のスパ・フランコルシャン6時間レースのパドックで存在感を示すことで、WEC世界耐久選手権の「ニュアンスを理解する」ことを目指している。
IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権で5度のタイトルを獲得しているAXRは、6月にフランスで行われるル・マン24時間レースのデビューに備え、2台体制で今週末のレースに出場しているチップ・ガナッシ・レーシング(CGR)に少数のスタッフを送り込んでいる。
AXRのチームオペレーション・ディレクターであるクリス・ミッチャムはWECの現場を見学する立場で、GTPクルーチーフのビル・キューラーはガレージで働く3号車キャデラックVシリーズ.Rのメカニックとして加わった。さらに、AXRドライバーのジャック・エイトケンがCGRのレギュラーであるセバスチャン・ブルデーとレンガー・バン・デル・ザンデのラインアップに加わっている。
昨年はル・マンを訪れたミッチャムはSportscar365に対し、スパでWECのパドックに戻り、自身の所属組織に還元するために広範囲なメモをとっていると語った。
「競技に参加していないときにここに居られることは、イベントの流れを見たり、ニュアンスを理解したりするための時間と自由があり、(レース出ることの)次によいものだ」と彼は語った。
「我々には知識ベースとして当たり前になっていることがたくさんある」
「例えば、車両検査を受けるときに自身のライセンスを示すためにACOのハードカードを必ず持っていることを意識する。これは、アメリカ(IMSA)では決して行われないことだ」
「この3日間は、そのような小さな出来事にたくさん出会えるだろう」
「私たちはこのイベントを非常に尊敬しており、参加して競争できるようにしたいと思っている。しかし、どのように参加するかについて現実的に考えることは、仕事と時間を掛けることになる」
「この1年、ワークショップの皆は精神的にも肉体的にも、つねに(新しいクルマの)準備に追われてきた」
キャデラックは今週のスパ6時間レースに3台体制で臨みたいと考えていたが、LMDhプロトタイプを2台追加できるほどのスペースが(スパの)メインピットレーンになかった。代わりにキャデラックが1台追加され、CGRの2台目としてエントリーすることが決まった。
「CGRはすでにヨーロッパに拠点を持ち、こちらにクルマを置いていると思う。一方、(AXRのクルマを走らせることは)本当に成功させるための仕事量を考えると……もし決断が下されるなら、現実的でなければならない」とミッチャムは述べた。
「ここに来てレースでクルマを走らせて、テストをするよりもこれをやる方が簡単ではないのかというと、それはナイーブな話だ。アプローチの仕方を変えただけだっただろう」
■2台のシャシーを送り、3台目はアメリカに残す
ミッチャムは、スパを訪れたことで、AXRがル・マンの舞台で活躍することを期待している。
「セブリングと比較すると、このイベントは運営面でも文化面でもル・マンに近いものがある」と同氏。
「セブリングは慣れ親しんだ環境でありコースもよく知っている。サーキットのこともよく知っているから、改めて目立つことはない。しかし、このような新しい場所ではすべてが際立って見える。まるで、初めて見る絵画のようにね」
「我々が期待しているのは、ル・マンでの時間を節約することだ。ル・マンには何日も滞在するが、飛行機から降りなければならないレベルは、一部の人が準備に掛かると予想するよりもずっと高い」
「キャデラックVシリーズ.Rは新しいクルマだし、ふたつの大陸で同時にプログラムを行いどれだけのことができるのか、まだ理解することがある」
AXRは来週、ル·マンの準備のためにロード·アメリカで2日間のテストを行う予定だが、サーキットの制限により、一夜限りの耐久走行にはならないと見られる。
2週間前、アメリカのチームはノースカロライナの拠点からヨーロッパに向けて海上コンテナを発送した。前述のテストの後、AXRはル・マンでのシングルカープログラム用に2台のシャーシを空輸する予定だ。
一方、AXRはフランスの耐久レースの2週間後に開催されるサーレンス・グレン6時間レースに出場するため、3台目のシャシーをアメリカに残しておく。
「私たちがロングビーチにいるときに、海上コンテナが出発したんだ」とミッチャムは説明した。
「そこにはすべての道具、セットアップ機器、燃料補給機、ホイールなどが詰まっている」
「ダラーラという素晴らしいパートナーがいて、彼らは負担の一部を軽減するトラックを持っているので、私たちは幸運だ」
「我々は2台のシャシーを(ル・マンに)送る。ひとつは完全なかたちで。もう1つは主要な部品をすべて備えたローラーだ。それをヨーロッパに到着してから分解することで、すべてのハードウェアを手に入れることができる」
「もし、手元にあるものをすべて輸送してしまったら、(IMSAの)準備が遅れてしまう。この方法で2台のクルマを送ることで、アメリカで空っぽになることなく、万が一の事態にも間に合わせることができる」