誰しも一度ぐらいは、コンビニでトイレを借りて「助かった」という経験はあると思う。ただ、コンビニのトイレは一般的に、快適とは言い難いのはご存知のとおり。ところが、とあるアルバイト男性(20代)の働くコンビニは「めちゃくちゃトイレがキレイで快適」なのだという。(取材・文:昼間たかし)
「トイレ待ち」まで発生
男性が働くのは東京西部にある大手コンビニ。最寄りの駅からは徒歩10分ほどの立地である。かつては商店街が終わって住宅地になるエリアだったが、ここ10年あまりの間に街の様子はガラリと変わったという。
「大規模な再開発がおこなわれて街が激変しました。これまで雑居ビルしかなかったエリアもオフィスビルになって、急に人通りが増えましたね。一時はランチの際に店が少なすぎると話題になっていたこともあります」
そんなエリアだから、イートインコーナーもあるコンビニは、けっこう賑わっているそうだ。
ところで、もともと地元住民で、この店を利用することもあった男性だが、5年ほど前にアルバイトを始めてまもなく、「やたらとトイレを利用する客が多い」ことに気づいた。
「とにかく常に誰かがトイレを利用していますね。混雑する時間には数人が待っていることもあります。気づいたんですが、なぜか朝夕決まった時間に必ずうちのトイレを使っている客もいるんです」
「トイレ常連」の顔ぶれは様々だが、男性は年齢にかかわらずサラリーマン風で、女性もみんなOL風という特徴があるそうだ。
なぜなのか。
「常連さんの何人かと話す機会があったんですが、『とにかくトイレが綺麗で安心して使える』というのが理由でした。どうやら、自分のオフィスのトイレよりも、ウチの店のトイレのほうがキレイらしいんです。店のトイレだって不特定多数が使っているわけですけど『掃除がゆき届いているから、肌が便座に触れてもまだ我慢できる』ということでした」
さらに、もうひとつ、こんな事情もあるようだ。
「近所に大きめの書店があるんですが、そこは店内に客用のトイレがないんです」
書店に入るとトイレにいきたくなるという人は一定数存在している。そんなタイプの人にとって、このコンビニはなくてはならないインフラのようだ。
「ほかだとトイレが使えるところはカフェぐらいしかないから、書店から急ぎ足でうちのコンビニに入ってくる客も毎日いますよ」
なぜそんなにキレイなのか。男性によれば「店長が極めて綺麗好き」なことが主な原因らしい。
「特に口うるさいということはないんですが、すごく潔癖症なんです。店にいるときは、品出しとかよりも掃除をしていることのほうが多いんです。ほらトイレ掃除もバイトで順番に回すようになっていますが、それ以外も誰も入っていない時を見計らって、しょっちゅう掃除しています。あんまりしょっちゅうトイレに籠もっているので、最初は変態かと思ってました……」
親から経営を受け継いだという店長は、けっこう昔気質の頑固な人だそうで「トイレが汚いと信用されない」という哲学を愚直に守っているらしい。こうして、きれいなトイレのおかげ?もあって、男性の勤めるコンビニは毎日賑わっているそうだが……。
「おかげで大繁盛……といいたいところですが、トイレだけ借りてなにも買わない常連客のほうが多いですね」
ちょっと意外な感じもする。
男性は「いや、気を遣ってなにか買われるとレジが面倒くさいので、無言で使用してくれたほうがバイトとしてはありがたいのですけど」と苦笑していた。