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“FE優先でドラミ欠席”に罰金/AFコルセ同士討ちの結末/ブレーキトラブルの原因と対策etc.【WECスパ木曜Topics】

2023年04月28日 11:21  AUTOSPORT web

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WEC第3戦スパでデビューを迎えたハーツ・チーム・JOTAの38号車ポルシェ963
 4月27日、2023年のWEC世界耐久選手権第3戦『スパ・フランコルシャン6時間レース』のフリープラクティス1と2のセッションが、ベルギーのスパ・フランコルシャンサーキットで行われ、フェラーリ499Pがトップタイムをマークして初日を終えた。

 木曜日の走行を終えたスパのパドックから、各種トピックスをお届けしよう。

■スパでのハイパーカーのBoP変更はなし

 木曜日のFP2でトップタイムをマークしたフェラーリAFコルセのアントニオ・ジョビナッツィは、トヨタ以外のドライバーとして今季初めてフリープラクティスをリードしたドライバーとなった。過去7回のフリー走行は、すべてトヨタGR010ハイブリッドがリードしていた。

 なお、ハイパーカーメーカー各社は、水曜日の夜遅く、スパでのプラットフォームBoP(性能調整)の変更がないことを知らされた。当初はル・マン・ハイパーカー(LMH)規則の全車両で22kgのウエイト増加が提案されていたが、メーカー間の話し合いの結果、実施されないことになったという。

■接触によりレース中のペナルティ確定

 ディエゴ・アレッシはライディヨンで同じAFコルセのGTEアマクラスのドライバー、トマ・フローと接触したため、決勝レース中に30秒間のストップ&ゴーのペナルティを受けることとなった。

 スチュワードのレポートによると、フローはニュータイヤでピットを出て適切なラインを保っていたところ、アレッシが丘の頂上に差し掛かったところでフローの54号車フェラーリ488GTE Evoに後方から衝突したという。

 21号車フェラーリが大きなダメージを負ったことを考慮し、アレッシが次に出場するWECのレースでペナルティを受ける、という文言がレポートには含まれている。事故後、両ドライバーは無事が確認されている。

■ワークスポルシェ963、2台ともトラブル

 ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツは、前戦ポルティマオで発生した5号車ポルシェ963のパワーステアリングトラブルを受けて「対策」を施したと、ファクトリーLMDhディレクターのウルス・クラトレは明かした。

「基本的には電気的なものだった。ポンプ自体は油圧だが、パワーステアリングから油圧ポンプへの、電気的な故障が発生したんだ。それは、本当にすぐに見つかった。サーキットではなく、ファクトリーに戻ってから見つかったんだ」

 スパのFP2では2台のファクトリーポルシェに別々のトラブルが発生した。5号車はドライブシャフトの不具合、6号車はハイブリッドシステムの不具合に見舞われた。

 また、キャデラック・レーシングの3号車キャデラックVシリーズ.Rのストップは、火災が原因であったことが後に確認されている。ドライバーのレンガー・バン・デル・ザンデがコース脇で消火した。

■Dステーションと接触したヴァンウォールにペナルティ

 フロイド・ヴァンウォール・レーシングチームのドライバー、エステバン・グエリエリは、FP1中にLMGTEアマのDステーション・レーシング777号車アストンマーティン・バンテージAMRの星野敏と衝突を起こしたとして、FP2の開始時に10分間のストップ&ホールド・ペナルティを科された。

 スチュワードのレポートによると、グエリエリは「追い越しの判断を誤り、ブレーキングゾーンで777号車に衝突した」という。

 また、バイコレスのオーナーであるコリン・コレスが語ったところによると、ポルティマオでのヴァンウォール・バンダーベル680のブレーキトラブルはデブリが原因であり、ブレーキサプライヤーのAPレーシングと調査が行われたとのこと。

 コレスは、この問題が再発しないよう、ヴァンウォールはピットストップ時にブレーキダクトをより徹底的に清掃する予定だと付け加えた。彼らはル・マン24時間レースに向け、イタリアのモンツァで数日間のテストを行う予定だ。

■アストンのBoP緩和は「充分だとは思わない」

 Dステーション・レーシングの777号車アストンマーティンは、エンジントラブルでポルティマオ戦をリタイアした後、新しいエンジンを搭載してスパを走行している。チームをオペレートするTFスポーツの代表、トム・フェリエによれば、チームは根本的な原因についての報告を待っているところだが、「ある種の内部故障、おそらくバルブの脱落」であろうと付け加えている。

 またフェリエは、このイベントに先立ちアストンマーティンが受けたBopの緩和(燃料容量1リットル増量とターボブースト圧0.02bar増加)は「小さな変化」であるとし、スパでの競争力を高めることはできないだろうと示唆した。

「正直なところ、これで充分だとは思わない」とフェリエは言う。「正しい方向への一歩ではあるが、現状を考えると、とても小さな反応に思える。今週も、かなり長い週末になると思う」。

■新車デビュー戦で罰金

 木曜日にハーツ・チーム・JOTAの38号車ポルシェ963のステアリングを握ったのは、ウィル・スティーブンスとイーフェイ・イェのみだった。アントニオ・フェリックス・ダ・コスタは、ポルシェのフォーミュラEシミュレーター業務のために欠席し、金曜日のFP3に参加する予定となっている。

 ダ・コスタは、木曜日の朝に行われたドライバーズブリーフィングを欠席したため、500ユーロの罰金を科せられた。スチュワードのレポートでは、ダ・コスタの欠席は事前に知らされていたものの、不可抗力とみなされる理由は示されなかったと指摘されている。

■「心強いスタートとなった」JOTAのポルシェ963

 スティーブンスは、JOTAのポルシェ963をWECの公式セッションで最初に走らせたドライバーとなった。先週行われたロールアウトでは、ポルシェのファクトリードライバーであるマット・キャンベルがステアリングを握っていたからだ。

 スティーブンスは「とても心強いスタートとなった。この週末は、できる限り多くの周回を重ね、我々が持つパッケージを学び始め、その後、二次的なパフォーマンスについて気をかけることになる」と述べている。

 木曜日のフリープラクティスはドライコンディションで行われたが、金曜日は雨が予想されている。「明日はかなり雨模様で、マシンを学ぶにはもう少しトリッキーなコンディションになりそうだ」とスティーブンス。

「結局のところ、ここでいろいろなことを経験すればするほど、ル・マンに向けた準備ができるんだ。いいスタートが切れた。この調子でいけるといいね」

 一方、WECにおけるもう1台のカスタマー・ポルシェ963となるプロトン・コンペティションは、シーズン第5戦のモンツァでデビューする見込みであり、ル・マンで登場する可能性はかなり低くなっている。

 チームオーナーのクリスチャン・リードは「我々は数週間以内にLMDh車両を入手し、モンツァでレースを開始する予定だ」と明かした。

■グリッケンハウス、今年もチャリティ実施へ

 グリッケンハウス・レーシングのオーナーであるジム・グリッケンハウスは、木曜日のイベント前のカンファレンスで、ル・マンで再びアーティストと提携してチャリティーオークションを行い、その収益をユニセフに寄付すると明らかにした。

 昨年は、ピポ・デラーニが特別なデザインのヘルメットで走り、ブラジルの小児病院への寄付を募るためにこれがオークションにかけられた。

 グリッケンハウスはまた、チームが5月の第1週にル・マンのドライバーラインアップを明らかにすることをほのめかした。708号車に加え709号車をエントリーさせるル・マンでは、今季ここまでにドライブしたオリビエ・プラ、ロマン・デュマ、フランク・マイルー、ライアン・ブリスコーに加え、2つの空席を埋める必要がある。

■1コーナー先にスパの新スタンドが完成

 スパ・フランコルシャンサーキットの『エンデュランス・ピットストレート』(1コーナーのラ・ソースからオー・ルージュへ向けた下り坂)のアウト側に設けられた新たなグランドスタンドの落成式に、ACO会長のピエール・フィヨン、WECのCEOであるフレデリック・ルキアン、FIAエンデュランス・コミッティ委員長のリシャール・ミルが出席した。

 この新しい屋根付きのグランドスタンドは、4100の観客席と40人分のバリアフリーシートを持つ。スパ・フランコルシャンの取締役会長であるメルキール・ワテレは「この落成式は、昨年から始まった観客収容施設の改修の第2段階となる」と述べた。

「この工事は、観客とカスタマーのために最高水準のホスピタリティを維持したいというサーキットの願いを具現化したものだ」

 またこの日、WECおよびELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズとスパとの開催契約が、2028年まで延長されたことが発表されている。

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 金曜日の走行は、現地時間午前11時(日本時間18時)スタートのFP3から始まる。予選は17時(日本時間24時)に開始される予定だ。