2023年04月27日 18:31 弁護士ドットコム
フリーランスの取引を適正化するための「フリーランス新法」について、国会で法案審議が進んでいる。4月27日に参院内閣委員会で全会一致で可決され、28日の参院本会議で成立する見通しだ。
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フリーランスの環境整備に取り組んできた「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」は4月27日、都内で記者会見を開き、フリーランス新法のポイントや社会保障をめぐる課題、フリーランスのトラブルについて説明した。平田麻莉代表理事は「新法の内容についてフリーランス一人一人が『自分ごと』と理解し、自己防衛に役立ててほしい」と話した。
同協会は、フリーランスに新法の内容と課題について広く知ってもらうために会見を開いた。
フリーランス新法は、フリーランスの取引の適正化と就業環境を整備するための法律だ。フリーランスはこれまで取引先から報酬が支払われなくても泣き寝入りするケースが少なくなかった。契約書を交わさずに、口頭のみで発注というケースもある。同協会が2017年に行った実態調査では、報酬トラブルがあったと回答した人は全体の約7割で、このうち約4割が「泣き寝入りをした」と答えた。
こうしたトラブルを防ぐため、新法では、企業などがフリーランスに仕事を発注する時に、業務内容や報酬額を書面やメールなどで明記することを義務付けている。受けた仕事を再委託するケースなどを想定し、フリーランス同士の取引も対象にしている。フリーランスが成果物など役務を提供した日から60日以内に企業が報酬を支払うことも定めた。
働く環境の整備については、事業者に対しハラスメントの防止体制の整備や、育児や介護と両立して働けるようにフリーランスの申し出に応じ、必要な配慮をするよう求めている。
平田代表理事は新法の内容を概ね評価した上で、新法成立後に取り組むべき課題を2つ挙げた。
1つは、社会保障に関することだ。現状では会社員とフリーランスでは出産と育児の経済的な支援に差がある。雇用契約に基づき働く会社員は、育休中に育児休業給付金を受けることができる。一方、雇用契約のないフリーランスはゼロだ。つまり育休中で稼働しない期間は、入るお金がないということになる。
会社員が加入する健保組合などから出産前後に受け取る出産手当金も同様だ。フリーランスの多くが加入する国民健康保険は、出産手当金は「任意給付」のため、給付する自治体はない。
平田代表理事は「財源の問題はありますが、国民健康保険の法律を任意給付から給付義務に変える方法もあると思います」と話す。このほか2024年からフリーランスは産前産後期間は国民健康保険料が免除となる見込みだが、会社員との格差は依然として大きい。
2つ目の課題は偽装フリーランス(偽装請負)対策だ。偽装フリーランスとは、契約上はフリーランスで、業務委託契約などを結ぶが、働き方の実態は会社に雇用される社員と同じで会社から指示を受けて働くというものだ。
同協会によると、出版社や放送業界、専門学校・スクール、軽貨物業界などに多いとされる働き方だ。法律上の「労働者」とほとんど同じ働き方をしているのに、法律で守られない不条理さがある。
会見では、フリーランスのトラブル相談に乗る「フリーランス・トラブル110番」の堀田陽平弁護士が、トラブルの実態と新法について話した。
堀田弁護士は「あくまで私個人の考え」と前置きした上で、フリーランス新法で解決できる法的トラブルについて①資本金の要件などで下請法が適用されない取引にも禁止行為が適用される②取引条件の明示義務がフリーランス同士など広い範囲で適用される③ハラスメントの防止措置義務や、契約解除の予告義務――などを挙げた。
課題もある。仕事のマッチングの場を提供する仲介事業者は今回の新法の適用外だ。プラットフォーマーを介し、仕事を受けるフリーランスも多いため、今後の課題となってくるとみられる。
事業者だけではなく、フリーランスも注意しなければいけない点がある。堀田弁護士によると、フリーランス・トラブル110番には「仕事を受注したが、解除したい」という相談も多いという。しかし、業務委託が「請負契約」と性質決定される場合には、受注者側からの任意解除権はない。仕事を受けるフリーランス側も安易に仕事を受けず、責任を持って受注しなければならない。
(ライター・国分瑠衣子)