ポルティマオでの第2戦決勝からわずか10日、WEC世界耐久選手権に参戦する各チームはベルギー、スパ・フランコルシャンサーキットのピットで第3戦向けのマシンの準備に追われた。
このレースでは2台目のキャデラックVシリーズ.Rとなるチップ・ガナッシ・レーシングの3号車、さらにはハーツ・チーム・JOTAの38号車ポルシェ963が加わり、最高峰ハイパーカークラスは13台のエントリーを集めることとなる。
そんな走行前日、4月26日(水)のスパのパドックから、各種トピックスをお伝えする。
■ハイパーカークラスにBoP変更の可能性
前戦ポルティマオ6時間レースからGTEアマクラスのBoP(性能調整)が変更され、アストンマーティン・バンテージは燃料タンク容量が1リットル増やされ、ターボブースト圧も0.02bar増加が認められた。
水曜日の午後10時現在、ハイパーカークラスのBoP変更が行われるかどうかについての公式な通知は何もない。LMH(ル・マン・ハイパーカー)とLMDhのどちらのプラットフォームの車両も、2レースごとに調整することができるが、スパはこれが発生する可能性のある最初のラウンドとなる。
トヨタGAZOO Racingのテクニカルディレクターであるパスカル・バセロンは、水曜日の午後、記者団に対し、最新情報を待っているところだと語った。
「レギュレーションでは、プラットフォームBoPの変更可能性がここでは考慮されている。レギュレーションに書いてあること以上のことは分からない」
■ドラゴンスピード以来となるトップカテゴリー復帰
2台目のキャデラックVシリーズ.Rとなる3号車をドライブするレンガー・バン・デル・ザンデは、ドラゴンスピードのBRエンジニアリングBR1・ギブソンを走らせた2018/19シーズン以来となる、WECトップカテゴリーでの走行を迎える。
「ドラゴンスピードのLMP1のときは、ひとつの大きな“ハッスル”だったし、周回を重ねることがすでに特別な何かだった。(現在とは)別のゲームだったんだ」とバン・デル・ザンデ。
「いまの僕らは優勝を目指して挑戦する準備ができている。まったく異なるゲームだよ」
バン・デル・ザンデはまた、キャデラックVシリーズ.Rの3号車にとっては、木曜のフリープラクティスが「シェイクダウン」となる、と付け加えている。このシャシーは、以前は風洞実験用の個体として使用されていた。
■「コースは合っている」とプジョー陣営
プジョーのテクニカルディレクターであるオリビエ・ジャンソニーは、LMHプログラムで訪れたことのないスパで、プジョー9X8がどの程度強いかを「判断するのは難しい」と考えている。
「コースプロファイル自体は、我々にとって非常に良いものだ」とジャンソニーは言う。
「それまで訪れたことがないサーキットでは、取り扱いが複雑になる。多くのコーナーが、とても難しいんだ」
■タイヤスペックは“特別対応”
ハイパーカークラスのチームは、ミシュランタイヤの3つのスペックすべてをスパで使用できることになった。今季から導入されたタイヤウォーマー禁止規則、このクラスにおけるクルマの多様性、そしてスパの「予測不可能な天候」などを要因として挙げたミシュランは、「ドライバーの安全上の理由」から第3のスペックを持ち込むオプションをシリーズに要求したのだ。
WECコミッティはこのミシュランの要求を受け入れ、チームはこの週末に限り、低温用ソフトタイヤ、高温用ソフトタイヤ、ミディアムタイヤという3スペックすべてを使用することができるようになった。
通常、ル・マン以外のWECのラウンドでは2スペック制が採用されている。
■グリッケンハウスが『オールフレンチ』に
グリッケンハウス・レーシングでは、ライアン・ブリスコーに代わりフランク・マイルーが708号車グリッケンハウス007 LMHのドライバーとして加わっている。これにより、アメリカのチームであるグリッケンハウスの708号車のドライバー布陣は、ロマン・デュマ、オリビエ・プラを含め全員がフランス人となった。
当初はDTM王者のマキシミリアン・ゲーツがスパでのシートを狙っていたが、ジム・グリッケンハウスはスポンサーの関係で「可能性は低い」と述べていた。
マイルーは昨年のル・マンでブリスコー、リチャード・ウェストブルックとともに総合3位となったグリッケンハウスのクルーの一員であった。
■クビアトを“強襲”した女性ドライバー
ダニール・クビアトは、水曜日の午後、プレマのガレージで29歳の誕生日を祝福された。
ランボルギーニのファクトリーラインアップ入りが発表されたクビアトは、2020年のベルギーGP以来となるスパでのレース出場を果たすことになるが、そのレースを前にした誕生日では、63号車オレカ07・ギブソンをシェアするドリアーヌ・パンから“顔面ケーキ”を食らうこととなった。
■パドックに顔を見せた関係者たち
スパの『エンデュランス・ピットストレート』を見下ろす新しいグランドスタンドは、木曜日に落成式が行われる。これは昨年オープンしたラディヨンの大型グランドスタンドを含む、サーキットの大規模改修プロジェクトにおける最新の設備となる。
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サードやJLOCなどからル・マンに5回出場した経験を持つ、マルコ・アピチェラが水曜日のパドックに姿を現した。
かつて日本のフォーミュラやGTレースでも活躍したイタリア人のアピチェラは、現在ヘルメットメーカーのスティーロで仕事をしている。
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ニコラ・ラピエールもまた、水曜日のパドックでアルピーヌ・エルフ・チームの関係者や、トヨタ時代の同僚であるセバスチャン・ブエミと行動を共にする姿が目撃された。
ラピエールは2024年デビュー予定のアルピーヌLMDh車両のテスト業務と、クール・レーシングのチーム代表およびELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズでのドライバーを兼任しており、今季のWECには出場していない。
■水素エンジンカーがデモランへ
ACOフランス西部自動車クラブが支援する『ミッションH24プロジェクト』の水素エンジン搭載プロトタイプカーが、土曜日の決勝前にデモンストレーションランを行う予定だ。この車両は第一世代の『LMPH2G』で、ミシュラン・ル・マン・カップを完走した新型のH24は静態展示される予定だという。
デモランでは、スパ・フランコルシャンサーキットCEOのアマウリー・ベルトロームとともに、ACO会長のピエール・フィヨンがLMP2HGをドライブする。
フィヨンは次のように述べている。
「ハイパーカー・クラスが本領を発揮しつつあるいま、耐久レースは排出ガスの低減に取り組む必要がある。ミッションH24では、水素という選択肢を探っている。このラボラトリー(実験室)プロジェクトは、すでにいくつかの自動車メーカーを説得している」
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スパ・フランコルシャン6時間レースの公式セッションは、4月27日木曜日に設けられた2回の90分間のフリープラクティスで幕を開ける。FP1は現地時間11時30分(日本時間18時30分)から、FP2は16時20分(同23時20分)にスタートする。