2023年04月22日 09:01 弁護士ドットコム
みなさんは、車の貸し借りをしたことはありますか。3月には「近所の人に車貸してって言われたら貸す?」と車の貸し借りに疑問を投げかけるツイートが話題になりました。
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近所の人から車を貸してもらうようお願いされたという投稿者。「気軽に車って貸すもんなの?」と問いかけた投稿には、「絶対貸さない」「車の保険の関係もあるし。親兄弟親戚だとしても、簡単には貸せませんよ」などのリプライが寄せられていました。
弁護士ドットコムにも、車の貸し借りに関する相談がいくつか寄せられています。中には貸した車で事故を起こされたが、「勝手にその場で示談をされて、お金をその人が受け取って、車の修理をしてくれない」というものもありました。
車の貸し借りには、どのようなリスクがあるのでしょうか。清水卓弁護士に聞きました。
——車の貸し借りをした場合のリスクを教えてください。
もし車を貸した相手が事故を起こした場合、その事故で負傷した被害者は、運転をしていた人に損害賠償請求できるだけでなく、自動車損害賠償保障法の第3条本文に基づき、車を貸した人に対しても損害賠償請求をすることができます。
車を貸した人が負担するこの損害賠償責任のことを運行供用者責任と言いますが、車の貸し借りには、実は運行供用者責任という目に見えないリスクが潜んでいます。
ここで、「任意保険に加入しているなら、賠償義務を負うことになっても別に大丈夫なのでは?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、加入している任意保険の内容によっては、いざという時に任意保険が適用されず、高額の損害賠償責任を負担する羽目になるので、注意が必要です。
車の貸し借りでは、車を貸した人が任意保険に加入しているケースと、車を借りた人が任意保険に加入しているケースが考えられます。
ここで、加入している任意保険の内容・特約を正確に理解している方はどのくらいいらっしゃるでしょうか。
たとえば、普段は家族しか乗らないからと家族限定特約など、「運転者の範囲を限定する特約」を付けている場合があります。
このような特約が付いていると、貸した相手である友人や近所の人が人身事故を起こした場合、車を貸した人の任意保険の適用がないことになってしまいます。
——車を貸した相手が任意保険に加入しているなら、それが適用されるのではないでしょうか?
他人の車を臨時で借りて運転している際に事故にあった場合に、借りた車を自分もしくは家族が自動車保険に加入している車とみなして補償を受けられるようにする「他車運転特約」が付いていなかったり、車を借りた人が「他車運転特約」の適用範囲外であったりする場合には、車を借りた人側の任意保険も適用されない事態もありえます。
――車を貸すとして、どんなことに注意すればいいでしょうか?
たとえば、以下のように安全確保のための条件をしっかりとクリアできる場合に限るようにする等の試みが考えられます。
(1)貸す相手をしっかり選ぶ
(2)任意保険の加入・適用の有無を事前に確認する
(3)貸す理由・緊急性・必要性の有無などを事前に確認する(レンタカーを借りることができるような環境なら貸さない等)
(4)貸す期間・時間、使用方法、返還場所・返還方法などを事前に明確に取り決める(取り決めができない、取り決めを守れないような相手には貸さない)
この記事をご覧のみなさんの中には、すすめられて加入した・お任せで加入したなどのように、加入している任意保険の内容をよく確認や理解しないままにしてしまっている方はいらっしゃいませんか。
車に乗る前の安全点検は大切です。これを機に、ご自身及びご家族が加入している任意保険の内容・特約を一度よく確認してみてはいかがでしょうか。
【取材協力弁護士】
清水 卓(しみず・たく)弁護士
東京の銀座にある法律事務所の代表を務め、『週刊ダイヤモンド(2014年10月11日号)』で「プロ推奨の辣腕弁護士 ベスト50」に選出されるなど近時注目の弁護士。交通事故分野などで活躍中。被害者救済をライフワークとする“被害者の味方”。
事務所名:しみず法律事務所
事務所URL:http://shimizu-lawyer.jp/