2023年04月20日 16:51 弁護士ドットコム
トルコ国籍の少数民族クルド人の男性が、入管施設の収容中に職員から暴行されたなどとして起こした国賠訴訟で、東京地裁は4月20日、慰謝料など22万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
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判決を受けて、都内で記者会見を開いた原告のデニズさん(44歳)は「これは拷問です」と強い言葉で入管を批判した。国賠で一部の行為が「違法」と認定されたことから、入管職員を刑事告訴する考えも明らかにした。
クルド人難民申請者のデニズさんは2019年1月18日夜、収容されていた茨城県牛久市の東日本入国管理センターで、不眠のためにもとめた睡眠薬の提供を断られた。
抗議したところ、7人前後の入管職員によって居室から「処遇室」と呼ばれる別室に運び出され、うつ伏せ状態のまま後ろ手で手錠をかけられ暴行されたという。
デニズさんは国を相手取り、慰謝料など約1100万円をもとめて提訴した。
原告側によると、東京地裁は、入管職員がデニズさんの顎下の痛みを感じる「痛点」を親指で押した行為について、約20秒にも及び、合理的に必要とされる限度を超えて「違法だ」と判断した。
また、うつ伏せ状態で左ひじを押さえつけて背中を押さえた行為や、後ろ手に手錠された両腕を上に上げた行為についても違法と認定した。
一方、入管側は、制圧や隔離のきっかけとなったのは、デニズさんが職員の腹を蹴るなどの暴行をしたからだと反論していた。この点について、判決は、足は腹に当たったが、故意ではないとした。
一方、この出来事のあとにデニズさんがPTSD(心的外傷後ストレス障害)を患い、自殺未遂などを繰り返したことと、暴行との因果関係は否定している。
デニズさんの代理人をつとめる大橋毅弁護士は「一部勝訴」と受けとめ、「入管職員の行為に合理性も相当性もない。正当な抗議をしていたものを黙らせるため、暴行をしたという認定は、厳しい断罪の内容であろうと考えています」とし、入管による行為の違法性を認めた判決を評価した。
デニズさんは会見で「今日の裁判に勝ちました。ただ、勝ちましたけど、今後も入管は私たちに対して攻撃をするのではないかと思っています。私に言わせれば、これは拷問です。世界で拷問が禁止されているにもかかわらず、拷問を与えているのであればおかしい」と話し、入管の姿勢にいまだ疑問を抱いている。
「入管施設に入れられた人たちは健康な体で入ってボロボロになって出てくる。これが入管のせいでなくて誰のせいでしょう」(デニズさん)
原告側によると、控訴も検討するという。また、今回の違法行為とされた暴行をおこなった職員を特別公務員暴行陵虐罪で刑事告訴する考えも明らかにした。
「勝ちました。暴力をふるったスタッフを警察に差し出したいと思ってます」(デニズさん)