一見うまくいっているようでも、実は全く噛み合っていなかった……なんてことがあるのが、コミュニケーションの難しいところ。職場でもプライベートでも、後で話を聞いてみると「話がまるで違った」なんてことはよくある。まりさん(仮名・30歳)は、とある男性に「振り回された」せいで男性不信に陥っているという。「都合の良いように人を利用して、本当に腹が立ちます」と憤る彼女に、何があったのか話を聞かせてもらった。(取材・文:山崎 尚哉)
彼が要求してきたのはまさかの……
その男性は、とても顔と性格がタイプだったという。当時まりさんには長年同棲していた彼氏がいたが、一目惚れのような形で浮気をしてしまったそうだ。
「彼との出会いは、偶然でした。男友達と飲んでいたら、その場にたまたま居合わせた男友達の知人で、一緒に飲んだのが初めての出会いです。とにかく顔がかわいくて、タイプの4個年下の男の子でした」
飲みの席でSNSを交換し、コメントをしあったりして徐々に関係性が深まっていったという。やがて、自然とふたりで飲むようにもなった。
「体の関係を持ったのは、初めてふたりで飲みにいった時です。私も酔っ払ってしまい、どうにでもなれと思って、ホテルに入ってしまいました。そのとき酔っ払った勢いでかはわかりませんが、『罵倒しながら俺を責めてほしい』と言ってきたんです」
突然の性癖の告白にとまどったが、もともとSっ気があったまりさんは、承諾して彼を罵倒。それがよほど気に入ったのか、その後「俺と付き合ってくれないか?」と告白までされたそうだ。
「すごく嬉しかったのですが、その時は彼氏がいたので、つい断ってしまいました。ただ彼氏と別れるので待っててほしいとも伝えました。その後、実際に私は彼氏と別れてひとり暮らしを始め、彼が私の家に入り浸るようになりました。そこで『このクソが!!』『こんなのがいいなんて変態だな!』などと罵倒しながらプレイをするようになりました。過激になりすぎて、隣の部屋からノックが来たこともあります」
もう一度改めて「お付き合いしましょう」という会話はなかったが、まりさんは「約束したとおりに元カレと別れて、新しいカレと付き合っている」という感覚だったという。
ところが、相手の気持ちはまるで違ったようで……。
「ある日突然、『実は彼女が出来たんだ。だから今までみたいにこの家に通うことはできない』と言われたんです。驚いて『どういうこと?私たち付き合ってたんじゃないの?』と尋ねると、『そうだったの?だって前俺のことフったやん!』という返事が。これにはガクッと来てしまいました」
大いなるすれ違いだ。
「私は見たくないのに、新しい彼女の写真を見せてきたりもしました。風貌が私にそっくりで、こういうタイプが好きなのかと。私よりも10歳くらい若い女の子で、年齢で負けたのが悔しかったですね」
まりさんは突然の「別れ」に意気消沈し、落ち込む日々が続いた。しかし1ヶ月くらい経ったころ、彼からまた連絡が。
「君とのプレイが忘れられない。もう一度会ってくれないだろうか?」
なんとも都合のいい話だが、まりさんにはいちおう、嬉しい気持ちもあったそうだ。しかし、「彼女との関係性はどうなったの?」と尋ねたところ、「かわいそうで、すぐには別れることはできないから待ってほしい」とのこと。
さすがのまりさんも付き合いきれなくなって、「今日中に決めないともう二度と会わない」と宣言。結局、渋る男性の目の前でSNSを全てブロックして、「二度と連絡してくるな、と縁を切った」とのことだった。
大いなるすれ違いの2人であった。
ただ、まりさんはすっかり罵倒プレイにハマってしまい、その後ソフトSMの風俗店で働き始めたとのことだった。何がきっかけで人生に転機が訪れるかは、まるで予想ができないものだ。