2023年04月19日 11:21 弁護士ドットコム
ChatGPIなど、チャット型AIの注目度が飛躍的に高まる中、弁護士の業務にはどんな影響が出るのでしょうか。弁護士ドットコムは弁護士業務にAIが導入されることについて、会員の弁護士にアンケートを実施しました。
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正確性や守秘義務、非弁行為の該当性などクリアしなければならない課題はあるものの、弁護士業務の効率化ツールとしての活用に期待する弁護士が7割以上いることがわかりました。
アンケートは2023年4月4日から9日まで実施。146人が回答し、「期待している」が47.9%、「やや期待している」が26.0%、合計すると7割を超えました。「どちらともいえない」が16.4%、「やや不安だ」が6.2%、「不安だ」が3.4%でした。
業務でAIを使うことについての懸念を尋ねたところ、最も多かったのは「事実関係や法律上の間違い(精度・品質の低下)」で76.0%。次いで「守秘義務や情報漏洩」が67.8%、「非弁問題」が43.2%、「著作権侵害」が34.2%、「特にない」が6.2%、「その他」が2.1%となりました。
その他の回答として、「AIを利用したい依頼者と弁護士との橋渡し」「回答の根拠が示されないこと」「裏付けとなる文献の引用がないこと」という声もありました。
AIツールの導入で期待していることを尋ねたところ、 8割超が「判例などの調査」と回答しました。他に6割を超えたのは「依頼者・相談者らからの聞き取りの文字起こしや要点整理」が(74.0%)、「書面作成への活用」(66.4%)、「誤字脱字のチェック」(61.6%)でした。
他には「業務フローの改善」が54.8%、「法律相談」26.7%、「特にない」4.1%でした、
「その他」が6.2%で、「ざっくりとした論点の洗い出し」「引用文献の明記」「教育」「AIによる主張書面の下書き」「契約書の作成」「趣味ないし弊所のシステムに関するソースコードのチェック」「電話応対」「翻訳のチェック」などの声がありました。
AIと弁護士業務について、今後の展望について自由回答で尋ねました。最も目立ったのは業務効率化やコスト削減への期待です。一方で、弁護士の仕事がなくなる懸念やトラブルを心配する声も聞かれました。
具体的なコメントについて、以下で紹介します(抜粋)。
【より専門的な知識が必要になる】
・個人情報の問題が完全にクリアされれば、書面作成は大幅にAIにとって代わられ、弁護士業務の大半は感情労働になると考えている。
・弁護士ドットコムで寄せられるような事実関係を抽象化した質問に関しては、AIで一定の回答ができてしまうようになると思われるため、単純な法律相談については弁護士の出番はなくなるだろう。そのため、AIでは回答ができないような分野や内容について対応できるよう、研鑽を積む必要がある。
・この流れは止められないので、弁護士業務がAIに取って代わられないよう経験や知識だけでなく、人間しかできない能力(クライアントの真意を読み解く、法的だけでなく全体にバランスの良い解決策は何かを考える力等)を磨くべきである。
【業務効率化につながる】
・弁護士が作成する書面の計算違い(誤字チェックではなく)や判例や省令との抵触を指摘してくれる機能ができないかということに興味はある。
・過去の類似裁判例調査など、どうしても時間がかかってしまう作業の時間短縮につながれば良いと思うものの、そうすると更なる競争になってしまうことが懸念。
・将来的に弁護士による調査方法として用いられるようになると予測できるが、一般人には真偽が判断できないため、利用は困難と思われる。
・おそらく大抵の弁護士の作業はなくなると思っています。契約書も作れるので。
・判例や裁判例の調査、普段は使わない法律や規則などの調査にAIを活用できると便利ではないかと考えています。文書作成もAIを活用できないかと期待しています。
・必ずしも回答の正確性が保証されない以上、法的判断を丸投げすることは当然ながら出来ない。したがって、あくまで弁護士のサポートとして活用する方向になるのではないか。 また、使用するサービスによっては、入力した情報がそのAIの学習に再利用されるなどして、情報漏洩につながるおそれがある。このような懸念が払拭できないと、多くの弁護士にとっては業務では使用しにくいと思う。 一方で、定型的な文書作成、契約書の審査、音声認識による反訳の作成など、定型的な業務や法的判断の介在しない作業については、現時点でも相当活用の余地があるように思われるので、上記のような懸念点を排除できるサービスが待たれる。 実際上、これらを活用した方が生産性が上がることは間違いなく、活用範囲については幅があると思うが、弁護士の業務にAIを活用する方向性は止まらないのではないか。
・契約書などの作成補助はもとより、一般的にも、文章を磨いたり、大部な文章を要約させたり、ブレインストーミングをする上で、非常に有用なツールとして定着すると思われる。また、プログラムコードの作成も補助してくれるので、PCの活用が大きく広がっていく反面、使わないと完全に取り残されていく可能性があると思う。
・法的見解よりも、事務負担の軽減に期待している。
【予防法務につながる】
・AI法律相談が一般市民の方の予防法務に繋がればいいなと思っています。当事者間での大きな感情的対立、費用や時間のコストを訴訟等でかける前に、ある意味、中立的なAIが、訴訟などの見通しを公平に示すことで、紛争の早期解決に繋がればいいなと思っています。やはり、訴訟のコストは高いと思いますし、時間もかかり過ぎていると感じますし、裁判官によって判断が違うように感じますので、裁判結果をある程度納得できる形で先取りできることは、余計な紛争や紛争解決のためのコストを生まないという意味で、異議があるように思います。もちろん、そのときに、我々弁護士が、どうあるべきなのか、弁護士へのニーズが、どのようなものになっているのか、そもそも、弁護士という仕事が残るのか、といった別の問題は残りますが。
【コスト削減になる】
・期待しかないです。コピーロボットに仕事をやらせて後は寝てるだけののび太~♪もちろん今でもお金があればイソ弁や事務員を使ってそういうことは可能でしょうが、コストが大いにかかります。省コスト化に繋がります。ただし、そうすると弁護士自体要らないじゃん、となるとは思いますけど、そのときはそのときですよ。
・AIを活用することにより事務員なしで(あるいは従来よりも事務員数を減らして)業務ができるようになることを期待している。
【トラブル多発に懸念】
・AIによる間違った回答を一般人が信じてしまい、トラブルが多発する可能性が懸念される。
・AIで誤った法律情報(×知識)を得る人が増えることによって,かえって紛争(と相談)が増えそう
【弁護士の仕事がなくなる懸念】
・正直、失業が心配。
・業務効率化、労働時間の削減に寄与する半面、間もなく証拠をAIが解析できるようになれば,その結果、法律家でなくてもAIによって良質な法律文書の作成が可能になり、本人訴訟の割合が増え、弁護士の受任事件が大きく減ることを懸念している。