4月16日に行われたWEC世界耐久選手権第2戦ポルティマオ6時間レースで総合3位を獲得したポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの6号車ポルシェ963。そのドライバーを務めるケビン・エストーレは、今季からハイパーカークラスに参入した同チームにとって「正しい方向への第一歩」であったと評している。
エストーレとローレンス・ファントール、アンドレ・ロッテラーのトリオでデビュー2戦目のレースに挑んだ6号車は、同じLMDh規定のキャデラックVシリーズ.Rを抑え、トヨタGR010ハイブリッド、フェラーリ499Pに次ぐ3位でフィニッシュを果たした。
ポルシェ963は3月の開幕戦セブリング1000マイルレースを5位と6位で終えており、WECでの表彰台獲得はこれが初となった。
エストーレはこの結果に喜びを示しはしたものの、レース序盤にトヨタとフェラーリのトラブルがあったことを指摘している。
トヨタ7号車はトルクセンサーの故障でドライブシャフトを交換する必要があり7周を失い、フェラーリ51号車はレースの大部分でブレーキトラブルに悩まされるなど、さまざまな問題が発生していた。
「この結果には満足している」とエストーレは語った。
「セブリングのときと比べれば、確実に前進している。ただし、トヨタにトラブルがなければ3位にはなれなかっただろうし、フェラーリについてもおそらく同じことが言える」
「しかし、僕らはここ(3位)にいる。僕らはほとんどミスを犯さなかった。それがここにいる理由だ。正しい方向への第一歩を踏み出したんだ」
ポルシェがトヨタやフェラーリに匹敵するレースペースを得るためには、まだやるべきことがあるとしながらも、ポルティマオで同じLMDhメーカーのキャデラックを倒したことはチームにとって明るい結果だと、エストーレは感じている。
「セブリングでは、両チャンピオンシップ(WECとIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権)のために非常にハードな週末を過ごした」
「あの後、僕らはとてもよく働いたと思う。エンジニアたちは、懸命に改良に取り組んでくれた」
「僕らは間違いなくいくつかのステップを踏むことができたし、それは良い雰囲気にもつながった」
「とはいえ、僕らのペースはまだ望んでいたものではなく、トヨタははるかに速く、フェラーリもはるかに速いということを現実的に考える必要がある」
「しかし、ペースでも戦略でも、この週末はキャデラックに勝った。これは僕らにとって大きな達成であることは間違いないし、誇りに思えるものだ」
「なぜなら、セブリングでは(キャデラックに)かなり離されていたからね。だから、この週末に得た収穫は確実に大きなものだ」
■ラスト15分の燃料補給は「ギャンブルだった」
ポルシェのファクトリーLMDhディレクターのウルス・クラトルもエストーレの発言に同調し、ポルシェは2台のマシンに問題を抱えながらもポルティマオで「大きなステップ」を踏んだと述べている。
「1台はパワーステアリングの問題、もう1台は燃料システムの問題があったため、今日のレースは簡単なものではなかった」とクラトレは振り返る。
2台のマシンでタイヤを使い分けた結果、デイン・キャメロン/フレデリック・マコウィッキ/ミカエル・クリステンセンの姉妹車に比べ、6号車はペース的に優位に立つことができたと、クラトレは語っている。
しかし、レース終盤、3位を目指すロッテラーの走りは困難なものとなった。前述の燃料センサーの問題があり、残り15分ほどのところで燃料補給のためのピットインをする必要が生じたためだ。
クラトレは、この問題の根本的な原因を特定するためにはさらなる分析が必要だとしながらも、レース後半に問題を解決したチームを賞賛した。
「これは、ストラテジー(戦略)部門がどれほど成長したかを示している」とクラトレ。
「正直なところ、燃料タンクの中身がどうなっているのか、ほとんど情報がなかったからだ。(4番手の)キャデラックが追い上げてきているのは明らかだったので、あれはギャンブルだった」
「我々は適切な決定を下し、それは本当にうまく管理された。 それがカギだった」
「簡単な状況ではなかったが、このレースでキャデラックをコントロールすることができ、同じレースウイークエンドで(IMSAのロングビーチ戦に続く)2度目の表彰台を獲得することができた」
「とにかく、良いことだ。 我々の“船”はスピードを上げた。いま、速さを増しているところなのだ」