2023年04月12日 16:01 弁護士ドットコム
元ジャニーズJr.の岡本カウアンさんが、ジャニーズ事務所の創業者、故ジャニー喜多川さんから性被害を受けたと告白した4月12日の記者会見では、ジャニーさんの一連の問題を報じない国内のテレビや新聞など大手メディアの問題もまたクローズアップされた。
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岡本さんは会見場所として、日本外国特派員協会(東京・丸の内)を選んだ背景として「(日本の大手メディアは)取り上げないだろうと覚悟して話しています」と述べた。
そんな中で取材に訪れたNHK報道局のディレクターが「もし大手(メディア)が報じていたら、ジャニーズ事務所に入所していなかったか?」などと問いかける場面があった。
岡本さんは「たぶんなかったんじゃないかな」と回答した。沈黙していた大手メディアに何か変化はあるのか。
この日の会見で、岡本さんは中学3年生(15歳)だった2012年から2016年までジュニアとして活動したと説明。岡本さんによると、入所翌月にジャニー氏から、初めて性的行為をされて、退所まで計15~20回あったという。
ジャニーさんによるジュニアへの性加害をめぐっては、1999年に『週刊文春』が大きく報じた。ジャニーズ事務所と文春が裁判で争い、東京高裁がその重要な部分で真実であることの証明があったと認めている。
ところが、そうした裁判の情報だけでなく、ジャニーさんの行為に関する「噂」もまた、岡本さんは入所前に「知らなかった」という。
ジャニーさんの性加害の文春報道を大手メディアは追いかけることはなく、沈黙した。しかし、英公共放送BBCが今年、ドキュメンタリーを世界に配信して大きな話題となっている。
岡本さんが週刊文春から取材を受けた最近の記事もすでに公開されていたが、岡本さんは「日本のメディアは残念ながら極めて報じにくい状況にある。BBCのように、報じてくれるかもと思い、ここで会見をすることにしました」と話した。
一方、記者会見の会場には、10台以上のビデオカメラが並び、民放キー局のカメラもみられた。
また、共同通信が記者会見の様子を速報した記事がヤフーニュースのアクセスランキングで1位になったほか、その配信を受けた地方紙がネット記事にするなど、元ジュニアが顔出しで被害を告白することへの注目の高さがみられた。
会見で象徴的だったのは、質問に立ったNHKのディレクターが「私もテレビメディア、とりわけ公共放送に勤める者の一人として大変重く受けとめています」と語りかけたシーンだろう。
岡本さんは、大手メディアが沈黙していたからこそ、何も知らず、被害を受けていた可能性はなかったか。報道していれば、事態は変わっていたのか——。この点、NHKの報道局ディレクターが言及した。
「カウアンさんは1996年生まれですかね。私も同世代になるんですが、当時入所された15歳ころのことを思い返すと、たしかに『文春』で追っていらっしゃったけど、子どもたちの世代にはまったく届くような状況ではなかったと思います。
おうかがいしたいのは、カウアンさんは、知らずに入所したということですが、もし当時大手メディアが報じていたら、ご自身の選択は変わったと思いますか? たとえば、ジャニーズに入所すること自体ためらったとか。また、おうちのかたは今回の件をどのように受けとめているのでしょうか」
この質問を受けて、岡本さんは大手メディアが報じていたら、入所しなかったのではないかと答えた。
「そのときにならないとわからないんですけど、もしテレビが当時取り上げていたら大問題になるはずなので、たぶん親も行かせないと思いますし、15歳で未成年なので、僕の判断だけではできないですし。たぶんなかったんじゃないかなと思います」(岡本さん)
なお、家族に被害を打ち明けたのは、退所して3年ほどたってからのことだという。在籍中、息子の入所後に、ジャニーさんの「噂」を知った家族から、被害を受けていないか心配されたこともあったが、そのときは「否定していた。ないと言っていた」という。
岡本さんは、今回の会見を日本の大手メディアが取り上げないだろうと「覚悟している」と述べた。大手メディアはどのような形でこの「覚悟」を受けとめるのだろうか。