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ゴミ捨て場から参考書や本を持ち去り、法的問題は? 「怖くて捨てられない」の声も

2023年04月09日 08:21  弁護士ドットコム

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今春、子どもの中学受験を終えた都内在住の女性(40代)だが、なかなか処分することができずにいる。その理由は、ゴミ捨て場からの持ち去りを案じてのことだという。


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「資源ゴミの日に、住宅街のゴミ捨て場から本や雑誌を持ち去る軽トラが現れるんです。塾のテキストや過去問は状態のよいものはメルカリや知人にあげますが、書き込みが多いものなどは個人情報は消してゴミとして出します。名前を消したとはいえ、どこかで売られたりするのかと思うと、気分はよくないし、怖いですよね」(女性の話)



Twitterなどでも、同様の訴えをするアカウントは多数ある。ごみ収集場から持ち去ったり、それを転売したりする行為は法的な問題があるのだろうか。池田誠弁護士に聞いた。



●資源ゴミの持ち去り、法的問題は?

——ゴミの持ち去りについて、法令はどのように定めているのでしょうか



資源ゴミの持ち去りについては、今回の相談者だけでなく、自治体や国においても頭を悩ませているようです。



当方で確認したところ、環境省環境再生・資源循環局にて自治体向けの調査が実施されており、直近では令和5(2023)年3月に調査結果(令和4年度)が報告されています。



全国1741市区町村に対する調査の結果、令和4年9月時点において、411市区町村(全体の23.6%)において資源ゴミの持ち去りに関する何らかの条例を制定済みであり、233市区町村(条例制定済の市区町村のうち56.7%)で罰金・科料等の罰則規定を定めているようです。



今回の相談例でも、お住まいの市区町村が資源ゴミの持ち去りについて条例で禁止し、かつ罰則を定めているのであれば、条例違反に基づく処罰等が実施される余地があります。



——条例等で規制されていない地域もあるのでしょうか?



はい、上記統計でも、約76%の市区町村が、現状では資源ゴミの持ち去りについて条例を定めていないことになります。



その場合、資源ゴミが誰かの所有物と整理できるか否かによって、資源ゴミの持ち去りに対する窃盗罪の成否が分かれます。



私が弁護人側として経験した例では、マンションが定めた共同の集積所に資源ゴミを排出していた例で、マンションの管理組合にその所有権が移転すると考えられ、同管理組合との関係で窃盗罪が成立しました。



マンションの管理組合だけでなく、自治会等が資源ゴミをまとめて管理しているような例でも同様の整理をすることができそうです。



——自宅の玄関先や特定の管理者がいない共同のゴミ捨て場に資源ゴミを排出しておくような例では、どう考えられますか?



自宅の玄関先に排出した場合には、回収業者が来るまで、ゴミを排出した元の持ち主に所有権が留保されているとして、持ち主との関係で窃盗罪が成立する余地があります。



一方、地方自治体等が定めた共同のゴミ捨て場に排出するような場合にはもう少し問題が複雑です。



たとえば、前出のような条例こそ定めていないものの、別の条例で資源ゴミを地方自治体の所有物だと整理している自治体もあるようです。その場合にはその地方自治体との関係で窃盗罪が成立する余地があります。



もっとも、そのような条例等がない場合に、地方自治体との関係で資源ゴミの持ち去りを窃盗罪として整理できるかは疑問があります。



なお、前出のような、マンションが定めた共同の集積所に排出した事例では、その集積所の構造にもよりますが、持ち去り者が当該集積所に侵入すること自体が建造物侵入罪を構成する余地もあります。



お住まいの地域や排出場所によって適用される法令が異なるので、持ち去りが過去に確認されて不安があるようでしたら、警察や地方自治体に相談されるのが適切かと思います。




【取材協力弁護士】
池田 誠(いけだ・まこと)弁護士
証券会社、商品先物業者、銀行などが扱う先進的な投資商品による被害救済を含む消費者被害救済や企業や個人間の債権回収分野に注力している下町の弁護士です。債権回収特設ページURL(https://nippori-law-saikenkanri.com/)
事務所名:にっぽり総合法律事務所
事務所URL:https://nippori-law.com/