今から20年前の2003年。遊技機メーカーのサミーから、1台のパチスロ機がリリースされた。その名もパチスロ『北斗の拳』。原作漫画の面白さは言わずもがな。この機種は80年代に人気だったアニメ版キャストを可能な限り起用し、当時の液晶で表現できる限界まで美麗な映像とパチスロとしての面白さを融合させたマシンであった。
総出荷台数は60万を超えており、パチスロ史上最大のヒット作と言われている。以降、サミーは定期的に『北斗の拳』タイアップ機種を乱発していくこととなり、その中にはパチスロユーザーからすぐに飽きられてしまうような駄作も多数混じる事態となっていく。
そうこうしているうちに、初代北斗を打っていた世代も家庭を持ったり、仕事で役職に就いたりして自然とパチンコホールから離れていったわけである。ところが今月、その初代北斗のゲーム性を現在のクオリティで再現した機種、『スマスロ北斗の拳』がホールデビューし、近年稀に見るくらい話題になっている。(文:松本ミゾレ)
一体どこから湧いて出た?
実は今回、スマスロ版北斗については実際に打ってみて、その感想を初代を打っていたおっさんの立場からレポートしたいと思っていた。今の時代、全国各地のパチンコホールは基本的には稼働率が昔ほど高くないので、そのうち狙っている台を確保することぐらいできるのである。少なくともここ10年ぐらいは、そういう風潮がなんとなく浸透していた。
だから今回も、せいぜい数時間ほど待てば空くんだろうと思っていたんだけど、今回は違った。4月3日にホールデビューして以降、全国的にも相当久しぶりのバカみたいな稼働状態になっている。
今の時代、新台が導入されても翌日には空きが出るのが珍しくないものなのに、たった数日だけの話とはいえ、ここまでの熱量というのはかなり稀。業界でも驚いている人多数といった塩梅なのである。
僕みたいないちユーザーですら「こんなに人気なの?」と絶句するほど稼働が高い。稼働が高いってことは、それだけ長い時間動いているということなんだけど、打っている人たちを見てみると、初代を知らないであろう若い世代もかなり多い。
初代を打ったことがない人たちも、一応話題だから設定にも期待できると思って座ったんだろうけど、履歴を見ても、スランプグラフは決してそんなに飛び抜けてるわけでもない。なのに、なぜかやめない。席を立たない。ずっと打っている。恐らくなにか、やめられない設定関連の示唆のようなものが出ているのだろう。あるいは単純に20年前のシンプルな、煽りの少ないゲーム性がウケたか。
なんというか、2000年代半ばぐらいまでは力の入ったホールのイベント日なんかで見た光景を、久々に目にしたというのが正直な感想である。
にしても、普段ガラガラなホールなんかも回ってみたが、どこも北斗は満席状態。僕の住んでいる地域は、新台はしばらく設定を入れないホールが多いんだけど、そういうこともお構いなしといった塩梅に見受けられた。
そして若者に混じって、恐らく久々にパチンコホールに出向いて、メダルレスになったスマスロに戸惑っているおじさん世代も見ることができた。こういう人がいるってことは、初代北斗の復活を謳う本機の登場をどこかで知って、懐かしく思えて勝負にやってきたということになる。
とっくにホールからいなくなったおっさんたちをまた呼び寄せるということで、これまでサミーが散々出しまくってきたその他の北斗とは全然違った気合を感じた。
最近好調のサミー
ところで最近のサミーときたら、リリースするパチンコはどれもこれも面白くないと不評を買うものばかりであるが、対してパチスロは高評価のものもチラホラ。『ペルソナ5』だの『鋼鉄城のカバネリ』だのゲーム、アニメタイアップ物ばっかり目立つが、それぞれにしっかり固定ファンがついている。
特に『鋼鉄城のカバネリ』は昨年のデビュー以来、未だに人気で繁忙店ではよく動いている印象。僕もことのほかお気に入りで、5万入れても5万勝つ、みたいな勝負ができちゃうところに人気の理由を感じる。
正直、4月時点でコイツのおかげで恐らくもう2023年はマイナスに転落することは、相当難しいのでは? と感じるレベルで勝てている。ありがとう、サミー。ありがとう、カバネリ。
一方で北斗だが、初代時点で一撃万枚なんかも出る事はあったが、基本的にはアレは高設定を掴んで、刻んで増やす台だった。今回のスマスロ北斗も当然、高設定ほど初当たり頻度は高くなっているので、そのような出玉の増やし方になるんだろう。ホールとしても苦労して購入した北斗なので大事に運用したいだろうから、しばらくは設定状況もよろしいのかもしれない。
その上、初代北斗は確か天井が1999Gだったが、今回は1200G台に短縮されているし、朝一リセットされていれば800Gが天井になるのだとか。これはお財布に優しいね! しかも初代と違い、最大天井到達時はバトルボーナス継続率に下駄を履かせてもらえるらしいので、天井からの逆転という夢を見ることもできる。
『カバネリ』のように長期的に動く機種になれば設定配分に期待してやってくるユーザーも増えるので、ホールも客もお互いに得をすることになりやすい。
これまで散々、サミーが出した北斗の後続機種がリリース直後から総スカンされているのを知っているだけに、今回の反応には今までと異なった引きを感じる。初代のように総出荷60万以上ってのは無理でも、10万、20万とかに繋がるような気がするぞ……。まあ、まだ1Gたりとも打ってない自分が言うのはあれですが……。