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【漫画】厳格な父の形見が“萌え系VTuberのアカウント”だったら……SNSで話題の創作漫画が笑えて泣ける

2023年04月07日 08:11  リアルサウンド

リアルサウンド

漫画『父の形見が萌えVチューバ―のアカウントだった話』より

 多くのエンターテイメントがスマートフォン一台で楽しめる時代。可処分時間を取り合うなかで、動画やウェブメディアの記事も、音楽や漫画も「タイトル」で目を惹くことの重要性が高まっている。そんななか、『父の形見が萌えVチューバ―のアカウントだった話』という気になるタイトルのオリジナル漫画がTwitter上で公開され、注目を集めた。原作者・御城夏さん、作画担当・綿和わたさん(@8watawata)のタッグによる、笑えて泣ける物語だ。


(参考:漫画『父の形見が萌えVチューバ―のアカウントだった話』を読む


 雄吾は病を患った父親から、チャンネル登録者70万人を超える美少女Vtuber“満豊恋慕”の中の人だったことを聞かされ、自分の死後にアカウントを引き継いでほしいと提案される。渋々ではあるが許諾した雄吾は、その日から恋慕になるためのスパルタ指導を受けることに。徐々にコツを掴み楽しさを感じるようになっていく雄吾だが、父親の容体は悪化していきーー。


 4月上旬現在9000いいねを数え、大きな注目を集めた本作は、「ヤングマガジン」の月例賞受賞作でもある。そんな話題作を生み出した2人に話を聞いた。(望月悠木)


■2人で制作を始めた理由


――2人はどのように漫画制作を行っていますか?


綿和:御城が話作りと簡単なネーム作成、私がしっかりとしたネームと作画を行っていますペースは作品によりますが、本作はネタ出しとネームに1週間、作画に2週間ほどかかりました。


――そもそも、2人はなぜ「一緒に漫画制作をやろう」と思ったのですか?


御城:もともとは創作活動をしている人が交流するコミュニティに私も綿和も属していましたが、知り合った当時はお互い1人で漫画を描いていました。2022年春ごろに2人で漫画について話していると、御城は作画をするのが苦手、綿和は話作りが苦手と、お互いがお互いの苦手部分を担える関係にあると気づき、手を組みました。


――なぜ『父の形見が萌えVチューバ―のアカウントだった話』を制作しようと思ったのですか?


御城:2022年秋、編集部に漫画を持ち込むために制作した読切作品です。おかげさまでヤングマガジン月例賞を受賞できました。着想ですが、まずはパワーのある導入が必要になると考えました。“続きが気になる”というヒキで戦う連載漫画とは違い、「1話完結である読切は出会い頭で面白さを提示しないと読者が最後までつきてきてもらえない」と思いました。言うならば、「内容が気になる動画のタイトルとサムネイルを作ろう!」と同じ感覚です。


――確かにタイトルだけで見たくなりますね。


御城:はい。その結果『父の形見が萌えVチューバ―のアカウントだった話』が誕生しました。もともとは持ち込み用で作っていた話なのですが、そういう冒頭に掴む意識をしていたお陰で、「タイトルと序盤4ページがタイムラインに流れるTwitterで上手くハマったのかな」と思います。


――本作を制作するために、実際にVTuberの動画は参考にしましたか?


御城:何件か参考にしました。ただ、参考というより部分部分で間違いがないか再確認するために見ました。ただ、1番参考にしたチャンネルは、VTuberさんではなくお笑い芸人のジャルジャルさんです。


――芸人さんのYouTubeチャンネルなのですね。


御城:先程のサムネとタイトルを意識した話に繋がるのですが、ジャルジャルさんはYouTubeにほぼ毎日動画を投稿しており、そのスタイルをかなり参考にしています。例えば、『リモート面接でたぶん寝転んでる奴』という動画があるのですが、「リモート面接なのになんで寝転ぶ?」と興味を湧かせ、実際にどのような感じなのか見たくなります。興味を沸かせるために“気になる人物”と”気になるシチュエーション”を掛け合わせることの重要性を学びました。ジャンルは違えど1話完結の読切では、かなり使えるネタの作り方だと思います。ただ出オチで終わらないよう、内容も上手に転がす必要もありますが……。


――序盤はギャグが多く、後半はシリアスに比重が置かれており、最後まで読みたくなる展開でしたね。


御城:ギャグとシリアスのバランス自体はそこまで深く意識はしませんでした。個人的には「もっと序盤の設定を活かした展開を盛れたら良かったな」と思います。どうしても出オチの設定ですので、シリアス頼りになってしまった側面もあります。


■光と影の使い分け


――キャラデザはどのように描き上げましたか?


綿和:父親は御城から“厳しい父親のイメージ”と聞いていたので、可愛いVTuberとの対比で厳格そうな父親をデザインしました。恋慕は“抱擁妹系Vtuber”ですので、抱擁したくなるような、もこもこをたくさん纏わせてセーター生地にしました。妹系の可愛さも出したかったのでリボンも多いです。息子の雄吾はなかなかイメージが定まらず、ネームまでデザインがありませんでした。作画していくうちにデザインが決まって助かったことを覚えています(笑)。


――ギャグのシーンとシリアスのシーンを描き分ける際に意識していることを教えてください。


綿和:今回はギャグとシリアスの差が激しいので気をつけました。コマ割りと構図は私が行なっているのですが、御城からギャグのテンポに対してのディレクションもあったので、そこも意識しています。


――父親が倒れていたシーンや恋慕のライブシーンなど、光と影の使い方がとても秀逸でした。光と影を使用する際のこだわりは?


綿和:今回は光と影にこだわったので、そう言ってもらえるのはとても嬉しいです。「光と影は使い方によって場面とイメージをかなり左右する」と考えているので、そのシーンによって「際立たせたい物をどうわかりやすく伝えるか」を軸に置いています。本作の場合、父親が倒れるシーンは雄吾の驚きと今からギャグからシリアスに切り替わる暗示感を、ライブシーンは臨場感や恋慕と雄吾が父親の意思を引き継いで前を向いていく希望感を演出しようと意識しています。


――今後の目標など最後に教えてください!


御城:各編集部で連載ができるよう絶賛奮闘中です。


綿和:今後もTwitterに漫画作品を投稿していく予定なので是非ともTwitterをフォローしていただければと思います。


(望月悠木)