2023年04月05日 19:01 弁護士ドットコム
裁判官と検察官の人事交流によって、「裁判の公正」が妨げられているとして、有志の弁護士や弁護士団体が4月5日、こうした人事交流を廃止するようもとめる申入書を最高裁長官と法務大臣あてに提出した。
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申入書などによると、かつて国側の代理人(訟務検事)として「原発差し止め訴訟」に関わった裁判官が2022年9月16日付で、原発差し止め訴訟を担当する部総括(裁判長)に転任するという人事があった。
原告側の弁護団が気づいて、裁判所に対して、(1)回避勧告と(2)忌避申し立てを予告したところ、事件は今年1月20日、別の部に移ったという。申入書は、こうした事態の背景に、裁判官と検察官の人事交流、いわゆる「判検交流」があると指摘している。
これまでも判検交流は、裁判所の独立・公正の観点から問題を指摘されており、刑事訴訟の分野についてはすでに廃止されている。しかし、国を被告とする行政訴訟の分野では今もつづいている。
昨年も、東京地裁の行政訴訟専門部の部総括裁判官を法務省訟務局長(訟務検事が所属する部門のトップ)に出向させる人事があり、そのときも有志の弁護士が最高裁長官と法務大臣に抗議の申し入れをおこなっていた。
今回の申入書には、呼びかけ人を含めて、弁護士217人、年金・生活保護訴訟や難民訴訟の弁護団15団体、弁護士団体7団体が名を連ねており、行政訴訟の分野に関わる弁護士にとっては、きわめて重要な問題と認識されている。
申入書の提出後、都内で記者会見を開いた海渡雄一弁護士は「簡単にいえば、法務省内に行政訴訟に関われる検事がいないから、裁判所の手を借りている。もっとたくさんの人を採用して、きちんと人材を育成すべきだ」と述べた。
(1)民事訴訟法では、裁判の公平を妨げるおそれがある場合、当事者は、裁判官がその事件に関与することを排除したいと申し入れる「忌避」ができるとされている。
(2)民事訴訟規則では、忌避すべき事情がある場合、裁判官が裁判所の許可を得て、裁判を「回避」することができると定められている。