2023年04月05日 07:21 リアルサウンド
よく見かける設定でも、クリエイターのアイデア一つで予想を上回る面白さの作品が誕生する。Twitter上で公開された創作漫画『安目民男は眠れない!!』の冒頭は、主人公の安目民男が“寝ていないアピール”をする、という大学の食堂で見かけそうなシーンだ。しかし、本当に半年間一睡もできておらず、安眠を求めてなぜか地下格闘技に参加しているという(!?)ーー。
(参考:漫画『安目民男は眠れない!!』を読む)
作者の加太 潤一さん(@ZyZtn)は、現在3つのアシスタントを掛け持ちしながら日々制作に打ち込んでいるという若手漫画家だ。登場人物の掛け合いが心地よく、クセになる魅力のある本作を描いた経緯など話を聞いた。(望月悠木)
■キッカケはあの名作映画
――『安目民男は眠れない!!』制作のキッカケは?
加太:『ファイトクラブ』という映画を観て、「自分が同じテーマで作品にするとしたら……」という発想から描き始めました。この時期は半年練った連載企画が会議に落ち、いろいろ試してたのですが、小学館さんの『マンガイチ』という月例賞の存在を知りました。マンガイチはハッシュタグをつけてTwitterに投稿するだけで、読者や編集さんからリアクションもらえるという企画で「いい機会だ」と思って制作を始めました。
――安目民男はインパクトあるキャラでしたね。
加太:特に今回はモデルはおらず、はちゃめちゃな展開なので「逆にローテンションで全て受け入れていく男のほうが面白いかな」と思い作りました。
――地下異種格闘技場で対戦した屈強な宇宙人には参考などありましたか?
加太:宇宙人のキャラデザは参考にしたものがありすぎてよく覚えていません。好きな要素を沢山盛り込めたので良かったです。
――漫才のように掛け合いで進んでおり、終始テンポ良く楽しめました。両者のセリフのバランスはどのようなに意識しましたか?
加太:セリフのバランスよりはボケの中に設定や説明を忍ばせるなど、ストーリーを停滞させないように工夫はしています。1ページごとに絵が変わるように意識していたので「テンポが良い」と言ってもらえるのは嬉しいです。
――セリフで言うと「眼球と歯茎が渇くような笑顔信用すんな!」「もう魂のレベル上がっちゃってるじゃん」など、ツッコミのフレーズもキレッキレでした。ツッコミのフレーズを決める際の判断基準はありますか?
加太:何でもない言葉を使わないようにしています。以前「世界を滅ぼそうと思う」というセリフを編集さんからボツをくらった際に「世界が平和になればいいと思う」に変えた経験があり、それから一度作ったセリフをもう一度考え直す工程を入れています。
――セリフの参考にしている芸人さんはいますか?
加太:漫才よりもコントからフレーズをもらうことが多いです。バナナマンさんが好きで常に見ているので影響を受けているかもしれません。
――ラストはいきなり30年後になる急展開で、アメリカ大陸でシャトルランをする様子が『フォレストガンプ』の後半みたいで笑いました。
加太:もともとあの展開は入れていなかったのですが、もう一段オチがほしくなって4ページほど足しました。結果的にきちんと着地できたので良かったです。走っているシーンのオマージュは『フォレストガンプ』が大好きなので入れてしまいました。
――最後に野心などあれば教えてください!
加太:商業連載作を作りつつ個人の活動も頑張っていきたいです!
(望月悠木)