タワマンには、都会的でスマートな人たちが暮らしている……というのは幻想に過ぎない。妻と2人で都内のタワーマンションに住む30代男性(世帯年収1000万円程度)にとっては、隣人が「大外れだった」。その隣人は3LDKに、なんと8人ぐらしで「メチャクチャうるさい」のだという。(取材・文:昼間たかし)
もともと住んでいた物静かな老夫婦が出ていったと思ったら……
男性夫婦は、2018年にタワマンの中層階を購入した。専有面積は70平方メートル程度の3LDK。今後の出産や育児も見据えての買い物だった。場所も吟味し、子育てなど将来を考えて選んだ物件だが、男性はいま真剣に売却を考えている。理由は、迷惑な隣人の存在だ。
「隣家は賃貸に出しているそうで、引越当初は物静かな老夫婦が住んでいたんですが、2019年の終わり頃に引っ越していきました。その直後に、新しい家族が引っ越して来たのには気づいていたんですが……」
特に引越の挨拶もないまま「引っ越してきたんだな」と思っていた男性だが、すぐに隣家の住人がトンデモなく「うるさい」ことに気づいた。というのも……
「風通しのいい立地なので春や秋はベランダのドアを開けていると、とても気持ちがいいんです。ところが、その日はベランダのほうからメチャクチャうるさい子供たちの声が聞こえてきたんです」
それは、最初は子供が騒がしいのは当たり前と思っていた男性だが、次第に耐えきれなくなった。なにしろ子供たちの騒がしい声は、毎晩11時頃まで聞こえるのだ。
「管理会社を通じて苦情をいってもらったら、数日間は静かになりましたが、すぐに元に戻ってしまいました。隣家がベランダのドアを閉めれば騒音は減るのに、なぜか我が家と同じタイミングで開けっぱなしにしがちなんです」
隣家は騒がしいのだろうと思っていた男性が、理由を知ったのはしばらく後だった。
「ちょうど休日に夫婦で出かけるタイミングで、隣家からも人が出てきたんです。それも、ぞろぞろと……夫婦2人に加え、子供が中学生くらいの男子を筆頭に男女6人ですよ」
隣の部屋は同じ3LDKで、広さもほぼ同じか少し狭いぐらいのはず。そこに親子合わせて8人暮らしとは。
「夫のほうはスキンヘッドでいかつい感じ。奥さんのほうは金髪に染めているけど、着ているものは高級品な感じです。あれだけうるさいのだからオラオラ系かと思いきや夫婦で<いつも騒がしくてすみません>と愛想よくいってくるんです」
愛想よく下手に出てくるうえ、見た目がちょっと怖い。そのため男性は「うるさい」と直接、文句を言えなかったそうだ。さらに、しばらく経つと騒音以外の問題も出てきた。
「我が家は一番奥の角部屋なので、隣家の前の廊下を通ってエレベーターに乗るつくりです。その隣家の前のところに次第に子供用自転車とかが放置されるようになったんです」
共用部廊下に子供用自転車を置くのは本来禁止のはずだが、子育て世代が多いためか、このタワマンでは黙認されている。ただし、通行の邪魔になるとすれば話は別だ。子供が多い隣家は自転車も3台あり、実際に家の前を通りにくくなってしまっているという。
「これまた母親に会うと『子供が迷惑な置き方をしてすみません』と下手にいってくるんです。親が見つけたら邪魔にならないように直してくれているみたいですが……そもそも、3台も置いているのが邪魔だと気づいてほしいですよ」
そんな中、2020年以降、男性は妻と共に新たな恐怖を味わうことになった。
「どういう思想か知りませんが、隣家は全員がノーマスクだったんです。私たち以外にもマンション住人からはヤバイ一家と思われているはずなんですが、どこ吹く風で愛想よく挨拶してきます。とんでもない鉄の心臓の持ち主ですよね」
ちなみに、賃貸なのでいつかは出ていくはず……と思っていたが、その気配はまったくなし。
「たまたまエレベーターで一緒になった時なんかに、情報を聞き出そうと少しばかり話して探ってみたら、どうやら隣家はどちらかの親の持ち物のようなんです。つまり、今後出ていく可能性も低そうです」
しかも、今後も隣家によって治安が悪化しそうな片鱗はあるという。
「ここ一年ばかりの間に、一番上の中学生が次第に悪くなっている感じがします。マンションのエントランスで、イキってる雰囲気の友達とたむろしていたりしますし。きっとほかの兄弟も同じようになるんじゃないでしょうか。となると、うちの子供への影響が心配です」
いま妻は妊娠6ヶ月。子育て環境を優先したはずのタワマン購入なのに、まさかの落とし穴。男性は真剣に引っ越しを考えているそうだ。