Text by CINRA編集部
映画『バカ塗りの娘』が今秋に公開される。
青森の伝統工芸・津軽塗=通称「バカ塗り」をテーマにした同作は第1回『暮らしの小説大賞』を受賞した高森美由紀の小説『ジャパン・ディグニティ』の映画化作品。何をやってもうまくいかず、自分に自信が持てない美也子が、寡黙な津軽塗職人の父・清史郎との暮らしのなかで幼いころから触れていた津軽塗に改めて向き合い、次第に自分の進む道を見つけていくというあらすじだ。監督は鶴岡慧子。全編が青森・弘前市で撮影された。
タイトルにある「バカ塗り」は、完成までに四十八工程あり、「バカに塗って、バカに手間暇かけて、バカに丈夫」と言われるほど、「塗っては研ぐ」を繰り返す津軽塗のことを指す言葉だという。
主人公の美也子役を演じるのは、NHK連続テレビ小説『わろてんか』で注目を集めた堀田真由。美也子の父親で津軽塗の職人・清史郎役に小林薫がキャスティングされた。そのほか、青森出身の木野花、鈴木正幸、ジョナゴールド、王林も出演。
今回の発表に合わせて場面写真が公開。清史郎が漆塗りに向き合う様子と、その姿を横から見つめる美也子の姿が写し出されている。
【堀田真由のコメント】
青木美也子役を演じさせていただきました。
初めて感じる気温や、湿度、匂いを全身で感じながら青森県弘前市で撮影させていただきました。
実際に職人さんに漆の使い方を伝授していただいたり、津軽弁を話したりと
新たな挑戦にドキドキしながらもゆったりと流れる時間に身を委ねながら取り組む日々は、贅沢で忘れられないものとなりました。
最新な物が次から次へと産まれ
機械化・自動化が主流になってきた今改めて、日本の美しい伝統工芸に触れ何を感じ受け取るか、そして伝授していくことの厳しさとどう向き合っていくのか
津軽塗りを通して繋がる家族の物語から何か感じ取っていただけると幸いです。
【小林薫のコメント】
津軽弁が難しかった
何度やっても出来ない発音なんかがあって、現場でも何十回とチェックをうけて苦労しました
それが、映画を観たらセリフの量がそうでもない、こっちは七転八倒しながら、セリフと格闘したから、大量だと思い込んでいたンですね
映画はラスト近くで、ギクシャクしていた親子関係が、お互いの存在を身近に感じて、優しい気分になっていくシーンがあります
ボク自身はそのシーンで何だか幸せな気持ちになりました
人は、争いより仲良くなっていく人をみると幸せな気分になるンだと
【鶴岡慧子監督のコメント】
バカ塗りの「バカ」とは、ひたむきさを表す「バカ」です。津軽塗と出会い、ものづくりに対する慎ましくも純度の高い情熱に触れ、私もこんなふうに映画をつくりたいと思いました。1カット1カット丁寧に、漆を塗り重ねるように撮る。色鮮やかな模様を研ぎ出すように、登場人物たちの個性で画面を満たす。堀田さん、小林さんはじめ、素晴らしい俳優さんたちとご一緒することができました。そして、弘前の皆さん、津軽塗の職人さんたちに、本当の意味で支えていただきました。みんなでつくったこのひたむきな作品を、たくさんの方に楽しんでいただけたら幸いですし、津軽塗の魅力を知っていただけたら嬉しいです。
高森美由紀『ジャパン・ディグニティ』