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渡辺信一郎&森田修平、両監督にとっての“グローバル”とは?大友克洋の影響も語る

2023年03月18日 20:40  コミックナタリー

コミックナタリー

左から渡辺信一郎監督、森田修平監督。
「第1回新潟国際アニメーション映画祭」に3月17日、「カウボーイビバップ」などで知られる渡辺信一郎監督、「東京喰種トーキョーグール」などを手がける森田修平監督が登壇した。

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両監督が登壇したのは、映画祭初日を飾るオープニング作品「太素(タイスー)」の上映プログラム。「太素」は中国のChirying Cultureが手がけるオムニバス作品で、日本・中国・ニュージーランドのアニメーション監督による、4つの短編から構成される。映画祭ではその中から、渡辺監督作「A Girl meets A Boy and A Robot」、森田監督作「弦の舞」がアジアプレミアとして上映された。

渡辺監督の「A Girl meets A Boy and A Robot」は、MAPPAがアニメーション制作を担当。人間が絶滅を迎えんとする世界で、自分が何者だかわからない少女、少年、そしてロボットの出会いが、絵本のような質感の手描きアニメーションで紡がれる。久野美咲、内田雄馬、山寺宏一が声で参加した。一方森田監督の「弦の舞」は、戦乱の中で“太素”の力によってつながり、お互いの顔も知らぬまま交流を深める2人の女性の物語を、鮮やかなCGで描き出したもの。森田監督が代表を務めるYAMATOWORKSが制作している。時間や空間を超える不思議なエネルギー“太素”を共通のモチーフとして扱いつつも、各監督の個性が存分に発揮されたアニメーションによって、短いながらもドラマチックな物語がそれぞれに展開される。

「太素」はもともと音響の仕事をしていたChirying Cultureのプロデューサーが、各監督の持ち味を生かした壮大なスケールのオムニバス作品を作りたいと、自ら企画したプロジェクトだという。渡辺監督は「近年は監督が自由にやっていいという話はあまりないので、いい機会」と参加したきっかけを話す。森田監督も「『迷宮物語』などを観て作り手になりたいと思ったので、こういったオムニバス作品に参加できてうれしいです」と述べた。オムニバスならではの作風の違いについて、渡辺監督は「両極端。最新型と最旧型みたいな」と表現し観客の笑いを誘う。一方で共通して登場する“太素”というモチーフについては「火の鳥」を引き合いに出し、「超常的なエネルギーを持ったある存在が登場して、遥か過去から未来までのいろいろな話を描く。それに近いものだと思っていただけると理解しやすいかなと」と説明した。

「A Girl meets A Boy and A Robot」にはフランス在住の作画監督をはじめ、イギリス、インドネシア、ドイツ、アメリカといった世界中のアニメーターが参加。渡辺監督は「日本のアニメーターの描く原画はある程度予想がつくが、(海外のアニメーターからは)予想外の原画が上がってきたりする。こういうふうに描くんだ、という驚きがあった」と、苦労はありつつも面白かったと振り返る。司会のジャーナリスト・数土直志氏から、アニメ作りにおける海外やグローバルへの意識について問われると、「今はもう普通になってきたと言いますか。僕も現状スポンサーがほとんど海外で、日本のスポンサーがあまりいないし、もともと日本のマーケットを狙って作ろうとしていたわけではないので、実は作るものは変わっていないんです」と答えた。

森田監督もまた、監督作品がアカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされるなど、海外からも評価の高い作り手の1人。渡辺監督同様、特に海外を意識した作品づくりはしていないというが、「昔から海外で評価されているような先輩方の映像を観たときに、やっぱり何かが違うんです。間の取り方や、レイアウトの取り方や……。やっぱり大友(克洋)さんの作品を観て、僕は映像を目指したので、それが染み出たということかも」と回答。渡辺監督も「僕も『AKIRA』には多大な影響を受けたし、やっぱり『AKIRA』の存在は、アニメを作るスタッフの中ですごく大きいんじゃないかな」と話し、この映画祭でも特集されている大友克洋作品の影響の大きさがうかがえた。

「第1回新潟国際アニメーション映画祭」は3月22日まで新潟市内各所で開催中。森田監督は「自分が影響を受けてきた方々がたくさん参加されていて、なかなか観られる機会がない作品なので、ぜひ皆さん楽しんでいただけたら」とメッセージを贈る。渡辺監督は「音楽フェスだと、出演者を発表する前に売り切れるものもあるんですよね。この映画祭も、まだ第1回ですが、続けていくことでアニメーションの作り手に興味を持つ人が増えて、『今年も新潟行くか』『毎年新潟はいい人来るぞ』というふうになっていくといいなと思います」と期待を込めた。