両監督が登壇したのは、映画祭初日を飾るオープニング作品「太素(タイスー)」の上映プログラム。「太素」は中国のChirying Cultureが手がけるオムニバス作品で、日本・中国・ニュージーランドのアニメーション監督による、4つの短編から構成される。映画祭ではその中から、渡辺監督作「A Girl meets A Boy and A Robot」、森田監督作「弦の舞」がアジアプレミアとして上映された。
渡辺監督の「A Girl meets A Boy and A Robot」は、MAPPAがアニメーション制作を担当。人間が絶滅を迎えんとする世界で、自分が何者だかわからない少女、少年、そしてロボットの出会いが、絵本のような質感の手描きアニメーションで紡がれる。久野美咲、内田雄馬、山寺宏一が声で参加した。一方森田監督の「弦の舞」は、戦乱の中で“太素”の力によってつながり、お互いの顔も知らぬまま交流を深める2人の女性の物語を、鮮やかなCGで描き出したもの。森田監督が代表を務めるYAMATOWORKSが制作している。時間や空間を超える不思議なエネルギー“太素”を共通のモチーフとして扱いつつも、各監督の個性が存分に発揮されたアニメーションによって、短いながらもドラマチックな物語がそれぞれに展開される。
「A Girl meets A Boy and A Robot」にはフランス在住の作画監督をはじめ、イギリス、インドネシア、ドイツ、アメリカといった世界中のアニメーターが参加。渡辺監督は「日本のアニメーターの描く原画はある程度予想がつくが、(海外のアニメーターからは)予想外の原画が上がってきたりする。こういうふうに描くんだ、という驚きがあった」と、苦労はありつつも面白かったと振り返る。司会のジャーナリスト・数土直志氏から、アニメ作りにおける海外やグローバルへの意識について問われると、「今はもう普通になってきたと言いますか。僕も現状スポンサーがほとんど海外で、日本のスポンサーがあまりいないし、もともと日本のマーケットを狙って作ろうとしていたわけではないので、実は作るものは変わっていないんです」と答えた。