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身体拘束されたネパール人突然死、都に100万円賠償命令 原告側「認定ずさんで納得いかない」

2023年03月17日 18:01  弁護士ドットコム

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逮捕されたネパール人男性が取り調べ中に亡くなったのは、警視庁の留置担当官や検察事務官が、職務上つくすべき注意義務に違反したからだとして、遺族が国家賠償法にもとづいて、国と都を相手取り、約6183万円の損害賠償をもとめた訴訟。


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東京地裁の福田千恵子裁判長は3月17日、原告の請求を一部認めて、都に100万3000円の支払いを命じたうえで、国に対する請求を棄却する判決を言い渡した。



原告代理人は「結論としては勝訴だったが、認定がずさんで、納得がいかない」として、原告と話したうえで控訴するとしている。



●留置場の保護室で身体拘束された

亡くなったのは、ネパール国籍のシン・アルジュン・バハドゥールさん(当時39歳)。判決によると、アルジュンさんは2017年3月14日、他人のクレジットカードを所持していたとして、占有離脱物横領の疑いで警視庁新宿署に逮捕された。



翌15日、留置場の保護室に収容されたが、その際、両手を「ベルト手錠」、両足首を「捕縄」、膝を「新型捕縄」などの戒具で拘束された。その後、東京地検に送られて、取り調べ中に動かなくなり、搬送先の病院で死亡が確認された。





●「戒具の使用は違法ではないが、病院に搬送する注意義務があった」

福田裁判長は、アルジュンさんが保護室に収容される前、居室から出ようとして、留置担当官に強い力で抵抗したり、居室に戻そうとしても暴れて扉が閉められない状況となっていたことから、戒具を使用したことは違法であるとは認められないと判断した。



一方で、アルジュンさんのベルト手錠を外した際、両手首が赤黒く膨張しており、戒具の拘束で血流が妨げられ、虚血を生じていることが外見上明らかで、留置担当官としては、速やかに病院搬送するなどの注意義務があったが、それを怠ったと認定した。



死因については、戒具の使用などにより、筋肉細胞が破壊されて、そこから溶け出た多量のカリウムが、戒具を解除されたことで徐々に血液中に流れ出し、致死量に達したことで死亡するに至ったと推認するのが合理的とした。



●原告代理人「判決は誤ったメッセージを送ってしまう」

判決後の記者会見で、原告代理人の川上資人弁護士は「保護室に収容した時点で、戒具を付ける要件が消滅した。そのことをメイン争点にしたのにもかかわらず、警察の裁量にゆだねられていると判断された」と判決を批判した。



原告代理人の小川隆太郎弁護士は、国家賠償法の「相互保証」(6条)が適用されて、ネパールの賠償額を限度とされたことを問題視した。小川弁護士によると、相互保証の規定は時代錯誤で、排外的という指摘が法学者からあり、適用されるケースも少ないという。



小川弁護士は「警察の違法な行為で命が失われている事件で、相互保証を適用してしまうのは、人権保障の観点から問題だ。同じような事件が起きている事実がある中で、100万円でいいのか、という誤ったメッセージを送ってしまわないか」と疑問を投げかけた。