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トランス女性の入浴めぐるデマ、差別助長のヘイト投稿で「傷つき、外出も怖い」 当事者らが声明

2023年03月16日 17:51  弁護士ドットコム

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LGBT関連法の検討が進む中、元首相秘書官によるLGBT差別発⾔をきっかけに、トランスジェンダー女性に対する差別が広がっているとして、LGBT法連合会は3月16日、「いたずらに人々の不安をあおる議論は容認できない」とする声明を発表した。


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SNSを中心に「LGBT関連法が成立すれば、『自分は女性です』といって、男性が女湯に入ってくる」などと、トランスジェンダー女性を排除する投稿がされているが、声明は「社会に分断をもたらし、性自認による差別と憎悪を助長するもの」と強く批判している。



当事者やLGBT法連合会などはこの日、東京・霞が関で記者会見を開いた。出席したトランスジェンダー女性は「SNSしか居場所のない当事者もいる中、SNSを見るのが怖くなったという人もいる」と語った。



●「反発の背景には宗教右派の影響も」

会見では、トランスジェンダー女性で、LGBT法連合会顧問の野宮亜紀さんが「世界的に進む性的マイノリティの権利擁護に対し、宗教右派やその支援を受けた政治的保守派による反発やバックラッシュが起きています」と説明した。



今年になり、国内でLGBT関連法が本格的に検討されるようになって、「『差別が禁止されると男性が女性浴場に入ってくる』といった根拠のない言説がSNSで拡散されるようになり、知識を持たないユーザーや芸能人が反応して、デマや当事者への攻撃が増加しています」として、懸念を示した。



トランスジェンダー女性で、RainbowTokyo北区代表の時枝穂さんは「男性トイレを使うのがつらく、かといって女性トイレも使えません。多目的トイレを探したり、仕事のときはトイレに行かずに我慢したりしてきました」と当事者としての経験を語った。



また、当事者はSNSでしか居場所がないケースが少なくないとして、「SNSでトランスジェンダー女性に対するヘイトが溢れ、当事者は傷つき、外出もできなくなってしまいます」と苦しい心情を打ち明けた。



●「トランス女性はゾーニングされている」

同席した立石結夏弁護士は「『LGBT関連新法が成立すると、トランスジェンダー女性が女湯に入ってくる。トランスジェンダー女性を女湯に入れなければ、法律違反になる』とおっしゃる方がいるそうですけれども、それは誤りです」と述べた。



立石弁護士によると、LGBT関連法は、現在すでにある性的マイノリティの権利を明確する意図であり、新たな権利を創設していないという。



現在、銭湯などの公衆浴場は「男女を区別し、その境界には隔壁を設け、屋外から見通すことのできない構造」(公衆浴場における衛生等管理要領)とされており、ホテルなどの大浴場でも同様に定められている。



立石弁護士は「ここで前提となっている同性異性の基準は、体の作り、すなわち男性的な身体か女性的な身体かということであり、自認する性別、すなわち心の性別ではありません。したがって、公衆浴場は身体の特徴に基づく性別ごとのゾーニングがされているといえます」と話した。



トランスジェンダー女性の場合も、こうしたゾーニングが適用されるが、「事業者が誰にどのようなサービスを提供するかは、その事業者の判断になり、協議や調整が必要となってきます」と述べ、現実的にはトランスジェンダー女性が女湯に突然入ってくることは極めて少ないとした。