電車で寝過ごした失敗談を語る人はよくいるが、車内で知り合った人と飲み始めて終点まで一緒に寝てしまった、という人はかなり珍しい。そんな経験談を語ってくれたのは、東京都に住む30代前半の女性(医療・福祉・介護)だ。
当時、「大宮から横浜で降りるはず」だったJR湘南新宿ラインでの出来事を振り返った。「その日は平日の夕方にも関わらず4人掛けの席が空いて」いたという。2席ずつ向かい合わせになるボックスシートのことだ。しばらくすると、
「缶ビールを持ったおじさんが対面に……」
座ってきたという。(文:okei)
お互いに「寝落ちしてしまい、終点の国府津まで二人とも行っちゃいました」
実は女性も缶チューハイとおつまみを持っており、「前の人が飲んでいるから自分も!」と飲み始めた。すると「ビールおじさん」が話しかけてきて、「おつまみを半分交換しよう」などと持ち掛けてきたところから、二人の会話が始まった。女性がおつまみ交換に応じると、「お礼に他数本持っていたアルコールから一本あげる」「お言葉に甘えて」などのやり取りが展開された。当時をこう回想している。
「その当時自分は仕事場の人間関係に疲れてときおりアルコール買って電車に持ち込んで飲んで帰っていました。(流石に女で缶酎ハイのまんまは恥ずかしいのでハンカチとかで包んで見た目アルコールと解らないようにしていた)」
対面のおじさんは、前日に定年退職されたらしく「自分の通勤していた区間を酒飲みながら途中下車したりで普段降りることなかった駅周辺を散策してきたこと」を教えてくれた。女性も「会社での悩みを話しているうちに」……
「酒が進み、お互い(中略)寝落ちしてしまい、終点の国府津まで二人とも行っちゃいました」
大宮から東京都心を過ぎ横浜で降りるはずが、神奈川県を大きく横断し箱根の手前まで行ってしまったのだ。幸い「最終までまだまだ時間ありましたが22時頃でした」とのことだったが、すぐに折り返さねばならない。
「その方も横浜まで帰宅だったのでまた戻りも一緒。これで宇都宮方面行ったら大変だと……乗り換えたあとコーヒー買ってくれ目をしっかり開けていこうと……」
その通り、また寝過ごして横浜を通り過ぎ、こんどは栃木まで行っては一大事だ。しかし二人は「無事横浜に着いた」という。「おなか空いたからと駅そばをご馳走になりました」と振り返った。
「ビールおじさん」は途中で自宅に連絡を入れていたらしく、駅には奥様が車で迎えに来ていたそう。すると
「なんと奥様が私も乗りなさいと言われ同じ方向だからと送ってくださるということがありました」
と感激した様子で語った女性。思いをこう吐露している。
「郷里から離れた土地で仕事していて親とも久しく会っていなかった中、親世代の方の優しさに触れて心が温かくなりました。お礼をしたいので住所を教えて欲しいと言ったのですが、たまたまの縁だよと言われ固辞されちゃいました」
お礼のため住所を知ることはできなかったが、最後にご夫婦へ感謝のメッセージを綴っていた。
「車中でずっと話を聞いてくれアドバイスくれた方本当にありがとうございました。そして車で送り届けてくれた奥様ありがとうございました。私は立ち直りました元気に過ごしています」
「あの時、お勤め永年お疲れ様でしたと言い忘れてしまいました。私もいつか結婚したらこのご夫婦みたいな人になりたいなと思いました」
失敗体験というより、ちょっとほっこりするエピソードだ。
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