3月11~12日に行われた公式テスト『プロローグ』でLMP2車両がクラッシュした、セブリング・インターナショナル・レースウェイの仮設ピットへの入口レイアウトについて、WEC世界耐久選手権に参戦する複数のドライバーから懸念の声が上がっている。
あるドライバーはターン14と15の間に位置する今年のピット入口について、以前のレイアウトよりも「10倍、危ない」と表現した。いったい、どういうことなのか。
セブリング戦は、併催されるIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のチームがホームストレートに面したピットを使用するため、スペースの都合上、WECのチームは最終コーナーへと向かうウルマン・ストレート沿いの仮設ピットレーンを使用する。この点は従来から変わらない。
2022年まで、このWECのピットロードの入口は右コーナーのターン15を抜けた後に設けられていたが、今年は左キンクのターン14の直後、つまりターン15の手前に位置している。ピットインするドライバーはそこから白線に注意しながら右へと曲がり、コンクリートのバリアで作られたツイスティなエントリーを進み、スピード制限開始ラインへと到達する。
ドライバーたちが強調するのは、追い抜こうとした車両がピットインのために突然右へと進路を変更する際に、衝突の危険性があることだ。
プロローグ最終セッションの終盤、JOTA28号車のLMP2ドライバー、デビッド・ハイネマイヤー・ハンソンが、トーマス・フローがドライブするAFコルセの54号車フェラーリ488 GTE Evoとターン14のキンクで接触し、大クラッシュした。
ハイネマイヤー・ハンソンは、アウト側からフローを追い抜こうとしたところ、フェラーリが白線の位置に合わせて右に移動してピットに入ってきたのだ。
ハイネマイヤー・ハンソンは「僕の脳が教えてくれたのは、LMP車両に乗ってあのキンクを曲がるとき、そこでGTカーを追い抜く、ということだった」と語った。
「ターン14から16にかけて、LMPドライバーだったら誰もGTの後ろで待とうとは思わない」
「あのGT車両はフルペースで走っていて、彼はそのままフルペースでキンクに入り、レーシングラインを走り、フルブレーキングしてピットインしたんだ」
「それで思い知ったんだ。『(彼がピットインすることを)どうやって知るんだろう』とね」
「僕は後ろにいた。(だから接触は)僕のせいになるのだが、理にかなった状況とは思えなかった。6速で時速250kmで走っていたんだ。誰かがピットに入るのか、どうするのか、時速250kmで見極めようとするのは、僕には理にかなっていないように思える」
他のドライバーたちもこのピット入口については懸念を表明しており、プジョーのグスタボ・メネゼスは、新しいレイアウトよりも以前のレイアウトを「100万倍」支持すると語った。
「昨年は(ピット入口の)位置がより奥だったし、(ターン15の)エイペックスで減速してピットに入るクルマを心配していた」とメネゼス。
「今、キンクは全開で通過するんだ。そこに(運営側が)白線を引くから、みんなが後ろの車両の目の前でブレーキをかけることになる。そしたら、(後続車両は)大きく飛び出してしまう。その角度なら簡単にマーブルに乗り、時速200km以上でウォールにぶつかってしまうだろう」
「そして(スピード制限開始の)ライン手前まで、レーシングスピードで、これまでまったく使われていない古いコンクリートのS字を走るんだ。もし車がスピードに乗ったままこれにぶつかったら、ウォールを越えてしまうかもしれない」
ユナイテッド・オートスポーツのドライバー、フィル・ハンソンは、「問題は、アウト側からGTをオーバーテイクしようとした際に、GTがピットに入ってしまうことだ」とハイネマイヤー・ハンソンと同様の点を指摘する。
「大規模な高速クラッシュにつながるような事態を回避するために、彼らはキンクに非常に近いラインを導入した。 アクセル全開からピットインしようとすると、ターマックからコンクリート舗装に変わる箇所がとても近くなってしまう」
「このコースには、コンクリートへタイヤを落としてコーナーを抜ける場所がたくさんある。だけど、あそこは誰もそれをやらないようなコーナーだ。このコースはバンプだらけだけど、あそこには路面に多くの穴が空いているんだ」
「そして、GTがピットに入るのか入らないのか、インを行くのかアウトを回るのか、という混乱がまだある」
新レイアウトではピットイン時にマシン同士が絡むと、旧レイアウトよりもはるかに速いスピードでクラッシュが発生すると、複数のドライバーが指摘している。
ユナイテッドのフィリペ・アルバカーキは「理想的ではないにせよ、もうひとつのレイアウトの方がいいと思う」と語った。
「少なくとも、もし何かクラッシュがあったとしても、それは3速ギヤ(のスピード域)で起こる。スピンするだけだ。今のレイアウトだと、今日起こったような大規模なクラッシュになってしまう」
JOTAの28号車オレカは、バリアに突っ込んだ後にパドックへと戻された。AFコルセのフェラーリもハイネマイヤー・ハンソンとの最初の接触でダメージを受け、大規模な修理のためにガレージへ戻されたとAFコルセの担当者は説明している。