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いよいよ顔をそろえたハイパーカー。4秒落ちも「喜び」のグリッケンハウス、ピット位置のアドバンテージetc.【WECプロローグ1日目Topics】

2023年03月12日 13:00  AUTOSPORT web

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フロイド・ヴァンウォール・レーシングチームによりWECデビューを飾る新型LMH、ヴァンウォール・バンダーベル680
 3月11日、アメリカ・フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイでWEC世界耐久選手権の開幕前公式テスト『プロローグ』が開幕。走行初日は2セッションが行われ、トヨタGAZOO Racingの7号車GR010ハイブリッドが総合最速タイムを記録した。

 フェラーリ499P、ポルシェ963、キャデラックVシリーズ.R、ヴァンウォール・バンダーベル680を新たに迎えたハイパーカークラスの勢力図がいよいよ露わとなった走行初日。セブリングのパドックから、各種トピックスをお届けする。

■最多周回はトヨタ7号車
 2日間にわたって開幕戦の地・セブリングで行われる公式テスト初日、トヨタ7号車は11台のハイパーカークラス車両のなかで、最も多くの周回をこなした。マイク・コンウェイ、小林可夢偉、そして最速タイムを記録したホセ・マリア・ロペスの3人は、140周を走り込んでいる。

 これに続くのはセバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮の8号車で138周。以下フェラーリAFコルセ51号車フェラーリ499Pの126周、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの5号車ポルシェ963が110周で続いた。

 全クラス総合ではLMP2のチームWRT41号車オレカ07・ギブソンが最長距離を走破。彼らは150周を走り込んでいる。また、LMGTEアマでは木村武史も参加しているケッセル・レーシングの57号車フェラーリ488 GTE Evoが最も長い距離を走った。

 セッション2では、プジョー・トタルエナジーズの93号車プジョー9X8がホームストレートでベクター・スポーツ10号車との接触によりダメージを受け、12周の走行にとどまっている。プジョーはマシン右サイドとスプリッターにもダメージを受けた。

■ハイパーカー勢の“先頭”はキャデラック
 来週に控えるWECの開幕戦セブリング1000マイルレースは、ここ数年同様IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第2戦セブリング12時間レースとの併催となる。ホームストレートに面したピットをIMSAが使用し、最終コーナーへ向かうウルマンストレート沿いにWECのピット/パドックが設けられるのも例年同様だ。作業エリアの内側にアメリカ式のコンクリートウォールが置かれているのも、普段のレースとは異なる光景だ。

 ピットの並びでは、フェラーリとキャデラックがハイパーカークラスでは両端に位置している。フェラーリ499Pがピット入口側を占める一方、キャデラック・レーシングの2号車キャデラックVシリーズ.Rは33号車シボレー・コルベットC8.Rと並び、ピットレーン最前方に位置している。

 このキャデラックのピット位置について、2号車のドライバー、アレックス・リンは「予選などでは最初のクルマになれるし、アウトラップ(のペース)を自分で決められるからいいアドバンテージになる。(周囲のピットに)プロトタイプが少ないので、ボックスへの進入もスムーズだね」と語っている。

 なお、ハイパーカー勢のピット位置は入口側から順にフェラーリ、ヴァンウォール、ポルシェ、トヨタ、プジョー、グリッケンハウス、キャデラックという順で、それぞれの間には他クラスの車両が配置されている。

■グリッケンハウス、4秒落ちも「何よりの喜び」
 グリッケンハウスは、昨年モンツァのWEC参戦以来テストを行っておらず、グリッケンハウス007 LMHは、所有するアメリカのカスタマーであるジェイソン・マッカーシーの手によって時々走るのみだった。

 チーム代表のルカ・チャンセッティいわく、8カ月ぶりの大規模な走行に向けて、チームには「膨大なリスト」が用意されているという。

 708号車グリッケンハウスは、プロローグ初日に首位から約4秒の遅れをとっている。これについてチャンセッティは、次のように述べた。

「問題が起きず、今のようなタイムで走れることが何よりの喜びだ。我々には解決しなければならない大きな問題がある。それを解決し、パフォーマンスを見出すために最善を尽くす」

 彼はまた、グリッケンハウスのプロジェクトパートナーであるポディウム・アドバンスト・テクノロジーズが昨年のモンツァ以降、いくつかのマイナーアップデートを実施したと付け加えている。

「マシンの軽量化を実施し、より良いパフォーマンスを得るために、いくつかのアイテムに少し手を入れた。大きなものではないけどね」

■ポルシェ5号車と6号車の“違い”
 アンドレ・ロッテラーは、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの5号車のドライバーが全員ポルシェ963でIMSA開幕戦のデイトナ24時間レースに出場している一方で、自身が乗り込む6号車のドライバーたちにLMDhのレース経験がまだないことについての影響を、重く見ていない。

「いずれ分かることだ。このようなプログラムにおいていくつかのレースの経験を持っていた方が良いことは確かだ。でも、目的は充分な準備をしてここ(セブリング)に入ることだし、そのレベルに達するためにあらゆることを行っているよ」

■公式テストでドライバーの“オーディション”も
 トム・ディルマン/エステバン・グエリエリ/ジャック・ビルヌーブというラインアップがヴァンウォール・バンバダーベル680をデビューさせるフロイド・ヴァンウォール・レーシングでは、公式リザーブドライバーのエステバン・ムースもセブリングに姿を見せ、チームとともに仕事に取り組んでいる。

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 LMGTEアマクラスにエントリーするコルベット・レーシングのドライバー、ニコ・バローネは、コルベットC8.Rを完全に乗りこなすには、時間がかかったと認めている。

「フェラーリのでの経験をすべてコルベットに活かそうとしていたんだけど、最初に走ったときはうまくいかなかった。低速コーナーでのオーバーステアに悩まされていたんだ」

「周回を重ねていくうに、本当に良くなっていったけどね」

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 開幕戦のドライバーラインアップが唯一固まっていないLMGTEクラスのノースウエストAMR98号車アストンマーティン・バンテージAMRでは、テスト初日はアクシル・ジェフェリーズがステアリングを握った。2日目は4人目のドライバーとしてテストにエントリーしているトーマス・メリルがドライブする予定だ。

 このふたりのシルバードライバーのうちいずれかがニッキー・ティーム、ポール・ダラ・ラナとともに第1戦に参加することになっており、ダラ・ラナによれば1年間同じラインアップを維持する意向であるという。

 なお、メリルとポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのケビン・エストーレだけが、テスト初日に1周も走行しなかったドライバーとなっている。

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 アーマド・アル・ハーシーは、TFスポーツからWECデビューすることについて「夢が叶った」と表現している。このオマーン人ドライバーは、英国チームとともに、ブリティッシュGT、GTWCヨーロッパ、ヨーロピアン・ル・マン・シリーズなど、さまざまなカテゴリーでレースをしてきた。

 アル・ハーシーはWECに参戦するのは初めてだが、長い時間をかけて準備してきたことで、このシリーズに取り組む準備はできていると感じている。

「ずっと一緒に仕事をしてきた仲間たちだから、その意味では何も新しく感じない。僕自身はそのおかげで、このプログラムを進めるのが少しスムーズになった。新しいプロジェクトでありながら、正しい土台があるように感じているんだ」

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 2日目となる12日日曜日にも、午前に3時間半、午後に3時間という2回のセッションが行われる予定だ。