2023年03月11日 09:11 弁護士ドットコム
買い物客の目を盗んで、勝手にカゴの中に商品を入れる。そして、客がレジで気づいて大混乱ーー。スーパーでそんなイタズラをしているという中高生がいるという相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
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相談者によると、買い物客だけでなく、レジ対応の従業員にも、他のレジ待ち客にも迷惑がかかっています。場合によっては、家に帰ってから気づいた買い物客からの返品対応の手間まで発生することもあるそうです。
相談者は「スーパーの客に多大な迷惑がかかっており、看過できません」と憤っているが、このような行為にはどんな法的問題があるのだろうか。清水俊弁護士に聞いた。
刑事、民事の両面から、どのような問題がありますか。
「まず、刑事責任との関係では、スーパーに対する偽計業務妨害罪(刑法233条、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)が成立し得ます。
偽計とは、人を欺罔し、あるいは人の錯誤又は不知を利用することを言います。今回のケースでは、他の買い物客のカゴに勝手に商品を入れることにより、レジ対応の従業員等に対し、買い物客が購入する意思のある商品だと騙し、その業務を妨害したと言えます。
仮に違法性の程度が低く、偽計業務妨害罪までには至らないとしても、『他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者』として軽犯罪法違反に問われる可能性があります(軽犯罪法1条31号、拘留又は科料)。
民事責任との関係では、スーパーと買い物客との関係で、不法行為に基づく損害賠償責任が発生し得ます(民法709条)。賠償すべき損害が問題となりますが、対応に追われた手間や時間など、それぞれのケースに応じた被害内容を損害として金銭評価していくことになるかと思います」
今回、いたずらをしていたのが中高生だという事情はどう影響するのでしょうか。
「まず、刑事責任との関係では、14歳未満であれば刑事責任能力がありませんので(刑法41条)、罰せられることはありません。ただ、少年の更生を目的として、家庭裁判所の判断により、保護観察等の保護処分が行われる可能性があります。
14歳以上の中高生であれば、処罰される可能性自体はあるものの、やはり未成年者ということで、家庭裁判所の判断による保護処分が原則となります。
民事責任との関係では、少年を監督すべき親権者が賠償責任を問われる可能性があります。
民法上も、未成年者が自己の行為の責任を弁識するに足る知能を備えていない場合には、責任能力がないとして賠償責任を負いません(民法712条)。その場合、責任無能力者を監督すべき法的立場にある親権者等が、原則として賠償することになります(民法714条1項本文)。
また、未成年者が民事上の責任能力を有するとしても、親権者等に監督義務違反により、未成年者による不法行為を招いたと判断されれば、通常の不法行為として賠償責任が発生し得ます(民法709条)」
【取材協力弁護士】
清水 俊(しみず・しゅん)弁護士
2010年12月に弁護士登録、以来、民事・家事・刑事・行政など幅広い分野で多くの事件を扱ってきました。「衣食住その基盤の労働を守る弁護士」を目指し、市民にとって身近な法曹であることを心がけています。個人の刑事専門ウェブサイトでも活動しています(https://www.shimizulaw-keijibengo.com/)。
事務所名:横浜合同法律事務所
事務所URL:http://www.yokogo.com/