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世界にチャレンジする阿部真生騎「最終的にはMotoGPまで絶対に行きたい」

2023年03月10日 17:11  AUTOSPORT web

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2023WSS:阿部真生騎(VFT Racing Yamaha)
 3月8日にWebikeチームノリックヤマハの2023年チーム体制発表が行われ、阿部真生騎がスーパースポーツ世界選手権(WSSP)にフル参戦することが発表された。バイクに乗り始めて5年3カ月、2022年、全日本ロードレース選手権ST600クラスに初めてフル参戦したが、1ポイントも獲ることができなかった。時期尚早という声も少なくないが真生騎は2023年シーズンをレーシングライダーとして大きく成長できるチャンスと位置付けている。

「世界のライダーと一緒に走って揉まれながら早く追い抜けるようにしたいですし、今年のチーム体制は、それができる環境だと思います。技術的にも内面的にもレベルアップしてきたいですね」

 昨年末からスペインに渡り、KSBトレーニングアカデミーに参加。Moto2やMoto3ライダーと共にダートトラックやモトクロス、モタードなどで走り込み、フィジカルトレーニングも行い日曜日だけ休みという生活を約2カ月間過ごしてきた。バレンシア、カルタヘナ、ヘレスという3つのサーキットで、ピレリタイヤを履きで初めて走ってきた。

「Moto2やMoto3ライダーと一緒にトレーニングできたのは大きかったですね。ミニバイクでも、ぶつけ合いというか、すきあらばどこでも抜いて来るし、練習でも常に全力を出すという熱量がすごいですね。山をオフロードバイクで走ったときは、すごく細いところを、崖すれすれで信じられないほどスピードを出すんですよ。アタマのネジが完全にぶっ飛んでいますね」

「ピレリの感触は、日本で走ったときは、うねる感じがしたのですが、スペインで走ったときはそうならなかったんですけれど路面温度などコンディションの違いだと思います。どのサーキットもコース幅もそうですが、グラベルが広いので安全性が高いと感じました」

「チームメイトのニコラス・スペネリが速いので、ブレーキングやアクセルを開けるポイントなどもデータ上でも比較させてもらえるので、その通りにやっていけばタイムも上がるし、サーキットトレーニングのときはニコラスの1.5秒落ちまでタイムを詰めることができました」

 ノリックこと阿部典史の息子であり、祖父である阿部光雄はオートレースで長年トップライダーとして活躍。真生騎の監督としてヨーロッパも帯同する。どうしても“ノリックの息子”というレッテルはついてまわるが、それは運命でもある。今回の世界挑戦も“ノリックの息子”でなければ実現しなかったことは真生騎自身も分かっている。

「全日本で結果を出していないのに世界に行かせていただきますし、恵まれていることは感じています。最初に、WSSPに参戦することを聞いたときはヨーロッパにトレーニングに行くだけだと思っていましたから(笑)。まずは確実にレースを走り切って経験を積み、後半戦で勝負を挑んでいきたいですね。チームメイトのニコラスが第1戦オーストラリアで2位になっているので、優勝を目指していきたいです」

 今年所属するWebike VFT Racingは、イタリア・ミラノにあるため、シーズン中は、チームの近くに住む予定。言葉は“心”があれば大丈夫だが、コンビニがないのは辛いそうだ。

 2月までのトレーニングでは、バレンシア、カタルへナ、ヘレスとスペインの3つのサーキットを走ってきたが、実際にWSSPのレースが開催されるコースではない。今シーズンはすべて初めて走るサーキットでのレースとなるだけに映像やゲームなどでシミュレートしているのかと聞いてみると……。

「映像は、あまり見ないですね。ゲームも難しくてイライラしてしまうので、やっていません。実際に走るのが一番ですし、1周走ればある程度分かりますから」

 ノリックが亡くなったのは真生騎が3歳のときだったため、ほとんど記憶にないと言う。この1月に19歳となり“母親にも似てきた”と言われるほど、ますますノリックにそっくりになってきた。その言動もスケールの大きさを感じるのは、血筋なのだろうか!? これからの目標を聞くと“WSSPで結果を出したらMoto2に行き、最終的にはMotoGPまで絶対に行きたい”と屈託なく語る。

 すでに2023年シーズンは始まっているが真生騎はルーキーチャレンジ枠からの参戦となるため、第3戦オランダ(4月21-23日)が初戦となる。鈴鹿8耐にも参加予定となっており、そこで成長した姿が見ることができそうだ。