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夫の浮気で離婚した元原発職員40代女性、婚活アプリで「老後のパートナー」探す日々 #知り続ける

2023年03月10日 11:41  弁護士ドットコム

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東京電力・福島第2原発で事務員として働いていたサチコさん(40代・仮名)は、福島第1原発の事故後、夫の浮気が原因で離婚した。実家のあった町がこのほど、避難指示を解除したことで、70代の両親とともに引っ越すことに。いまはその準備で忙しいが、日常を取り戻す中でも、彼女の心配ごとは積み重なっていく。(ライター・渋井哲也)


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●実家の近くで「強盗事件」が相次いでいる

双葉郡出身のサチコさんにとって、心配ごとの1つは「治安」だという。



「避難指示を解除すれば、当然、両親は実家に帰りたくなりますよ。でも、近くで『闇バイト』による強盗事件があったばかりなので、不安で仕方がないです。



まだ多くの人が戻っていないこともあり、かつ、高齢者ばかりなので、泥棒にとって、避難指示の解除は『いい話』ですよね。



『帰ってもいい』と言われても、若い人も少ないので、町は無責任な感じがします。現在はいわき市内に住んでいますが、両親だけで帰らせるのは不安なので、一緒に戻ることにしました」



サチコさんが口にした事件は、双葉郡の北にある南相馬市で今年2月26日に発生した強盗殺人未遂だ。いわゆる「闇バイト」に関連した事件で、関与したとされる複数の男性が逮捕されている。



報道によると、逮捕された男性たちは、民家に押し入って、家主の頭を殴って、殺害しようとしたうえで、現金10万円と貴金属を奪った疑いがある。



また、いわき市でも「ルフィ」を名乗る人物が指示を出して、金品を奪う「広域連続強盗」と思われる事件が発生している。



「帰るのだから、町には防犯カメラをつけてほしいです」



ただ、両親と一緒に戻るといっても、同じ家に住むわけではない。敷地内の土地で、新しく家を建てる計画を立てている。



●原発事故は人生を変える転機となった



事故当時、サチコさんは家族(夫・子)と富岡町に住んで、第2原発(富岡町・楢葉町)に通っていた。当日は、ちょうど点検作業が終わって、下請会社の作業員の雇用を解除する仕事をしていた。



「もともと私は原発の安全神話を信じていませんでした。何かあったら『見殺しだ』と思っていました。あの日は、優先的に女性を帰宅させようとしていたため、早めに帰ることができました。



元夫はイチエフ(第1原発)の作業員でした。その日は夜勤だったので、まだ家にいました。一緒に子どもを学校まで迎えに行ったあと、富岡町に戻ろうとしましたが、警察に止められました。



そのため、実家に戻りました。そこから転々とすることになりました。今から考えれば、私たちは避難先を間違えたかもしれません。知り合いがいないところだったからです。友だちのいる場所へ行けばよかったと思います」



もともと元夫は女癖が悪かった。原発事故の賠償金が入り、遊ぶ金ができた元夫は、人口が多い地域に住んだことで、出会いが増えて、浮気に拍車がかかった。事故から7年後、サチコさんは離婚した。



「元夫からは暴力も受けていました。東電の賠償金は『子どもの将来のために貯めておこう』と思っていましたが、賠償金が入る口座は、元夫が管理していたので、どのくらい入っていたのかはわかりません。夫は遊ぶ金に回していたんだと思います。離婚したとき、子どもの口座にあったお金は取り戻しました」



現在は、財産分与で得た一軒家に住んでいる。



「子どもは大学へ進学したので、私は一人暮らしになりました。離婚して良かったとしか思わないですね。元夫と結婚生活を続けていたら苦痛で、もやもやした気分が続いていたと思います。いまはもう、そんな気分になりません。



もし原発事故がなければ、離婚せずに、元夫と暮らし続けて、年をとったら、彼の介護をしていたかもしれない。そう考えると地獄ですね。だから、私にとっては、原発事故は、間違いなく人生を変える転機になりました」



●婚活アプリに登録したが「出会い」はない



現在、サチコさんは建設会社の事務員の仕事を得て、平日は約30キロ離れた広野町にある職場まで車で通っている。もう1つの心配ごとは、老後のパートナー探しだ。



出身地でない、いわき市には知人がほとんどいない。さびしい暮らしの中で、恋人ができたこともあったが、現在はいない。



「以前付き合った男性とは、マッチングアプリで出会いました。アプリでは、たくさんのメッセージがきましたが、『週## ●回、セックスがしたい』など、まだどんな人かわからないのに、そうした性的なメッセージを送ってくる人もいて、気持ち悪いと思いました。そういう人を除いた中から残った人と付き合いました」



一緒に住んでいたこともあるが、働かない男性だったという。



「最初はLINEや電話をして、楽しかったんです。でも、一緒にいるようになってから、仕事をしてないのがわかりました。はじめは『コロナの影響で仕事がない』と言っていました。たしかにコロナ禍だったので、そういうものかなと思っていましたが、仕事が続かないんです。別れを決意するころには、いつの間にかいなくなっていました」



その後、実家に戻ることを決めたこともあり、婚活メインのアプリに登録した。



「絶対に結婚したいというわけではないですが、さびしいんです。一緒に戻ってくれる人がいい。今すぐ、実家のそばに住んでくれなくてもいい。月に何度か会えればいい。恋人でなくてもいい。



老後を助け合えるパートナーがほしいです。だから、この1、2年は積極的に探そうと思います。すぐに見つからなくても、もうマッチングアプリで探すことはないと思います」



ただ、コロナ禍でサチコさんの行動そのものも変わってしまった。前は飲み歩くことがあったが、最近では外食すらしなくなった。



「出かけるのが億劫になりました。婚活アプリで『会いましょう』となっても、会えるかどうか。そもそもマッチする人がなかなか現れません。



同じような年齢で仕事をしている人は、それなりに収入もあるでしょうから、私の地元に来るメリットがないかもしれません。老後を楽しく過ごせればいいんですが・・・」



震災後に建てた今の家は売ることになる。サチコさんは「実家は安心する」と話していた。